2 年位前から弁当生活である。え、2 年も経つんだ。
弁当と言っても人様に見せられるようなものではなく、スーパーで買った惣菜を 2、3 種組み合わせておかずにしているだけ。飯は炊いてつめるだけだし、梅干かふりかけを足して、あとは、俺の食生活の数少ない良心、ヨーグルトを添えておしまい。厳密に計算してないけど一食 200 円くらいじゃない?
別に立派なことを考えたのではなく、そういう経済的な要請によるものだが、その結果、洗い物が 1 セット増えた。
弁当箱って平たい分、茶碗類に比べて面積が大きいから泡を落とすのに手間がかかる。そこで、蛇口をシャワーにするアタッチメントを装着してみた。
具合が良い。短時間で泡がなくなる。おそらく水道代節約にも貢献してくれるであろう。
難点といえば、出口の下につけるので、出口が低くなってしまうこと。ヤカンのように背の高い器具や、ボトル状のものを使うのにはちと邪魔。
ところで、蛇口ってなんで蛇口? 確かに蛇っぽと言えば蛇っぽいが。
浄水器メーカーの
アクアス総研というところに「水の知識」というページがあって、
解説されている。
昔、水道といえば地域で共用するものだった。ライオンの口から水がベローっと流れ出しているのを映画やなんかで見たことがあると思うが、それが日本では龍だった。水の神様だからね。それが蛇になった、という話。
なんで龍から蛇、と思った人もいるかもしれない。たとえば「虹」は龍の化身だと考えられていたからこの字なのだが、「蛇」とは虫偏が共通している。接点はある。
さらに続けると、「カラン」はオランダ語の鶴から来ているらしい。英語でも“crane”だしな。やっぱり細長いものになるんだ。
でも、俺、「カラン」には漢字表記がある、って話を聞いたことがあるような気がするんだよな。ググっても見当たらなかったんだけど。
やっと言語につながった。
水道…は最近のものだとしても、生活用水ってのは基本的なものだから俚諺形が一杯あると思ったんだけど、意外に見当たらず。
たとえば井戸。『秋田のことば (秋田県教育委員会編、
無明舎出版)』によれば、「
かなこ」「
かだこ」という言葉があるらしい。意味不明。
山口の祝島
(いわいしま) の
ホームページで、
屋号の調査をしている。それによれば、「川本屋」という屋号は、共同井戸のそばであることからついたらしいが、つまり、「
川」は井戸のこと。ほぉぉ。
となると、沖縄の「
かー」は、これの変化したものか?
また、
徳島県立図書館の
阿波学会研究紀要によると、海部町では「
池」らしい。
さすがに海はなかろうな。でも、香川で「
泉」というそうだ
(讃岐:香川の方言、高松市の高松の方言 【い】の項)。岡山の下津井の例も見つかった
(Sophia in Kojima の下津井方言 語彙集3 いこーうお)。
かと思うと、新潟県栃尾市では「
井戸」で池をさすらしい
(高波保の栃尾方言辞典)。
熊本では、「
いがわ」。これって「井川」じゃないのかな。『浜荻』には「井が輪」って書いてるそうだが。
富山県高岡市、「
ほんのき」「
ほんのけ」。これは何?
(ねっとこ金屋の金屋町方言集 呼び名生活編)
あとは、「
えど」など単に形が変化しただけのが多い。
広島県では、釣瓶のついた井戸を「
つりい」という由
(ほべりぐデータベース:広島弁ch)。
「井戸」ってなんで「戸」?
「扉」ではなくて、家を数えるときの「一戸」「二戸」の方だろうか。ってことは、本来は屋根・釣瓶つきのやつのことを指す言葉か?
多摩のほうに行くと、「
まいまいず井戸」というのがある。
「
まいまいず」は前半で見当がつくとおりカタツムリのことで、すり鉢状に地面を掘って、その底に井戸がある、という構造のものを言う。
前に触れたが、関東平野は火山層で相当に深く掘らないと水が出ない。しかし、垂直に深く掘るのは難しいので、そういう構造にせざるを得なかった、というわけ。
東京に住んでいた頃、どこかのを見たことがある。直径は数十 m 程度なのだが、それをグルグルと下っていくので、底にたどり着くまで結構な時間がかかった、という記憶がある。当時の人たちはそれを毎日やってたわけだ。
「蛇口 AND 方言」でググったら、地域ネタとして、「
ポンジュースが出る蛇口」というのがひっかかった。
初めて聞いたのだが、愛媛の家庭には、水の蛇口とお湯の蛇口とポンジュースの蛇口がある、というネタらしい。それが広まった結果、
えひめ飲料自ら、松山空港に期間限定ながらそれを設置してしまった (新着情報から、「2008-01-10 松山空港に『ポンジュース蛇口』出現!」と「2008-02-26 3月1日(土)松山空港に『ポンジュース蛇口」再登場!』で確認できる)。こういう洒落の通じる会社は応援したい。
で、その蛇口の定義だが。
Wikipedia によれば、「水道水などの液体を運ぶ管の出口部分、あるいはその部分の器具のこと。液体の流れの開閉や流量を調整する栓(バルブ)がついている。」。
つまり、あの蛇なり鶴なりの細長い金属部分すべてを言うわけだ。
となると、「蛇口をひねる」ってのは、たとえばそこが老朽化したらから交換するというような時に実施する行為であって、水を出すために丸い部品を回したり棒状のパーツをはね上げたりする、という意味では正しくない表現なんじゃないか? いかがでしょうか、正しい日本語教の皆様。