『方言クイズ 日本のことばはおもしろい!』
講談社から出ている新書サイズの本。監修は、井上史雄氏。すいません、出たのは一年も前です。
全都道府県の言葉について、概論 (というほど難しくない) とクイズという構成になっている。
ユニークなのは地域紹介で、それぞれの方言に接することのできる映画や本の名前が載っている。たとえば北海道だと、「北の国から」は順当だとしても、「最終兵器彼女」があったりして侮れない。
・青森
津軽海峡のことを「
しょっぱい川」。確かに、「
しょっぱい川」をググると多数ヒットするが、一緒に並べられている「
かちゃくちゃね」「
あずましい」とは使用頻度も使われ方も違うと思う…ような気がする。
「
アオグラ」という映画があるのは初めて知った。
・秋田
「
ちょす」は「触る」というより「いじる」、「
まかす」は「
まがす」の方が正確。でも、気づかない方言でもあるので、やや改まった場面で「
まかす」と言うことはある。
ドラマとして「雲のじゅうたん」や「まんさくの花」がないのは時の流れというものか。何年か前には「砂の器」もやってるのに。これは、島根でも取り上げられていなかった。
そういや、「
好きだ、」を見てねぇな。
本の方も、石川達三はいいとして、石坂洋次郎の『青い山脈』でないというのも。これはひょっとしたら有名だからかもしれないが。
東北を一巡したところでクイズになる。
16 問中、一応、全部わかった。
ちなみに、「恥ずかしい」を「
おしょし」と言う人、納豆に砂糖をかける人を俺は見たことがない。話には聞いたことがあるんだが。「
しょし」は言う。納豆に付属しているタレはどうしてあんなに甘いんだろう。
・茨城
「いばらぎ」と覚えている人が多いのは、当の茨城県人が、東北方言に近い濁点つきの発音になっているため、という説は面白い。
その次が栃木ではなく群馬なのはなんでだろう。
近畿も三重・滋賀・和歌山、四国は香川・徳島の順、九州も同様になってるんだが。別に都道府県コードに沿ったわけじゃない?
・埼玉
前に、埼玉の山間部はほかと違う、ということを書いた本を紹介したが、これについては、江戸時代の街道 (つまり現在の幹線も) や明治以降の鉄道が、江戸・東京から放射状に (つまり県東部を南北に) 延びたため、埼玉県内での東西の行き来が不便だから、と説明している。なるほど。
タケカワユキヒデの名前がないぞ。
・神奈川
バスケットの田臥勇太の名前があるが、
能代工業で活躍した彼を、秋田県民は秋田のヒーローだと思っている。さすがに県出身者でないことは知られているが、県の観光パンフレットにインタビューが載っているのを見たことがある。
・富山
歌の一番、二番を「
一題」「
ニ題」というのだそうである。びっくりした。
ただ、ググっても用例はほとんどない。探し方の難しい表現ではあるが。
・山梨
武田信玄がスパイ対策でわざと標準語からずれた使い方をしたのが現在の山梨弁の元、という話があるらしい。鹿児島の話も有名だが、有力大名がいるとそういう話が作られるのだろうか。
中部一巡後のクイズだが、この辺から、全く見当のつかない表現が頻出するようになる。
「
あおらあおらしてんねが」「
ばーかがおった」「
こもっつるし」。
全然わからん。
京都弁のクイズ。
観光客が、旅館の女将に、今日はどうやって過ごしたかと問われたので、「まったりすごした」と答えた。女将は、何を食ったのか、と聞くが、客は特別なものは食っていない、という。
気づかない方言、というか、気づかない全国共通語というか。
・香川
川井郁子が「ピアニスト」になっているが、バイオリニストである。きっと探せばもっとあるんだろうな、こういう間違いは。
浅香唯は「タレント」…ノーコメント。
島根弁のクイズ。
「多い」という意味を持たない語として「
だんだん」を挙げているが、これって発想としては「重ね重ね (だからお礼の言葉になる)」だと思った。「多い」ではない、と断言するのは無理がないか?
鹿児島弁のクイズ。
「
びんた」は頭のことで、平手打ちのことではない、とあるが、平手打ちを「ビンタ」と言うのは確か、鹿児島出身者の多かった明治の警察だか軍隊だかで顔面をひっぱたくことから来たはず。そこに言及は必要じゃないだろうか。これが裏の取れてない説なのかもしれないが。
巻末の資料も参考になる。
NHK の「ふるさと日本のことば」って本が出てるんだ。探してみるかな。まだ入手できるかどうかはわからないが。
で、その巻末には数年前の方言ブームの頃に出たユルい本の名前も挙げられている。
そういうのに比べるとはるかにしっかりしている、と書こうと思ったんだが…。