Speak about Speech: Shuno の方言千夜一夜




第541夜

玄関から出る



 窓では量にならない、ということがわかったので、ちょっと範囲を広げる。
 先週、「半戸」についてとりあげたが、それに対しては「大戸」というのもあるらしい。ゴジラが上陸した島のことではない。
 半戸が小さい奴だから、大戸とは大きな奴のことか、と言えばさにあらず。いや、そういう意味もあるんだけど。
 それにしても、大辞林の「家の表口にある大きな戸」って説明になってるようでなってない。時代劇に出てくる商家で、店じまいした後、くぐり戸で出入りしているのを見たことがある人もいると思うが、そのくぐり戸がくっついている大きな戸のことだ、ということがあちこち調べてわかった。
 さて、「おおど」だが、玄関のことを指す場合がある。富山・愛知の例が見つかった。「おおと」という形だと、新潟にまで広がる。「おおどぐち」という形もある。
 が、地域方言ではなく、建築用語としての用例も多数あるので、ひょっとしたら違うかも、という気もしないことはない。あんまり多くないし。

あがりはな」という形も多いが、これは「上がり端」という書き方でもわかるとおり、玄関そのものではなく、あの段差部分のことである。それを拡張して、玄関の意味に使う場合もある、という位置づけのようだ。
 群馬、長野・岐阜・愛知・三重、広島、徳島と散らばる。
「居間の端」という記事もある。
 こっちも、方言じゃないかも、と思いつつ次へ。

 石川には「へっとぐち」という表現も見つかる。「入っと〜」なのかと思ったが、後半は「戸口」なのかもしれない。「へっと」ではノイズが多すぎて探索断念。

にわ」を含む形がいくつかヒットする。
 詳しく見てみると、「にわ」で「土間」のことを指す地域もあるようだ。その辺の関係だろう。
 玄関先のことを言うケースもあるらしい。

 玄関先といえば、「とがだ」というのが。「と」は「戸」か「外」か。

 玄関から道路、気持ちとしては逆で道路から玄関までということだと思うが、要するにアプローチのことを「かいど」と言う地域が、静岡・愛知・三重に見られる。
かいど」は「街道」ではないかと思うのだが、このあたり、「にわ」と考え合わせても、どこからどこまでが内で外で、というのは地域によって違うのではあるまいか。
 実は「じょのぐず」「じょのぐづ」も、玄関だったりアプローチのことだったりする。

 新潟・長野・愛知に、「とまぐち」という語がある。「とばくち」の変化したものだと思うが、正規の玄関だったり、通用口だったりする。数が少ないので、「地域によって」をつけるのはやめておく。
 上には「とばくち」と書いたが、「とばぐち」が正しいのだと思ってたことは秘密だ。

 やっと秋田に来た。
とのぐぢ」である。これは、「とのぐぢ」や「とのぐずとのぐづ」で調べる必要があるが、どれもこれも東北だ。「戸口」だろうが、ダイレクトに「戸口のこと」としているページもある。そうなると、「玄関」とは別物と考えざるを得ないが、どうなんだろうね。

 ここまであれこれ保留つきで書いてきたが、特にホームページの場合、地域の特徴ではなく、個人の癖、その人の周囲のみの言い回し、思い込みということが排除できない。一応、例が極端に少ないものは取り上げないようにしているが、「一応」であって、取り上げることもある。
 それに自分のが引っかかった。
 に、戸や窓を、時に必要以上に大きく開け放すことを「がいっと」と言う、ということを書いたが、「がいっと」が見当たらない。検索するとトップにその文章が来る始末である。
 あーやってしまった、という感じ。ほかにもあるんだろうなぁ。
 ちなみに、「がいっと」は俺の母が使う表現である。

 冷房病から始まった話がいつの間にか街道にまで広がってしまった。
 ところでこの「冷房」ってどういう意味だろうね。
 いや、「房」ってのは部屋のことだよな。
「冷房」が「冷たい部屋」のことではないんだとすれば、「部屋を冷やす」? 「暖房」も同じ構造ということになるんだろうが…。
「冷房病」だと、冷たい部屋にいることによってなる病気、という感じがしてなかなかぴったりではある。
 その冷たい部屋、チームマイナス 6% に参加している企業のものである。ま、そんなもんだ。





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