Speak about Speech: Shuno の方言千夜一夜




第196夜

擬態語−秋田弁講座プロジェクト−



 今日は擬態語。

 たくさん紹介しようと思ってしばらくうるがして置いたのだが、あんまり集まらなかった。
 「」のせいだと考えている。
 標準語で「ゴワゴワしている」「パサパサしている」というような擬態語がある。これはそのまま秋田弁でも使えるが、「」を伴う。
 つまり「ゴワゴワで」「パサパサで」となるのである。
 秋田弁以外の擬態語は、大抵のものは、この「」でもって使用可能になる。現代の日本語が、外来語に「する」をつけて簡単に取り込んでしまうようなもので、非常に生産性が高い。それで秋田弁固有の擬態語が滅んだとは言わないが、あたかも帰化植物のごとく圧迫してきた可能性はある。
 ひょっとしたら、形容動詞の「だ」なのかもしれない。にも触れた通り、形容動詞も異様に生産性の高い品詞である。
 活用形も全く同じ。

 小出しに、前にも紹介したのから再掲すると、「がっぱり」というのがある。
 これは、「はまる」と共起することの多い擬態語で、全身がはまってしまった様子である。「ずっぽり」なんかに近い。「」を伴わず単独で使う。
 俺個人の感覚では、出られなくなってしまっているという含みを持つことが多いように思う。

 俺も今ひとつ語感をつかみかねているのだが、「ハカハカ」というのがある。どうやら、慌てていて落ち着かない様子を指しているらしい。例えば 11 月ごろ、「ハカハカってれば、正月なってしまう」などという。腰を据えて仕事をこなしていかないと、気づいたら正月だった、ということになりかねない、というような意味だ。
 この「〜てれば」は「(〜ということを) していれば」という意味。
 同種ので「ウルウル」というのがある。涙ぐんでいるのではなくて、やはり慌てている様子らしいのだが、よくわからない。
 これも「ウルウルで」「ウルウルってれば」という形で使う。

 「チリポリ」というのは、この文章みたいに小出しにしている様である。これは単独使用だが、意味から考えて想像がつく通り、「チリポリチリポリってケチくせ出し方するな」というように繰り返して使うこともある。

 「でらでら」というのは、悪趣味な派手さを表現する言葉である。

 「ガリっと」は、「キッチリ」や「しっかり」に近いのかもしれない。個人的には「ごしゃがいる」が共起することが多いように思う。「キツく叱っておく必要があるな」というときに「ガリっと言ってやらねばねな」と言ったりする。
 仕事をしっかりやっとけよ、というときには使えないような気がするなぁ。
 また、「今日はガリっと飲むぞ」と、宴会への意気込みを表明することもある。

 宴会といえば「こみっと」…擬態語か?
 意味としては小規模ということだが、本当は大規模にも出来るのになぁ、というような、やや否定的なニュアンスがある。
 「おーい、みんなで呑みに行こうぜぇ」と声を張り上げたはいいが、3 人くらいしか集まらなかったというような場合、「昨日は誰も来ねがらこみっとやった」と言ったりする。

 「パヤパヤ」で「ビバ〜ヤング〜パヤパヤ〜」を連想する人も多いと思うが、これは産毛などの描写。
 あるいは、人がぼーっとしている様子に使うこともある。

 「パヤパヤ」と同じように、俺としては非常によくわかる、そのものズバリだとさえ思うのが「がいっと」である。ただし、使い道が非常に限られている。
 窓や扉が全開になっている様子である

 擬声語は音が元だから比較的理解しやすいが、擬態語は外部からは理解不可能である。また、内部の人間にも説明不可能であることが多い。
 「パヤパヤ」はなんとなくわかってもらえそうな気がするが、「がいっと」は「『がいっと』って感じじゃん」としか言い様がない。
 この辺も、他言語を習得する際の障壁の一つなのかもしれない。




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