Speak about Speech: Shuno の方言千夜一夜




第528夜

バトンを横取りしてみる (1)



 ネットの世界には「バトン」というのがある。
 に「百の質問」というのを紹介したが、これが、誰か一人が質問を投げそれに答える、いわば「アンケート」みたいな形 (集計はしていないようだが) なのと違い、バトンは、その名前から想像される通り、誰かから受け取って誰かに渡す、という構造である。
 まぁ、恥を忍んで告白すると、こういうのが来たら困るな、と思っていたのだ。渡す相手がいないから。
 ところがそれは現象の一面、同じように、俺にバトンを渡す人もいなかったわけで、その心配は杞憂だったわけだ。

 そういえば、今年の元旦に来た年賀状は、なんと 5 通だった。両親そろって「それだけか?」と聞かれて「友達いないもん」と答えたのだが、それは開き直りでもなんでもない、と。
 もちろん、毎年 2 日もしくは 3 日に行われる新年会で顔をあわせることがわかっている人には俺も出さないし、喪中の人もいたし、伝統を守るのか不精なのか、元日になってから書く人もいるので、最終的には例年程度の数になったのだが。
 俺も、祖母他界で本来なら喪中なのだろうが、仕事絡みの人の場合、そうもいかない、というか、そこまで教えてやる必要もない、というか。
 あと、年賀状のやり取りしか接点がなくなってしまっている人には、その機会をつぶすのもどうか、と思ったりする。ちょっと前後にずらして、年賀状ではなく近況報告の葉書を出せばいい、という話もあるが。
 別にそれを狙ったわけではないのだが、俺の年賀状は、前年の俺の活躍を羅列したものか、かしこまるべき相手には、その年の十二支に因んだ漢字を並べて一言、というもので、「おめでとう」とはどこにも書いてなかったりする。

 不幸自慢はこの辺にして、バトン。
 着手点として単語の意味を調べてみた。
 EXCEED 英和 によれば、「(官職の象徴の)つえ; 指揮棒; 警棒; (リレー・バトンガールの)バトン」で、我々が普段使う意味は、最後に登場する。
 英々辞典でどうなるかというと、アメリカの Yahoo! の辞書で調べたら、指揮棒、マーチングバンドの先頭の人が持ってる棒、官職の象徴、リレーのバトン、警棒、紋章の曲がった棒 (庶子であることを示すらしい) と並んでいた。「トワリング」って“twirling” って書くんだ。「トワーリング」じゃん。“fast food”が「ファーストフード」なのとは逆の現象。
 まぁ、登場順が使用頻度とは限らないのだが、語義としては、いわゆる「バトン」はずいぶんと順位が低い。
 今回のネットにおけるバトンについて言えば、必ずしも次の人にまわさなくてもいい、という解釈もあるらしい。というのは、上に書いたとおり、「指揮棒」という意味もあることから、それをどう扱うかは当人が決めてよい、ということなのだそうだ。こういうのはなかなか面白い。まぁ、メカニズムとしては「不幸の手紙」と同じだから、そういうのがないとまずいかもしれない。

 やっと話が方言にたどり着いた。
 どうも「方言バトン」にはいくつか系列があるようだ。大別すると、お題を翻訳するものと、方言にまつわる質問とである。
 しかも、受け渡しするものだからか、質問数が変わってたり、質問そのものが変わってたりする。というわけで、ここでは、それを適宜取捨選択、時には清書してから答えていくことにする。したがって、質問がオリジナルのままであることは保証しない。そもそもの原文がどこにあるのか、そのバトンを最初に渡した人が誰かも確認していないので、その辺は勘弁して欲しい。
 なお、上に挙げた系列から 2 つずつバトンを選んで答えていくので結構な量になる。3 週にわたることを先に言っておく。
 まず、「まつわり」バトンの一番目。

1. 使っている方言は?
 秋田弁。

2. 方言は恥ずかしい?
 状況による。
 好悪とは別に、使うべきでない状況で使ってしまったら、それは恥ずかしいことになるだろう。たとえば、秋田弁話者がほとんどいない場所での会話とか、改まった場におけるスピーチとか。

3. 方言で自分の事を何て言う?
おれ」「おら」。性別不問。
 津軽に近いところでは、「」ということもある。

4. 使っている方言で好きな言葉は?
 こういう質問が一番、困る。日用品に好きも嫌いもない。

5. かわいいと思う方言は?
 これも困る種類の質問だが、文字通り「可愛い」という意味の「めんけ」なんつーのは、音もかわいらしいんじゃないだろうか。

6. 地元の有名人は?
 最近、結構いるんだが、やっぱジャンルから言っても加藤夏希?
 こないだ ABS で、土濃塚隆一郎小沼ようすけJoelle と、秋田ゆかりのミュージシャンを集めてセッションしてた。それぞれ、フリューゲルホーンとギターとボーカル。
 ネイガーは神様だしなぁ。

7. 地元のトリビアは?
 時期的に近いトリビア。
 地元紙・秋田魁新報の元旦版は、10 分冊くらいの分厚いもので、新聞より一回り大きい巨大な封筒に入った状態で配達される。昔、新聞配達のバイトをしていたが、自転車に積みきれないので、雪の中を何往復もすることになる。

 なお、よく似た別のバトンでは、2. の場所に「自分の訛りは酷い?」という質問が来ているものがある。
 それについて答えるなら、あんまり出ない方。
 ただ、普段はあんまり出ない一方、たまに東京に行ったときなんかは、アクセント・イントネーションがダダ漏れになっているようである。

 つづく。




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