Speak about Speech: Shuno の方言千夜一夜




第526夜

ALL UP 2006 (後)



 秋田を守るのはネイガーだけではない。

 あ、その前に。
 夏にネイガーを話題にしたとき、「ケデ」が藁のことらしいが、はっきりしない、という話をした。
 どうやら、ケデというのは、ナマハゲが着ている蓑のことらしい。一般的な「藁」ではない、ということか。

 さて、秋田の守り神。
 能代には活性戦隊ガンバルジャーがいるし、大仙市にはダイセンジャー。
 ダイセンジャーはネット上の写真が見当たらなかったのだが、塗り絵本が県立図書館にあるらしい。恐ろしい。
 どうやら、「ダイセンきょうわ」「ダイセンおおまがり」という具合に、こないだ合併した自治体の名前を引っ張ってるようだ。ってことは 8 人なのか?
 ガンバルジャーは前からネイガーとの競演が多い。こちらは 3 人。必殺技は「役七夕 (やくたなばた) ダンク」というダンク シュートである。さすがバスケの街。混成部隊だけど。
 こういうのを作る場合、当然、地元のことをよく知らなければならない。そのバスケットはもちろんだし、たとえばネイガーの必殺技は「比内鶏クラッシュ」ではなく「比内鶏クラッシュ」である。比内鶏は天然記念物で、それを普通の鶏と掛け合わせたのが比内地鶏で、我々が食っているのはそっち、というようなことを理解していないと出てこない。
 こんなことを言い出すのは、どうも大人 (団塊から上あたり) には必ずしも評判がよくないようだからである。ヒーローは未就学児童のものだ、という固定観念からいまだに抜け出せていないのであろうが、そういう色眼鏡で見てしまっているから、彼らが間違いなく地元を活性化している、ということを認められない。
 まぁ俺も正直、なんでもかんでもネイガーだなぁ、と思わないこともないのだが、ではあれだけの人気と勢い、アピール力を持つものがほかに存在するか、というとないのだからしょうがない。

 経済は停滞しているが、どうもエンターテイメントが元気である。
 メールをもらって、こないだからリンクしているが、「んだがらしゃ」というネットアニメがある。ちょっとアメリカン テイストのあるキャラが多数登場するのだが、その名前が、女の子が「めんけちゃん」など秋田弁を巧く使っている。缶バッジの販売が始まり、なんか CD も出る様子で、商業展開が激しい。
 アニメは、例の「やわらか戦車」がある livedoor ネットアニメで公開されている。

 こないだ新聞で見たのが「のしろっち」。また能代だが、「のしろ」のひらがなを「へのへのもへじ」のように並べたもので、ゆるさが絶妙である。作者のブログに絵がある。

 言葉に戻そう。
 NHK は数年前から日本語に力を入れてて、色んな番組をやっている。今も、「気になることば」というのをやっているが、この文章がなんだかぬるい。及び腰というか。言葉は変わるものだということを認めるのか、それとも伝統的な形に固執するのかはっきりしない。

 方言ブームは一段落だろうか。あるいは、話題にならないだけで、若い人たちは今でも「ちかっぱ可愛い」とかやっているのか。
「なまり亭」も終わってるみたいだし。ジャポニカ ロゴスはまだやっているようだ。見る気ないけど。

 もぞ (妄想) かもしれないが、もぞだといいな、というのが教育基本法の関連。
 伝統を尊重する、ということが言葉にどう影響してくるのか。
 本当に過去を尊重するのであれば、たかだか百年の標準語、全国共通語よりも、方言の方が大事、ということになる。だが、世の中はすでに「正しい日本語」教が幅を利かせているし、個人を縛ることが当然、ちょっとでも違う奴は即排除という風潮になってきているので、言葉狩りの日常化、方言狩りの再現はそう遠くなかったりするのではないんだろうか。
 というようなことを、月刊言語の「『国語』とは何か」という特集を読みながら思った。

 最後に重い話になった。
 2006 終了、である。




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