Speak about Speech: Shuno の方言千夜一夜




第498夜

「みだが、おめだち」ふたたび



 ネイガーは急速に活動範囲を広げており、なんと来月には漫画になると言う。作画は秋田出身の奥田ひとし氏。「萌え」雑誌らしいのでちょっと困っているところではあるが、まぁ、きっと買うだろう。CD だって、タワーレコードに予約したくらいだし。タワレコもでっかいディスプレイ作って宣伝してたよ。秋田店の週間チャートで 3 位だったらしい。
 俺が断念したふるさと村でのイベントは、噂によればキャパの倍の観衆が集まったとかで、まさに掛け値なしの「ネイガー旋風」である。
 で、先週、宿題にした、歌詞に出てくる秋田弁の解説で、旋風の一翼を担おうかと思う。
 歌詞の扱いが面倒くさいのは、「引用」とは何か、ってあたりで、引用を逸脱すると金を払わなきゃならなくなるんだが、ここでは「歌詞」ではなく「単語」を拾うだけなので、問題にはならないだろう、と踏む。
 その歌詞については、CD を買うのが一番いいが、オープニング (番組があるわけじゃないからオープニングというのも変だが) の「豪石! 超神ネイガー〜見だがおめだぢ」については、オフィシャル サイトに載っている。CD ではカットされている 3 番もあるので目を通すとよい。荒海丸 (アラゲマル) の歌もある。

【おめだぢ】
「お前達」。
「お前」だとちょっとぞんざいな感じに聞こえるかもしれないが、秋田で「君」はちょっと丁寧すぎる。というか、秋田弁という感じがしない。「君達、後楽園遊園地で僕と握手」という場合は、「おめ」にするしかない。
 ただし、「君」よりは距離が近いことに変わりはないので、まったくイコールかというとそんなことはないので注意。友達関係にならないと使えないし、目下だからといって、職場で部下に対して使うと空気が緊張するので留意されたい。
 ここでは「 (だぢ)」を使っているが、秋田弁における複数語尾には「 (がだ)」もある。
 違いがはっきりしない感じはあるが、俺の語感を言うと、「」のほうが砕けている。自分と同等、もしくは下の人に使う言葉である。
 尤も、「達」が (「たち」のほうも含め) 目上の人には使いにくい単語であることは同じである。たとえば、職場の飲み会で二次会に移動する場合、上司を先に行かせようとして、「部長達からお先に」とは言えない。
 が、「部長方 (ぶちょうがだ)」は絶対に言えない。ごしゃがれること必定である。「部長方」は、下っ端だけの席で、上司の悪口を言うときに使う表現だ。
 複数語尾については、エンディングの「遠い風の中で」にも出てくるので後で触れる。

【ケデ】
 藁のことらしいのだが、手元の辞典では見つけられなかった。「ケデ」はもちろん、「藁」に対する俚言が見つからない。『本荘・由利のことばっこ (秋田文化出版)』にもない。

【まだ来るがらな】
 ナマハゲの「泣く子はいねがー」は誰でも知っていると思うが、これもナマハゲのせりふである。子供達をひとしきり脅かした後、こう言って去っていく。つまり、定期的なメンテナンスがあるわけだ。

【アのマーク】
 耳で聞くと「あのマーク」かと思ってしまうが、これは歌詞カードで確認するべきだ。この「ア」は秋田県マークのことである。
 こないだ NHK で特集番組があって、水木一郎が「豪石! 超神ネイガー〜見だがおめだぢ」を歌ったのだが、そのときに出た字幕で、この「ア」をちゃんと秋田県のマークに置き換えていた。NHK にも、わかってる奴がいるな、と思ったことであった。
 県章だが、半分以上は都道府県名の文字から取っている (日本面白地理ゼミナールの「各県の県章一覧」とか)。「ア」かよ、と思った人もいるかもしれないが、躍動感と格調のバランスが取れたいいデザインだと思う。ブーメランみたいで、特撮っぽい雰囲気もあるし。

【キリタンソード】
 キリタンポをモチーフにした剣。イベントなんかでは、時折、タンポがすっ飛んだりするらしい。
 秋田魁新報に、「秋田名物! キリタン君」という、キリタンポのキリタンくんと秋田犬のポチが登場する、週一連載の漫画がある。基本的にはゆるキャラ漫画なんだが、キリタンつながりでコラボとか。「わー、僕はキリタンソードじゃないんだっぽ!」…ないか。
 タンポなんだから槍にすりゃよかったって話もあるが、グループならともかく、ソロのヒーローに槍はないような気もする。

【としょりだ】
 歌詞では「老人達」という字を当てているが、この「」も複数を表す語尾。
 上の「 (がだ)」の音が欠落したのかと思ったが、「老人ら」の「ら」が変化したものではないか、という気もする。

 正直、どちらの歌も、難しい字を使いすぎ(「いく」に「征く」って字をあててる)って感じがしないこともないが、まぁ、そこは、勢いということで理解する。
 この勢い、一体どこまで行くのやら。





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