『
月刊言語』で「方言文法全国地図 (GAJ: Grammer Atlas of Japanese Dialect)」の特集をやっている。
これは
国語研究所が 1976 年からスタートさせた調査で、全国で調べた語彙・文法現象を地図上に並べたものである。
国語研究所のサイトに
データがあって自由に利用できるというからちょっとのぞいてみたら、本当に生のデータで、詳しく見たわけではないのだが、これなら視点を変えての集計も自由にできるのではないかと思う。俺にはそんな余裕はないが。
相当前に始めた、
自分の卒論の公開も第一回で止まってるし。それも、「卒論程度」ではありながらそれなりに調査・集計したものなのだが、手元にあるのは卒論の文章と元になった調査票だけで、集計結果がない。公開を続けるには、もう一度、集計をやり直さなければならないのだった。
『言語』の記事に沿ってコメントをつけていく。
まず「へ」。「京へ筑紫に坂東さ」の「へ」である。
東北弁と言えば「
さ」であろうが、これが「さま」の変化したものであることは前に紹介した。つまり、本来は移動の方向を指す言葉だったわけだが、段々と意味を広げて「
仕事さ行ぐ」「
俺さ貸へ」「
此処さ在る」など、目的語全般に使われるようになる。
かと言って東北で一様なのではなくて、「見に行った」「大工になった」などの「に」は、少なくとも秋田では「
さ」にはならない。太平洋側ではなるらしい。
この調査では「犬に追いかけられた」を「さ」で表現した回答はなかったらしいが、俺の内省では違和感なし。言うような気がする。
事実を述べるのではなく、「あの犬のせいで!」というような不快感を強調したいときには「
犬にがって」という形になる。
いくつか飛んで、「見ろ」。
趣旨としては、上一段動詞の五段動詞化の調査
*1なのだが、ここで思い出すのは、東北や九州西部で使われている形式の「
見れ」が、若者を中心に全国で使われていることである。
ネットでは「やめれ」と同様、頻繁に見かけるが、これがどういう経緯で使われることになったものか興味がある。
このあたりをググると、「やめれない」など、いわゆる「ラ抜き」も一緒に引っかかってくるが、関係あったりするだろうか、とロクに考慮もせずに投げてみる。
そういや秋田弁には、命令を示す「
へ」という語尾がある。「
やめれへ」などのように言うのだが、この例自体にはちょっと違和感がある。しっくり来る例を挙げられなくて申し訳ない。
個人的に最も興味深いと思っている現象の一つが可能形なのだが、その項目も取り上げられている。
「能力可能」と「状況可能」というのは知っていたが、「属性可能」
*2というのもあるとは知らなかった。ちょっと調べたら、「インクがたっぷり入っているから、この万年筆で書ける」というようなことらしい。そういうのは「状況可能」だとばっかり思っていた。
前にも書いたような気がするが、秋田弁の例を表にすると: