複数のものがいっせいに不調になる、というのはよくある話で、先週、話題にした髭剃りに続いて、風呂釜がだめになった。
俺がこのアパートに入ったときすでに、使い込まれてるな、って感じがしてて、それからもう 10 年過ぎてるから、まぁ寿命と言っていいんじゃないだろうか。
数年前から、冬になるとものすごく着火しにくくなる、という状態で、正月とか実家に数日も帰っててしばらく触ってないって時には、電気ストーブであっためてやらなければならなかった。
ガスがそこまできてるのに電気ストーブって防災上どうよ、って話もあって気になってはいたのだが、ここに来て、まださほど寒くもないのに、点火に 10 分もかかるようになった。毎日毎日、点火だけに 10 分もかけてられないいし、その 10 分間、俺はずっとガチャガチャガチャガチャやってるわけで、最終的には点火するにしても、そのうち、部品がダメになるんじゃないか、ということで大家さんに電話、古いからねぇ、ってことで交換と相成った。
技術革新があったのか、単に前のが古かったのか、風呂を沸かすのにかかる時間が半分になった。こんなことならもっと早くお願いすればよかった。
さて、風呂については
前にまとめたことがある。
風呂について「
せふろ」という表現があることを紹介したが、そのときは「清風呂」と説明した。新しい水で立てた風呂のことである。
これに対して今回の調査では、「据え風呂」という表現が見つかった。これは俚諺ではなく、風呂の種類。蒸し風呂に対して、浴槽に張ったお湯に肩までつかる形式を言う。蒸気ではなく水 (お湯だが) につかることから、「水風呂 (すいふろ)」とも言う。これが変化したものではないか、という話。
富山県の
生涯学習カレッジの、民謡を紹介する
ページには「素風呂」という語も紹介されていて、これを「据え風呂」の変化したもの、としている。これも、「すえふろ」の二つ目の音が脱落する例になっているように思う。
ただし、「素風呂」をググると、圧倒的に、「入浴剤を入れてない風呂」のことである。
「据え風呂」については、風呂と言えばステンレス、ステンレスと言えば、の
東建ナスステンレスで、
お風呂の歴史を紹介している。
また、
江戸浮世風呂も読んでいて楽しい。艶っぽい絵も自作だと言うから驚く。
宮城ないし山形、おそらく東北南部って感じかと思うが、「
すっしょ」という形があるらしい。語源不明。見当もつかん。
同じく不明なのが、山梨の「
すいよろ」。「
すい」が、上に書いたような「据え」または「水」だとすると、「ふろ」が「
よろ」…あるかもしれんな。
前にも紹介した「
週刊ことばマガジン」から、「
ちゃっぱ」。手ぬぐいのことなのだが、厳密には「風呂で使う手ぬぐい」のことらしい。
てぬぐいについては、「
ゆて」「
ゆで」系が多く見つかるが、「
てのごい」の形がやたらと多い。福岡、鳥取、香川、京都、静岡、茨城、山形。
なお、秋田では「
てぬげ」「
てのげ」。
『秋田のことば (秋田県教育委員会編、
無明舎出版)』には「
ちょうずてぬぐい」もあるが、これは「手水 (ちょうず)」である。つまり、手を拭くためのもの、ということなわけだが (そもそも「手拭い」なんだけどさ)、こういう言い回しがあるんだとすれば、「
ちゃっぱ」に「風呂で使う手ぬぐい」という限定がつくのもうなずける。
秋田市では、5、6 年前にガスの種類が変更されている。強力なのになったのだが、無料で部品交換が行われた。そのときに言われたのは、強力になったからと言って、お湯が沸く時間が半分になるわけではない、ということだった。
あれはひょっとして、本体がそのままだから発生させる熱量を上げるわけにはいかない、ということだったのではないか。
今回の新しい器具は、その強力なガスに対して「ネイティブ」であり、そのパワーをフルに発揮できる、したがって、今度こそ、沸く時間が半分になった、ってことなのではないか、と思ったりする。もちろん、素人考え。
ついでだが、燃料と地域の関係で言うと、もし、近くに「臭い」を連想させる地名があったら、そこは石油が出たところだったのではないか、と疑ってみるとよい。
秋田の場合、「草生津川 (くそうづがわ)」というのがそれ。石油のことを「臭い水」と読んでいた名残である。