前回に引き続いて癒しシリーズ。今回は風呂。
聞くところによると、風呂に入ると気持ちがいい理由は不明なんだそうである。
風邪を引いたら入浴するかどうかは悩ましいことになるし、高齢者や心臓に疾患のある人は入浴には細心の注意が必要だ。実は、入浴というのはストレスのかかる行為なのである。
だから、体は一生懸命にそのストレス状態から脱却しようとする。つまり、快適な方向に持っていこうとする。だから気持ちいいのである、という話をどこかで聞いた。
風呂で東北弁と言えば「
どさ」「
ゆさ」であろう。かなり前に書いたが、「どこに行くのですか」「風呂に行くところです」である。
考えてみれば「湯」というのも凄い単語である。つまり、これは「湯」であって、本来は温度の高い水のことである。
ところが「湯」だけで、入浴用の温度の高い水、それどころか、それのある施設すら指してしまうのである。
「湯加減」と言ったら、入浴用のお湯の加減であって、コーヒーを入れたりカップラーメンを作ったりするお湯の加減ではない。「箱根の湯」は箱根で沸騰させた水ではないし、「秘湯」は秘密のお湯ではない。
「
ゆさ」は東北弁だが、「
湯にへぇって」なんてのは東京落語でよく聞くフレーズだ。銭湯や温泉の暖簾に「ゆ」と染め抜いてある、なんてのは全国的な話。
子供を風呂に連れてって、上がって着替えたばっかりのよその子供の服を脱がしたり、隣の人を洗っちゃったり、という落語があったと思うのだが、あれは何の話だっけ。「粗忽長屋」は違うしなぁ。「桃太郎」は大阪落語だし。
大辞林によると、風呂を沸かすことを「湯を立てる」と言うらしい。風呂に入ることは「湯を使う」「湯を引く」だそうだ。「湯を使う」あたりは聞いたことがあるが、「湯を引く」は初めて聞いた。なぜ引く? しかも、「ゆびき」になると料理法で、お湯にさっと通すことなのだな。
「
おびちょ (「
南信州伊那谷てんこもり」の「方言講座」)」「
おどんぶ (
伊那の方言)」「
ぼちゃ (「
おしゃべり小箱」の「信州小事典」)」「
すうしろ、
せいふろ (「
いわき石川の里」の「方言エッセイ」)」「
ごよもん (「
Masanoriのホームページ」の「土佐弁」)」。
これ、全部「風呂」である。
最初の 3 つは音から来たものか?
「
せいふろ」っていうのは、「清風呂」と書くらしい。風呂全般ではなく、新しく水をはって沸かしたものだそうな。「
すうしろ」は「水風呂 (すいふろ)」なんだとか。
「
ごよもん」は言うまでもなく「五右衛門風呂」から来たものであろう。
「
おびちょ」「
おどんぶ」「
ぼちゃ」は幼児語の響きがある。因みに秋田あたりでは「
あっぽ」「
おっぽ」と言う。「お風呂」の変化か? と思ったりする。
風呂って幼児語形が多いのではないかと思うのだが。子供も日常的にやることだからか。嫌がるから、なだめすかして入れないといけない、ってこともあるんだろうし。
入浴することは、今書いた通り、「はいる」が一般的だが、ちゃんと肩までつかることを「
こずむ」という地域がある、ということは前にも紹介した。「
はまる (「
福井市春山小学校/福井について」の「福井の方言(H8,4年生)」)」というところもあるらしい。
ややこしいのは高松あたりで、「
いる (「
高松案内(高松に来い!)」の「香川に来る人のための方言講座」)」というのだそうな。「入る」である。これを活用させると、「
風呂にいった」となる。これは、「行った」ではなく「入った」なわけだ。おそらく、「内風呂ではなく銭湯に行ってきたのだ」ということを表現しようと思ったら、長めの表現になってしまうのだろう。
ところで、「入る」のに「上がる」というのは何故だ? 確かに「出る」とも言うが。「下がる」「降りる」とは言わないよな。
熱くなりすぎたお湯に水を入れて温度を下げることを「
うめる」と言う。これ、方言形だと認識している人が多いようだが、辞書に載っている。載っているだけでなく、用例を集めてみると全国に散っている。俗語なんだと思う。まぁ、丁寧に地図化してみたわけではないので、周圏分布である可能性もあるのだが。
東海・中部・北陸あたりでは、お湯が沸騰している状況を「
ちんちん」と言う。アルマイトの薬缶じゃなくて、鉄瓶だと本当にそんな音がする。あれは何の音? 風呂の湯に使う地域があるというのはちょっと意外だったが。風呂が沸騰することは、普通はあるまい。
風呂自体は嫌いではないのだが、忙しいときなんかはわずらわしい。仕事ならサボる口実にもなるが、好きなことをやっていて忙しいときは夏場でもパスしたくなる。
スキンヘッドにして洗髪の手間を省きたいと思うのだが、世間の目が恐くて実行できずにいる。
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