Speak about Speech: Shuno の方言千夜一夜




第506夜

Land of Wind (前)



 実家に、日産のカレンダーがかかっている。車のメーカーらしく、「風」をテーマにしたものである。
 全国各地でロケをしたもので、どうやら方言形を並べているらしい。
 時期的に、もう半分以上、終わってしまっているのだが、今回は、これをネタにしてみようと思う。

 好評なのか、このカレンダーについて言及しているホームページやブログがいくつかある。
   大野 武さんの「ウォ−キング日誌 (2006/1/1)」
   lafiesta さんの「ぽんこり・ミュージアム (2005/12/10)」。
   tomosarasa さんの「TOMOごと (2006/5/15)」
   はぐれ雲さんの「はぐれ雲の人生散歩! (2006/4/15)」
      Google での出現順)
 確かに、商売っ気のない、車が必ず写ってる割に落ち着いたカレンダーである。実は、ここのカレンダーは、暮れに実家に帰ったとき、NHK の海外向けとならんで、父と取り合いになることが多い。

 本来なら正月からはじめるべきだろうが、それもなんなので、近いところから。

 8 月の撮影場所は、山形の酒田。GW に行って、あまりの混雑にパスした山居倉庫。shounaimai.or.jp というものすごくわかりやすい URL の「JA 全農庄内」に、撮影時のレポートがある。
 風の名前は「下り」。南風である。
 最初がこれかよ。
 ネットで検索したらものすごい量のノイズ情報が出てくるのは目に見えている。しょうがないので、「下り 酒田 南風」で検索。「南風」を入れたのは、列車のページがヒットするに違いない、と思ったから。
 実は「南風」を入れても列車のページはあった。旅行記であれば、風に言及するのは普通だから。それに、四国に「南風」って名前の列車があるのだ。
 というわけで、旅行情報を排除できず(「方言」を追加しても旅行記はヒットする!)、「下り」の探求は諦めた。
 カレンダーによれば、北前船の追い風の由。京都から離れていくときの風だから「下り」?

 ここから月ごとに。
 9 月は「青北風」。「あおぎた」と読むが、「あおきた」とするページもある。夏から秋に移るときに吹く北風で、空が真っ青に澄むことから言うらしい。実は、紹介する人によって、晩夏だったり初秋だったりするのだが、いずれ、涼しさをもたらす風である。
 同義語扱いをされている語に「雁渡し」というのもあるが、こうなると完全に「秋」という気がする。
 カレンダーでは、高知の風景が写っているが、秋の季語らしい。したがって、各ホームページで紹介されている地域も広いのだが、おおまかには、「青北風」は西日本、「雁渡し」は東海ないし近畿の太平洋側、というあたりらしい。

 10 月は「新北風」と書いて「みーにし」と読む。カレンダーの写真は石垣島だが、沖縄の言葉として紹介されていることが多い。
 それこそ列車の名前みたいな字面だが、「にし」が「北風」のことである、というのは随分と前に紹介した。
 で、「みー」は「新しい」という意味なんだそうだ。つまり、「新北風」というのは意味から当てた字だということになる。季節が変わったことを、「新しい」で表現したのだろうか。
 これにのって、鷹の一種である「サシバ」が九州から渡ってくる。
 渡りをする鷹、というのも初めて知った。国際保護鳥なんだって。

 11 月は志摩で、「あなじ」。
 これも守備範囲が広く、長崎までカバーしている。北西風で、「乾風」という書き方があるそうだ。
「かかあ天下とからっ風」の「からっ風」も「乾風」と書くことがあるらしい。これも北西の風。
 風とは関係ないが、「おなじ」のミスタイプで「あなじ」と書いているページが多い。実は俺もしょっちゅうやる。キーの位置は遠いのになぜだろう。

 12 月の「愛宕おろし」は説明不要か。NHK の放送局があったところではなく、京都の愛宕山から吹き降ろしてくる風のことである。「嵯峨おろし」とも言う由。
 聞くところによれば、嵐山はもと「荒樔山 (こうそうやま)」という名前だったのだが、愛宕おろしで花が散りまくるのでこの名がついたのだとか。

 おしつまって来ました。
 では、よいお年を。





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