Speak about Speech: Shuno の方言千夜一夜




第507夜

Land of Wind (後)



 日産のカレンダーを紹介している。8 月からはじめて暮れまで。今週は、正月に戻る。

「初東風」は、そのまま「はつこち」。「はつごち」としているページも散見される。
 字面でイメージできた人もいるかもしれないが、正月の季語。やっぱり、歳時記は手元に置いたほうがいいのかしらん。えぇ、3 年前も同じことを言ってます。

 2 月は「鹿の角落とし」。
 鹿の角が生え変わる時期に吹く強風。
 ウェブでは、このカレンダーに関する話しか見当たらない。

 3 月は「光風」。
 いかにも春を感じさせるが、俚言としての言及を見つけられず。きれいな字面のせいか、組織名・団体名が多い。
 カレンダーでは、福島で撮影しているので、それを追加してみたのだが、SF 作家の福島正実が光風社ってところから本を出してて、それが多量にひっかかる。
 そういうのは蔵書に関するページであることが多いので、キーワードとして「方言」を追加しても一向に減らない。追求断念。

 年度も改まって、「花の下風」。
 これも歌によく出てきそうな感じの表現だが、全くその通りで、方言としてのページが見つけられなかった。

 5 月の「ルシャ風」。北海道であることは説明の必要もあるまい。これまた想像の通り、非常に強い風らしい。シーカヤックやボートをやっている人のページで、危険な風として言及されている。
 あと、日本損害保険協会というところが、全国の局地的な強風の一覧を持っている。教養のためのエッセイとかではなく、自然災害に関するまじめな記事(「風害に備えて」)。

 6 月の「黒南風」。「くろはえ」と読む。写真は岡山だが、これまた夏の季語。
 梅雨時の南風で、これを聞いただけでムシムシしてありがたくなさそうな感じがする。これが吹くと空が黒くなって雨が降り始める。
 そうかと思えば、梅雨末期の南風は晴れを運んでくるので、「白南風 (しろはえ)」というそうな。
 さらに、伊豆の猟師達は、梅雨の真っ最中の強い南風を「荒南風 (あらはえ)」と呼んで、漁に出てはならない兆候としていたとか。(沖縄気象台の「黒南風・白南風」)。
 真南からの風を「正南風 (まはえ)」と呼ぶ、という記事もある。

 ラストの 7 月は「いなさ」。
 台風から吹き出してくる強い風、ということになるらしい。範囲は、房総から四国、つまり「安房」から「阿波」と、やたらに広い。
 沖から吹き込んでくる、という表現も見たが、例えば秋田の場合、沖は東。東海地方なら南、というわけで、台風からの風といわれても方向はまったく違う。
 これもすでに紹介したが、同じ呼び方なのに方向が全然違う、というのは、なにせ相手は自然現象、よくあることだ。

 アパートの網戸がガタガタ鳴るようになって数年。
 どうやら、くたびれてきたところに、いつかの台風で限界を超えてしまったらしい。フレームに挟みこんでる部分からスッパリと切れている。
 面倒なのでほったらかしにといたらどんどんとたるんできて、最近は、風が吹くと一緒になってハタハタと揺れている。強い風だと、その運動エネルギーがフレームを巻き込むわけ。
 今年あたりからは、隙間が 5cm 位にまで拡大して、そっから虫が入り込むようになってきた。蚊ならまだしも、蛾がやってくるので、うーんいかんな、と思っているところだ。
 思っていたら 8 月も終盤、もうすぐ窓を開けっ放しで寝ることもなくなるので、今年はこのまましのごうかな、と。
 ただ、世の中は殺伐としていて、そういうのを見つけると、有無を言わさず修理してしまい、法外な値段を吹っかける奴もいるらしい。自分でやったらそう金もかからないようだし、やっといた方がいいんだろうか。





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