Speak about Speech: Shuno の方言千夜一夜




第497夜

みだが、おめだぢ!



 ついに、超神ネイガーの主題歌 CD が発売された。
 歌うはなんと、あの水木一郎。そう、あの「超人バロム1」「仮面ライダーX」「仮面ライダー ストロンガー」「忍者キャプター」「ザ・カゲスター」…きりがないのでこの辺にしておくが、あの水木一郎。誰がどうやって渡りをつけたのか、御大の登場である。実は昨日もふるさと村でネイガーとのジョイント ライブがあったのだが、ちと遠いのと用事があるのでパスした。ここのところ、何度も来秋している模様。
 当“Sigma-Section”では、ネイガー用語の解説でお祝いの言葉に代えさせていただきます。

【ネイガー】
 われらがヒーロー。でも神様。
 なまはげの「泣ぐ子はいねがー」の後半を持ってきて、ヒーローらしい音に変形したものだと思われる。「ねいが」という秋田弁はない。
 が、偽ネイガーである「メグセグネイガー」のネーミングは、「〜ないか」が「ねが」になるのを利用していると考えられる。「メグセグネイガー」については後述。

【ダジャグ】
だんじゃぐ」と言うこともある。強度のわがまま、というか、辺りを省みずに我を通すことである。
 悪いことを指す。もしくは、言った人は、その内容が悪いことである、と認識している。たとえば、「将来のためにも、ここで痛みを伴う改革を実行しなければ」という場合、その痛みを共有することが皆に認められていればいいが、ただの独りよがりの場合は「だじゃぐ」と言われてしまう。
『秋田のことば (秋田県教育委員会編、無明舎出版)』は「惰弱」の字を宛てて、「怠けで進取の気性がないこと」としている。その結果として、体力がなかったり、乱暴になったりする、とあるが…。
『語源探求 秋田方言辞典 (中山健、秋田協同書籍)』の方は、「傍若無人」の前半分としている。変化に無理があるような気がするんだが。

【ホジーネ】
 ダジャグ組合の下っ端怪人。
ほじね」は、『全国アホ・バカ分布考』でも取り上げられた表現。「馬鹿」に相当するが、頼りない、芯が通っていない、救いようがない、などのニュアンスも持つ。
「本地」がない、つまり、寄って立つ場所がないことから、という解説をされることもあるが、ちょっと怪しい。
 土地神話は昔からあったらしく、名古屋方面の「たわけ」も「田分け」で説明されることがある。子孫に田んぼを分割して相続させていくと、そのうちに、小さくてどうしようもなくなる、そういう愚かなことを指す、という説明である。

【ガジェーネ】
 ダジャグ組合の下っ端怪人。ゲドンの赤ジューシャと黒ジューシャみたいなもんか。
「頑是無い」が「がじぇね」。

【ボッコレタマグラ】
 ダジャグ組合の怪人。
 既出

【モッタリマゲダリ】
 ダジャグ組合の怪人。
盛ったり撒げだり」。
 器に料理をを盛ったり、元に戻したり、と言うことを何度も変化させることを言う。
 秋田では「撒く」を「撒げる (『げ』は濁音)」と言うことがある。ニュートラルな自動詞で、可能・受身・自発ではないことに注意。

【カマドキャシ】
 ダジャグ組合の怪人。
 これも既出だが、オフィシャル サイトで「ドカンと一発かまどきゃし」の交通標語に触れているところを見ると、あれって相当に有名な標語のようだ。尤も、俺も、ネイガーの本拠地である由利に行くときに見つけたのだが。

【セヤミコギ】
 ダジャク組合の組合長。
こぐ」は、よくないことに対する「する」である。「馬鹿なことを言う」が「ばがこぐ」、「嘘をつく」が「ばす こぐ」、「居眠りをする」が「ねぷかぎ こぐ」となる。
せやみこぎ」は、「背病みこぎ」で、あそこが痛い、ここが痛い、と言って怠ける人を言う。

【ハンカクサイ】
 と書くと怒られる、ダジャグ組合行動班長。「ハン・カクサイ」が正しい。「クレヨンしんちゃん」の映画で「雲黒斎」という敵が出てきたが、あんな感じか。
はんかくさい」は「はんかくしぇ」と発音することもある。「半可通」に近い。

【メグセグネイガー】
 ガジェーネが化けた偽ネイガー。
めぐせ」は、「醜い」「見苦しい」だが、「めぐせぐねいがー」は「見苦しいよねぇ」という意味にもなる。
 津軽では「恥ずかしい」というニュアンスが強くなるが、南部 (青森県の東側から岩手の北部) に行くと「恥ずかしい」というニュアンスはなくなるので要注意である。
 テレビの人が、南部でインタビューをしようとしたら、さかんに照れているので、「恥ずかしがらなくてもいいよ」という意味で「そう めぐさがらねで」と言ったら相手の機嫌を損ねてしまった、という話は大分、前にした。

【アラゲマル】
 第三勢力。ネイガーを敵視しているが、ダジャグ組合と組んでいるとも言い切れない。
あらげる」は「暴れる」。
 肩にテトラポッド*1、武器はタラバズーカ*2、ベルトには陸上でも動作する魚群探知機と、海の人である。
 これに「荒海丸」という字をあてるセンスがすばらしい。

【アネコムシ】
「カメムシ」のこと。ダジャグ組合は秋田県民をカメムシにすることを企てている。
 臭いので「ヘッピリムシ」などと言われることもある。
 聞くところによると、あの臭気はカメムシ自身にとっても毒らしい。
アネコムシ」は、女性の化粧の匂いと結びつけたものだが、ずいぶんな話だ。

がっつりやる
 こないだ、セリオンのショーでハン・カクサイ様がおっしゃっていた言葉。
「がっちり」からの連想で、「しっかりやること」などと思ってはならない。
 これは、「叩く」という意味。
 ニュアンスとして、叱る、たしなめる、という目的で叩くときに使うような気がするのだがどうか。ケンカでも相手を叩くことはあるが、それを「がっつりやる」と表現するのはつらいように思う。そのケンカのきっかけが「がっつり」であった、ということはあるかもしれない。

家で言わいでるいに
 これもハン様のお言葉。
 ショーで、子供を前に引っ張り出してのアトラクション。名目は、ホジナシ戦闘員を集めるため、である。
 子供に、ほじねことをさせるわけだが、そんなこといきなり要求しても幼児には対応が難しいので、大きな声で「ほじねー」とか叫ばせる。このとき、「家で、そうやって怒られることあるでしょう? お母さんとかに言われてるのと同じことを言ってください」と促すわけだが。
 言われてないかもしれないよ。そのショーでもそうだったし、スーパーで買い物してるときにも思うが、最近のご家族は、やっぱり秋田弁を使ってないような気がする。

【ネイガー ジオン】
 先日、ついに姿をあらわしたネイガーの弟分。
 この「ジオン」は、「ネイガー」と同じく、既存の単語をヒーローの名前らしく並べ替えたもの。
 次男のことを「おんじ」という地域がある。これの変形である。
 スペースノイドによる独裁を狙っているあそこではない。

 本当はその主題歌「豪石! 超人ネイガー〜みだが、おめだぢ〜」の歌詞も解説するべきなのかもしれないが、歌詞の取り扱いは色々と面倒なことが多いので、また別の機会に。
「また」?




*1
「テトラポッド」って商品名だって知ってました? 「テトラパック」もですけど。(
)


*2
 先端にフラッシュが仕込まれていて、目に残像が表れるほど。(
)






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