Speak about Speech: Shuno の方言千夜一夜




第473夜

ALL UP 2005



・とにかく出かけた。出張と MTB のレースその他のプライベートをあわせると、3 週に 1 回のペースで県境を越えている。
・映画を見た。4 週に 1 本。
・金を使った。車屋には、車の本体価格の半分くらいの金を払ったし、そのくせ HDD レコーダーとか買ってる。維持費を考えたら、車は買い換えるべきではないか、という意見もある。
ピアノに注力した。その分、しわ寄せが自転車に行って、ほとんど練習しなかった。これでは勝てない。しかもピアノも上手くなってない。
・体調が悪かった。胃腸は不調だったし、石も出た。

 一年を振り返ってみた。
 忙しい、という実感は正しかったようだ。3 週に 1 回の県境越えには我ながら驚いた。
 読書量も減っていると思われる。面白くなくなった雑誌を 2 冊やめる予定なので、その分の時間が回せるといいのだが。ただ、着実に部屋は狭くなっている。ここ数年、処分したり、資料価値はあるが読み返す可能性の低いものは押入れにしまったりしているのだが、それでも溢れそうだ。高度情報化時代だから、百科事典、捨てるか?

 方言・言葉・地域のことを振り返ってみる。
 さすがに、方言ブームのことは触れないわけにもいくまい。火付け役は誰だか知らないが、Matthew's Bet Hit TV の「なまり亭」と、その第一回ゲスト・浅香唯に功労賞。新山千春はこないだ、わが恩師の井上史雄先生と一緒に「誰でもピカソ」に出ていた。知らなかったので途中からしか見てないのだが、井上節のコメントもありました。博多華丸・大吉という博多弁の漫才コンビは面白かった。
 一般的に、土着系とは見做されない芸能人が自分の方言を隠さない、というのは数年前からあって、タレントたちがそういう番組に出演すること自体は決して珍しくはない。だが、見るほうに下地ができて、しかも、かわいーぃ、という評価まで貰ってしまうようになった。後者は、単に遊ばれているだけだ、ということには留意しなければなるまいが。
 その割に、新しい表現が見つかることはあんまり多くないのだが、そんな中、「ドンパ」はうれしかった。さすが北海道、という感じがする。

「正しい日本語」教の勢いは凄まじい。自分は正しい、ということを声高に言える人がこれだけいるのかと思うくらいだが、ひょっとしたら日本人感を改める必要があるのかもしれない。ネットの文章を読んでいると、この界隈の人たちは意外に保守的だ、ということもわかるのだが、この辺、標準語 (意識) の形勢が国策であった、ということと考えあわせてみるといいのかもしれない。
 あぁ、これは、絶対的な標準が欲しい (しかも自分を標準と思いたい)、表向きを整えたい、ということで、アメリカ化と見てもいいのかもしれないなぁ。

 凄まじいといえば、地域エゴの噴出もすごかった。市町村合併の泥仕合。「能代」「白神」のゴタゴタもすごかったが、合併しといて、後で抜ける、とかいうことを考えているところもあるとか。
 それをよそに、合併完了後の地図が出版されている (ウェブにもある)。それを見て驚いたんだけども、山形ってほとんど合併しないのね。
 首都大学東京が開学したのも今年。「首都大学」て。政治的な思惑は無視するととして、奇妙な言語センスだと思う。

 流行語については、まぁ、どうでもいい、って感じ。
 一覧を見ると、メディアが政治におんぶに抱っこであるざまが如実に示されていて、それはそれで興味深いというか、絶望せざるを得ないというか。衆院選をメディアが左右してしまった、ということに対して、メディアは無自覚というか気づかないふりをしている*1ようだが、その辺については今の『言語』が「権力とメディアのインタラクション」という特集をしているので参考に。この雑誌にしては珍しく生臭い文章が並んでいる。
 ついでに脱線すると、同じくプロ意識の欠如ということで、「のまねこ」の一見は鼻白むしかなかった。尤も、リバイバル、パート 2、引用、オマージュと、借り物で稼ぐ傾向はここ数年、ずーっと続いているので、これもその線上にあると考えるべきなんだろう。

 ほかの例に漏れず、最後に来るのが、物故者。
 周囲でも、伯母とか、大学時代の先輩とかあったのだが、有名人では、年齢で言うと、中尊寺ゆつこ にはちょっとびっくりした。本田美奈子も早逝だが、渡辺謙や吉井怜が白血病から復帰しているだけに、これも驚いた。世間はそんなに本田美奈子のことを知っていたのか、というのも正直、意外だった。
 特撮監督の有川貞昌、特撮に多く出演している根上淳と藤木悠、NSP の天野滋も今年。まぁ、正直に、林由美香の名前も挙げておく。
 日本語の世界では、平山輝夫。もうちょっとあるかと思ったが、俺の本棚には『日本の方言(講談社現代新書)』しかなかった。

 方言ブームは一段落すると思う。「なまり亭」はスタッフの精進次第としても、いわゆる「若者」が方言を使ってみる、というのは、遊びの域を出ないので、春までもたねんじゃね?
 世間の人々の考えが短絡的しかも硬直化してるように見えるので、「正しい日本語」教もますます強くなるだろう。ただし、一人一宗派の百家争鳴なので、勢力は強くなるまい。これも、長いスパンで見れば消えるだろう。
 だって、「正しい日本語」には実体がないし、「正しくない日本語」のメイン ユーザーは偉い人だからね。




*1
俺様キングダム」というブログに、面白い指摘があった。
 男性向け週刊誌や夕刊紙が必死に反与党キャンペーンを張っていたが、若い連中は、そういうのを電車の中で読んでるようなくたびれた中高年のようにはなりたくない、と思っており、それがすっかり逆効果になってしまった、というもの。 ()






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