小熊座。
大熊座の尻尾が北斗七星なわけだが、小熊座も鍵形をしている。
そのため、北斗七星が北極星を狙っているのだが、小熊座がそれを守っている、という伝承があるそうだ。
蠍座とオリオン座が、同時に見えることが無いことから、オリオンが蠍から逃げ回っている、という見立てをしていることは有名だが、そういうのは多い、ということだ。
前述した蠍座のアンタレスも、赤いことからこれを酔っ払いと見て、別の場所にある「酒升」型の星座に酒代の借りがあり、それから逃げている、というのも紹介されている。
射手座。
東側にある柄杓を南斗六星と呼ぶ。
西側にあって、台形に並んだ部分を「
みぼし」という地域がある。これは「箕」である。台形で、底辺に縁が無い大きなザルだと思って欲しい。穀物を入れて、フライパンのようにあおって殻なんかをより分けるのに使う。ドジョウすくいで使うようなの、って言えばわかるか。
で、台形になってるから箕、って見立ては全国にあったらしく、時には北斗七星の水を入れる部分を箕としているところもある。
山口の一部では、この射手座の箕を「
東京箕」、水瓶座の台形を「
長崎箕」と呼び分けたそうな。
そうかと思えば、香川では、蛇使い座とケフェウス座を「
讃岐の箕」「
備前の箕」と言った由。
カシオペア座。
錨と山という見立てがある。
カペラは、御者座の中の一番明るい星だが、「
能登星」「
佐渡星」「
矢崎星」などの名がある。これは、福井、富山、佐渡から、そちらの方角に見える星、ということである。
で、牛飼い座のアルクトゥールスは、その「
能登星」をにらむように出てくるので、「
能登睨み」と呼ばれている。
双子座。
二つ並んでいるからこういうわけだが、蟹、鰈、猫、犬の目になっているところもあるほか、眼鏡に例えられていたりもする。
昴。
これが、「統べる」の自動詞である「統ばる」、星が固まったものを表現した言葉であることを知っている人も多いと思う。
これを「
相談星」「
鈴生り星」などというのはきれいでいいが、「
ごちゃごちゃほし」となると、実も蓋も無い感じがする。
そうかと思うと、単に固まってる、というのではなく、ちゃんとその形を見て、「
はごいたほし」などと言ったりする。ということは、柄杓にも似ているわけで、英語では“Little Dipper”だそうな。
オリオンの三ツ星。
きれいにまっすぐ並んでいることから、「竹の節」だったり、糸を巻き取る「かせ (木へんに上下)」という道具だったり、稲を干すため横に渡した「稲架
(はさ)」だったりする。
篭を担ぐ見方は
前に書いたが、3 つ並んでいるものを、中心とその両側、と捉える見方も自然である。で、この三ツ星の両側を、源氏と平家に見立てる呼び方が岐阜にあった。
これは位置関係だけでなく、赤いのと青白いのを、源平の旗の色と対比させてもいる。紅白戦の由来が、源氏と平家の旗の色だってことは知ってますか?
オリオンそのものは、鼓になっている。人の影より、こっちの方がよっぽど自然だ。
最後にカノープス。
冬に南の方向で、地平線のすぐ上、見えるか見えないか、という位置に出る星。北日本ではまず無理、という星のため、中国では、これが見えると不吉なことが起こる、などとされている。そうかと思えば、これが見えると寿命が延びる、とかいう言い伝えもある。
そういう位置関係なので、出たと思ったらすぐに隠れてしまう。岡山では「
讃岐の横着星」、讃岐では「
土佐の横着星」と呼ぶ。
さて、なんだか羅列で終わってしまったような気がしないことも無い。
これは、□□ではこの星座を○○に見立てている、という場合、○○が、□□にしか存在しないものでない限り、ほかの地域でも同じように呼ばれうるからだ。たとえば、双子座を蟹の目と見る表現は、新潟、茨城、静岡、三重、高知、岡山、高知、熊本と全国に散らばっている。あんまり面白くないので、地域については割愛した。関心のある人は
現物に当たってください。
その現物だが、ほかに、沖縄、奄美、アイヌの呼び方、古典に出てくる星なども紹介されている。
自由研究の季節はもう終わったが、これから夜長の時期にも向かうし、「それは、鯨っつーよりゴジラだろう」などと突っ込みながら天を仰ぐのも楽しいだろうと思う。