Speak about Speech: Shuno の方言千夜一夜




第446夜

老年よ



 前回は 2 年前だと持ってたら 3 年前だった。布施明のコンサート。
 今回は朗読劇というのもフィーチャされていて、それはそれでいいんだが、その分、歌が少なかったのはちょっと寂しい。
 本人としては複雑なものがあるようだが、前半の目玉は、仮面ライダー響鬼 (ひびき) の主題歌「少年よ」。前振りあり、後振り (そんな単語があるのかどうか知らないが) ありで、20 分くらい、この話だったんじゃないかな。
 チャート初登場で 12 位というのは、布施 明の曲の中でも最も早い立ち上がりなんだそうである。
 昨今、多分、2002 年の龍騎あたりから、特撮の歌は本格的に売れるようになってきた。「魔法戦隊マジレンジャー」だって初登場 17 位。尤も、「少年よ」はいい曲だし、何と言っても、歌うのが「あの布施 明」だから、CD が出るのを待っていた人は多いだろうと思う。*1

 前回もそう思ったのだが、ジ…年を重ねた男女の多いこと。どっちかといえばバ…女性だが。
 相変わらず、秋田弁で下世話な会話を繰り広げている。開演しても収まらない。歌い始めても収まらない。このじゃごもんがだが。

じゃご」は「在郷」で、「田舎」ということ。「じゃごもん」は「田舎者」、「じゃごくせ」は「田舎臭い」。「じぇご」「じゃんご」という地域もある。「ざい」と言ったりもする。大辞林によれば「在」という呼び方はあるようだ。
 さて、ここで困った。各地の方言で「田舎者」「田舎」をなんと言うのか、を知りたいのだが、「田舎 and 方言」で検索するとものすごい数のページがヒットする。当然である。ピックアップしようとしばらく頑張ったのだが、途中で断念した。
「在郷」系が多いようではある。
「かっぺ」を俚言形としているページがあるようだが、それはどうだろう。「いなかっぺ」の省略形なのは確かだが。
 というわけで、「田舎」「田舎者」の俚言形は後の課題、ということで。

 上の「がだ」は「方」で、複数であることを示す語尾。標準語でも「方々」と言って複数の人を指すことがあるが、あれと同じ。ただし、複数を示すときに「方」そのものは使わないので、濁点を取って「わたしがた」などと言っても他所では通じない。これも「気づかない方言」の一つ。
」もある。「だぢ」という音にはなるが。
 なんとなく、なのだが、「がだ」の方が、「だぢ」よりも相手を下に見ている、という感じがする。
 明確な根拠は持ってないのだが、「あいつら」に相当する「あれがだ」という単語なんかもそれに当てはまりそうだ。「あれだぢ」はあんまり聞かない。「じゃごもん」にしても、「じゃごもんがだ」とは言っても「じゃごもんだぢ」とは言わない。
「あの人たちってどうしようもないからね」と言いたいときは、「あの人だぢ」より「あの人がだだば なんともさいねものな」と言う方がしっくりくる。

 それにしても、田舎者はなぜじゃご臭いのであろうか。
 ほかの地域の人との接点がない「井の中の蛙」だから、というのは容易に思いつく答えだが、それは、上演中に大きな声でおしゃべりをする、ということの答えにはなってないと思う。それがよくないことだ、というのは、考えればわかることだからだ。
 むしろ、濃密な人間関係の中で、自分のミスを大目に見てもらったり、自我を押し通したり、ということを日常的にやっているからではないか。人間関係が濃密であるがゆえに我慢しなければならないこと、というのも勿論あるわけだが、半径 1km 以内の人は全て自分を知っている、という環境で、「○○さんのやることだから」と言ってもらえる――あるいは、言われてしまう――ということが常態化すると、状況を見つつ自分のやっていることをチェックする、ということができなくなってしまうのではないか。
 言われないと気づかない事柄、というものもあるに違いないが、「上演中はケータイを切れ」「写真をとったり録音したりするな」と何度もアナウンスされているのに、そのケータイを取り出して写真をとろうとする、というじゃご臭さには呆れて物が言えない。

仮面ライダー響鬼」では、ライダーが組織化されている。その本部があるのが「吉野」で、彼らが使っている車のナンバープレートは奈良だったりするのだが、そのうち、あっちの言葉遣いの戦士とか出てくるんだろうか。
 出てくる、と言えば、その「猛士 (たけし)」という組織の幹部として、布施 明が 8 月に登場するらしい。楽しみだ。




*1
 ただ、視聴率の方は、それほど楽勝ではないらしいので、特撮の主題歌がこうまでヒットするのは、ほかの曲が売れてない、ってことなんじゃないか、という気はしている。(
)

*2
 ダジャレのタイトルにしてみたが、「少年」が人を指すのに対して、「老年」が年齢層を指す、という非対称に気づいた。
 尤も、「少年」の対称形は「多年」かもしれないが。そうなると、期間を指してしまい、接点すらなくなるのだが。()





"Speak about Speech" のページに戻る
ホームページに戻る

第447夜「出て来い、謝罪」へ

shuno@sam.hi-ho.ne.jp