Speak about Speech: Shuno の方言千夜一夜




第443夜

春の宮城で



 MTB シーズンが開幕して 1 ヶ月。
 もうちょっと早いか。4 月中旬くらい。
 今年は冬がグズグズと続いて、4 月になっても、積もらないまでも雪が降ったりしてたので、なかなかスタートが切れなかった。無理に出かけて、寒さに耐え切れずにすぐ帰ってきてしまった、ということもあったな。

 第一戦は、地元のショップ主催の大会。会場は太平山のスキー場、オーパス。自分達でコースを作って、自分達で後片付けをする。
 第二戦は、宮城の歌津町、田束山 (たつがねさん)
 第三戦は、同じく宮城、仙台市の泉が岳。
 この辺の話は、実はにも書いた。

 歌津町では民宿に泊まった。非常に朗らかな女将さんで、別の言い方をすれば、一人でしゃべってるという感じ。帰り際、一万円札しかなくて小銭の釣りで迷惑をかけてしまったのだが、もっと若かったら体で払ってもらう、っていうこともあるけどね、などと失礼なことを言う。
 この人の言葉遣いはごく普通。普通、という言い方は問題があるかもしれないので言い換えると、一応、他所の人に向けて標準語っぽくなるよう気を遣ってはいるのだが、いたるところに方言的特徴が残っている、という言葉遣い。聞いててわかりやすい。
 そうではなかったのが、町内放送。強力なスピーカーであたり一帯に役場からのお知らせを流す、というあれ。
 直前に震度 1 の地震があって、海水浴場なもんだから、かなり寒かったのにも拘わらず、窓を開けて放送に聞き入ったのだが、何を言っているのかわからない。スピーカーのせいではなく、俺が知っているイントネーションと全く一致しないのである。宿の女将さんとも違う。耳が慣れるにしたがって、どうやら地震とは全く関係のない、暢気なお知らせをしているだけらしい、ということがやっとわかった。
 いや、地元および関係者の皆さんには申し訳ないが、びっくりした。
 後で思ったのだが、あれって、「よそ行きの方言」だったのじゃないか。
 秋田でも、改まった場面で使われる方言はあるが、イントネーションが普段の言葉遣いとは大幅に異なる。妙なイントネーション、と言っても差し支えない場合すらある。

 大会は、規模の大きい手作りなので、おそらく地元の人ばっかり。スタート地点が公道のため警察の交通整理も行われたりする。つつじの季節でもあるので、暇ではないようだが、のどかな方言が行き交う。
 田束に行くと必ず歌が流れているのだが、あれは誰が歌っているんだろう。歌津の風物を織り込んだ歌詞で、町が企画して作ったご当地ソング、という風情なのだが。実は、無料でわかめ汁を振舞っているおカアさんに聞いたのだが、知らない、と言われてしまった。

 その歌津町も、半年後には隣の志津川町と合併して、南三陸町となる由。

 翌週の泉が岳は、まぁ確かに仙台市だけどさ、という区域。
 全国から集まってくるし、主催者は長野在住の関西の人が引っ張る会社、ということで、割と無国籍。
 そんな中でも、交通整理の人、やっぱり借り出されている役場の人、店を出しているオバちゃんたちはご当地の人なので、歌津の宿の女将さんや町内放送とよく似たイントネーションが耳にできる。
 泉区だからって、旧泉市の特徴を云々してもしょうがないような気がするので、ここでは触れない。タケノコやミソを売ってる人たちを除けば、彼らが泉の人だとは考えにくい。したがって、調べてもいない。
 なお、根白石の人が売っていたバナナとトマトは、レース前の栄養摂取と、レース後の疲労回復にはとてつもなく効果があった。焼き鳥はいい匂いと色だったが食えなかった。*1

 旅の楽しみとして、料理とご当地方言、なんて言うことがある。俺も書いたことがあるような気がする。
 今回の仙台行では、前の晩に、一番町の「マカン」というアジア居酒屋で軽く飲んだ。アジアのビールがたくさんあって、辛さの選べる料理があって、店員さんは美人、という素敵な店である。
 そういうところに方言を求めることはあまりないだろう、という気がするのだがどうか。
 箪笥料理の店で完璧に標準語だとがっかりするかもしれないが、仙台のような都会には、秋田には期待するべくもないエスニックな店があって*2、そういうところに行くのも楽しみの一つ。ご当地ものばかりが旅情緒ではない。

 この 2 大会で気になったことが一つある。
 去年までいた中学生のボランティアがいなくなっていた、ということである。
 何か、教育の世界で変化があったのか?




*1
 まず間違いなく、吐くことになる。経験済み。サプリメントのゼリーの類でない、普通の食事に近い食べ物は、遅くとも 2 時間前までに食べ終わってなければならない。
 焼き芋とかトウモロコシなんて消化の悪い食べ物はもってのほかである。これも旨そうだったが。(
)

*2
 秋田にエスニックな店がない、と言っているのではない。
 全県で 100 万人というところと、一市で 100 万人というところとでは、メイン ストリームでないものの数が全く違う、という話。()





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