アパートの階下にはおばあさんが一人で住んでいるのだが、彼女は時折、孫を預かることがある。幼稚園年長組の彼は非常に元気で、よく室内をドタドタと走り回っているのだが、おばあさんはそのことを気にしているらしく、時折、おすそ分けを貰うことがある。
彼女は食品関係の工場かなんかでパートをしているとかで、それが売れ残りの惣菜だったりすることがあるのだが、こないだ食パンを貰った。それもものすごい量。長さ (奥行きと言うべきなのか) にして 50cm 程度。3~4 斤という感じである。
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そのパンは、トマトや出来合いのポテトサラダを載せたオープンサンドにして酒の肴とした。貰ったのが土曜日で、その日の夜、翌日の昼と夜、と 3 回で食いきった。
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「
本食」という言葉がある。食パンのことだが、これが、秋田の「気づかない方言」ではないか、という文章を読んだ。
そうかもしれない、と思って、ググってみたら、様々なパン屋が解説している。昔はそう言ったらしい。
ヒットした件数から言っても、広く使われている単語ではないようだが、秋田弁というのはちょっと厳しい感じがする。例の「
踏絵」には「食パンは『本食』と呼ぶのが普遍的だと思っている」という設問があるのだが、聞いたことがない、という回答は多い。
いつものごとく、これは北海道方言だ、というページも散見される。
使用者が北日本に残った、ということはいえるのかもしれないが、これ以上のことは、ググった程度ではどうしようもない。
気になった点としては、解説はあるものの、用例は非常に少ない、ということがある。消えかかっている表現なのかもしれない。
「主食」「副食以外の食事」という意味の用例もいくつかあったが。
ということで、今週は、久々の「気づかない方言」。
とある銀行が、こういう紙を入り口に貼っていた。
写真がまずくて申し訳ない。「指をはさめないようご注意ください」と書いてある。
で? と思った人はいないだろうか。この「
挟める」は秋田弁なのである。ためしに、国語辞典で引いてみるとよい。
大辞林や
大辞泉には「
挟める」は見出し語としては載っていない。
つまり、「書く」に対する「書ける」、「会う」に対する「会える」、と同じ、「挟む」に対する「挟める」なのである。標準語のルールでは、「挟める」は「挟むことができる」という意味。これを「挟む」という意味で使う、というのが秋田弁なのだ。
同様の形式が、「病む」に対する「
病める (
やめる)」にもある。ただし、こっちは、「痛む」という意味の「病める」が秋田弁だというのは、使うほうが認識していることが多いので、さほど問題にならない。
大阪辺りでは、こういう状況で「
指つめ注意」というような書き方をする。
熊本では、後からドアを通った人が責任持って閉めましょう、というのを「
あとぜき」と言う。
どれも「気づかない方言」の例として取り上げられることが多い。
偶然だとは思うが、あるいは、ドアに関するアクシデントは、日本人の中に何がしかの暗い影を落としているのかもしれない。
こういうのもある。ある店に客が電話をかけているところだと思って欲しい。