個人情報保護法が施行されて 1 ヵ月半。
カード会社、プロバイダなどなど、俺の個人情報をもっている企業から、それに伴って約款が変わりましたついては云々というメールや手紙がきている。はぁさいですか、でも、万が一、漏れちゃったら、漏れちゃったものを取り返すことは不可能ですよね、という感じで読み流している。
病院でも大変らしい。
カルテが個人情報だというのは考えるまでもないが、窓口で「○○さーん」と言うのもまずい、ということになっているそうだ。○○さんは病人です、ということを声高に言っているのだから、と言われれば、まぁそりゃそうですねぇ、と答えざるを得ないのだが、なんだか過敏じゃないかい、という気もする。
先日行った、胃腸科の開業医ではそんなことはなく、名前で呼ばれた。開業医の場合は、待合室をちょっと見渡せば来ている人の顔なんてすぐにわかるから、ということだろうか。あるいは、猶予期間があったりするのかもしれないが。
前にも書いたが、医療機関の待合室は、平均年齢が相当に高いので、方言の宝庫である。
今回も、「
開業したづぎ (開業したとき)」、「
げが (外科)」、「
けづあづ (血圧)」などが聞き取れた。
後半の二つは、一応は専門用語だが、一般人も使う単語である。音が濁っているのはそのためであろう。
それにしても、この頭高のアクセントはなんだ。いや、なんだ、って言うのもあれだが。一方で、「中性脂肪」だと「
ちゅうせいしぼう」みたいな感じになる。
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ま、アクセントについては勉強中、ということで。
医療機関には、とりあえず 3 種類の人がいる、と仮定してみたい。
医師、看護師、事務。大きいところだともっといるかもしれない。小さいところでも、レントゲン技師を医師に分類するか看護師に分類するか、というのは微妙なところだ。
この中で、最も言葉遣いを気にしてしまう相手は、医師だろう。したがって、標準語もしくは改まった秋田弁になると想像される。
「想像」になってしまうのは、人の診察場面を見る機会がないからである。
当然といえば当然だが、昔、俺が初めて行った胃腸科は、たしか内科と外科もやってたと思うが、広めの診察室のあちこちで検査したり問診したり処置したりしていたので、聞こうと思えば聞ける状態だった。今はもう、それでは嫌がられる時代になっている。
次は事務だろう。窓口、というべきか。
というのは、この人たちとの会話の量が多くないから。「\6,510 になります。お大事にー」で終わってしまう。親しくなる機会がない。
逆に最も親しくなるのは看護師。なにせ「白衣の天使」でいつも微笑をたたえているし、色んな処置をするのはこの人たち。患者の緊張をほぐすために、天気の話だのをすることもあるし、どうかすると、医師よりも接触時間が長い。
待合室で話をしていることもあるので、この人たちと患者の会話は容易に耳にできる。患者がリラックスして秋田弁丸出しでしゃべっているところも観察できる。何言ってるんだかわからん、ということもある。
前に郵便局員のことを書いたが、青年層で最も方言リテラシーが高いのは、こういう職業の人たちかもしれない。特に医療機関の場合、患者が痛みや苦しさを方言形で表現することがあり、それを正確に理解しないと、まずいことになってしまう、ということもある。
男性もいるのだから「白衣の天使」はおかしい、という意見もあるかもしれないが、そもそも天使に性別はないので、かまわないはずだ。イメージとしてはともかく。
白衣も少ないか。薄いピンクだったり薄い緑だったりすることもある。
これは緊張をほぐすため。医者に行って血圧を測ると、特有の雰囲気によって緊張してしまい、普段よりも高めの数字が出ることがある。これを「白衣性高血圧」と言う。ホントです。
帰りに寄った薬屋では、全員が標準語だった。「事務」系に分類するべきかなぁ。
この人たち、気さくな雰囲気を作ろうとしているのは感じられるのだが、それが今イチ不自然だと思うのは俺だけか。試行錯誤の途中なのか、カウンターを挟むという体勢がなにかを象徴しているのか。
*2
医薬分業が定着する頃から気になっているのだが、この人たちも症状を聞いてくる。確認の意味もあるのだろうが、今しがた隣の医者でやってきたことを繰り返させられるのはおっくうである。発熱してるときなんか、いいから黙って薬をよこせ、と言いたくなることもある。
医者が主人公のマンガというと、まぁ、「ブラック・ジャック」が白眉かもしれないが、佐々木 倫子の「おたんこナース」というのもある。
最近のお奨めは、ひらのあゆ の「ラディカル・ホスピタル」。大人気らしく、総集編も頻繁に出る。4 コマなので基本的にはコメディなのだが、時折、患者の死もさらっと描かれたりしているのだが、実は最新作で、この個人情報保護のことがネタになっている。ついこないだまで、医療事故を避けるために、名前を読んで何度も確認しろ、と言ってたのに、今度は名前を呼んではいかんのだ。
同じく
まんがタイムのシリーズに連載されている「エン女医 あきら先生 (水城まさひと)」も楽しい。これはラブコメということになるんだろうか。
どれも、要所要所がリアルなので薄っぺらにならないところがよい。
そういったことを思い出しつつ、胃カメラの苦痛に耐えようと思ったのだが、無駄であった。
看護師さん曰く、モニタに自分の胃が映ります、見てると気が紛れますよ。
紛れるかい。