Speak about Speech: Shuno の方言千夜一夜




第282夜

郵便局にて




 ここのところネット オークションにハマっている。
 一昨年辺り、ここでやたらに「スケバン刑事」の話をしていたことがあるが、結局、ネット オークションを中心に、中古ショップなども利用して、おおかたのソフトを入手した。
 それが一段落すると、不必要なものまで、なんとなく、という感じで入札しそうになったので、身の (正確には財布と社会生活の) 危険を感じて撤退したのだが、この冬辺りからまた再開している。
 で、その代金の振込みと、雑誌の定期購読や、そろそろ始まる自転車シーズンでレース参加費の振込み、なんてのもあって、毎週必ず郵便局に顔を出している勘定になる。その結果、郵便局のお姉ちゃんに、貯金口座を作ると振り込み手数料がお得よ、とニッコリと微笑みかけられる始末。
 郁子ちゃんのその笑顔にコロっと行きそうになったのだが、もうすぐ振込みの用事がなくなるので、とご辞退申し上げた。
 俺はもっぱら Yahoo! オークションなのだが、これは有料である。月額 \294 をケチるわけではないのだが、欲しいと思っていたものはほぼ全て入手できる目処がついたので、この機会に退会する予定。だって、月額会費が勿体無くて入札する、とかわけのわからんことをしそうなんだもん。

 そういや、今月の頭、あの騒ぎの最中にみずほ銀行で振り込んだんだが、あれ、ちゃんと振り込まれたんだろうなぁ。モノは届いたけどさ。

 郵便貯金のカレンダーがある。
「みんな ゆうちょで よかったね」というフレーズが各地の方言で書かれている。
 東北六県で 6 ページ、1p に 2 ヶ月づつで丁度いいわけだ。
 が。
「よかった」が「いがった」になるか「えがった」になるか位の違いしかない。「ゆうちょ」なんていじりようがないし。なので、各ページのフレーズに対してバラエティがないんである。
 悪いが、方言グッズとしては企画倒れであろう。方言グッズではないのかもしれないが。

 郵便局は、生活に密着していることを高く掲げている。確かにその通りである。
 前に、別の人の忘れ物を見つけて局員に届けたことがあるのだが、「あぁ、○○さん、忘れ物してだ」と言っていた。すぐにわかっちゃうのである。
 年金やら貯金やらの相談で、物分りの悪い年寄りに一生懸命説明をしているところなんか見ると、大変だなぁ、と思う。
 尤も、銀行利用者が物分りいいかっつーとそんなこともないが。今日なんか、人が引き出してるところからヌっと顔出して、「引出しってなんとしてやるの?」というバ…老婦人一人。
 こういう人たちって秋田弁丸出しである。
 そういう人が相手の場合、郁子ちゃんも秋田弁になる。ちゃんと敬語で表現しているから大したもんである。
 稀に、まぁ、人が金の話をしているのを横ちょで聞いているのも問題だが、利用者の方が、バリバリの秋田弁で、何を言っているのか理解できない場合がある。
 郵便局は、変質はしつつも、方言そのものは死んでないのだ、ということを実感できる場所である。

 つまり、方言の衰退、なんてことがいわれるが、新しい、これから言葉を覚えていく層と、秋田弁のベテランである層とが接触してない、ということが問題なんだ、ということがわかる。
 この「これから言葉を覚えていく層」というのは乳幼児を指すのではない。乳幼児も含むが、学校を卒業して社会人になれば新しい表現方法を覚えなければならない。そういうことも指す。
 窓口のお嬢様方も、恐らく、普段の言葉遣いはだいぶ共通語より (それでも県外の人が聞けば立派な秋田弁に聞こえるだろうが) の筈だが、こうして高年齢層と日常的に接触することによって、秋田弁による敬語表現をマスターしていくことになる。
 つまり、世代を筆頭に色んなところで断絶があるらしい、ということ。
 そういう接触が乏しい状況になっているのはなぜか、というあたりを考えるべきだ。

 荷物が届いても、俺はほとんどの場合に受け取ることができず、週末に郵便局に取りに行くのだが、これはあんまり楽しくない。男ばっかりなんだもの。
 前に比べると、応対はだいぶよくなった。「いらっしゃいませ」って言うし。
 この点では、宅配便はわずらわしい。こっちから電話しなきゃいけないし、3回いないと荷物返されちゃうし。

 郵便局には色んな冊子がある。
 暇つぶしにはもってこいなんだが、種類が多すぎやしないか。
 商品紹介のパンフレットではなく、定期発行の冊子が、おそらく 2 桁はある。どうやら、若者向け、ビジネス向けと色々セグメンテーションはされているようだが、2 桁はやはり多いだろう。
 民営化するとここもスリムになるの?




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