今年は台風の当たり年らしい。
よく考えてみると、台風に出くわした記憶ってあんまりない。台風の影響による強風、というのなら何度かあるが、台風そのものというと考え込んでしまう。子供の頃、ふいに静かになったとき、あぁこれが台風の目って奴か、と思った、というのは覚えているが、それくらい。
8/20 早朝の奴は恐かった。遠くで、ゴオッと音がして、それが低い地響きを伴って近寄ってきて、アパートを揺らすのである。サッシがビリビリ鳴って、割れたらどうしよう、と思っていた。ふさぐものがない、ということにそのとき気づいた。せいぜい、外にある物置の戸か。じゃ、その物置にしまってある大事な自転車はどうするんだ、という問題はある。
3 時頃、気象情報を見ていたのだが、その真っ最中に停電した。これはビビる。なんせほかに情報収集の手段がないんだから。俺、コンポは持ってるけどラジオはないもんなぁ、と思ったが、後でよく考えてみたら、捨てようかどうしようか迷ってる小型ラジカセはあった。単三電池の買い置きもあるし一日やそこらなら持つだろう。
8/31 の奴は平日の午前中で、会社に行かなきゃならないのが辛かった。暑いのに風が強くて窓を開けられないから熟睡してないし、仕事は暇だし、休んでもいいんだが、8 月は盆休みがあってそもそも就業時間が短いから、これで更に一日休むと契約上、割と辛いので我慢して行った。
幅 5m とは言え、ちょっと歩けば川がある。割と簡単にゴウゴウという流れになる川なのだが、そこまで意識が及ばず。
日本海側の一部では、洪水を「
みずつき」と呼ぶところがあるらしい。「水」に「漬かる」か?
沖縄方面の「
うーみず」は「大水」であろう。
「台風」そのものの俚言形は
前にも紹介したので割愛。そもそも、そんなにないんだが。
古い言葉では「野分」というのがある。なかなかに風情の感じられる言葉だが、あのゴオッという音はまさに野を分ける、という表現がぴったりだ。
今年は、暑い夏でもあった。よく、フェーン現象という語が新聞紙面を飾った。
あらためて解説すると、この現象は、空気の塊が山を越えることによって発生する。
当然、高いところに行けば温度は下がり、低いところに移動すれば温度は上がるわけだが、その度合いが、空気が湿っているかどうかによって違うのである。
数字を出すと、湿った空気は 100m の上下移動で 0.6 度変化する。つまり、1000m の山を越えようとして頂上に行くと 6 度下がるのである。その過程で山腹に雨を降らして水蒸気を吐き出し、その空気は乾燥する。
ところが、乾燥した空気は 100m で 1 度変化する。つまり、その山頂から降りてくると 10 度上がってしまうのだ。
*1
つまり、ある場所で 30 度だった空気は、1000m の山を越えることによって、10-6 で 4 度上昇、向こうの里では 34 度になってしまう。これがフェーン現象である。最高気温を記録するような地点が内陸に多いのはこれが理由だ。
なお、「フェーン」というのはドイツ語の「南風」である。
今年の台風は、どちらも日本海側からやってきた。したがってフェーン現象を伴わない。台風が抱えていた水分はそのまま秋田県内に降り注ぐ。それは当然ながら海水である。
植物に塩気は禁物。ただでさえ台風で倒れたり実が振り落とされたりしているのに、塩分を含んだ雨で駄目押しをくらった格好になる。
驚いたのは、そういう災害が起こったときの保険である共済というシステムが、かの
大潟村にはない、ということである。新しい、大規模農業を目指し全国各地から入植してきたという気風と、相互依存の共済という考えが合わなかったのだ、というような説明がなされていたが、ここまで広範囲な被害というのは想定されていなかったのであろう。
古くは「講」という互助システムがあった。「頼母子講
(たのもしこう)」「無尽講
(むじんこう)」という単語を聞いたことがある人もいると思う。昔、聴いたことがあるが「
むじんこ」と発音されていた。
「結い
(ゆい)」というのもあるし、沖縄には「模合
(もあい)」というのがある。詳しくは、それぞれを調べてください。探すとかなりの種類がある模様。
思い出した。
あれが台風だったかどうかわからないが、家の窓が割れた、ということがあった。もともとひびが入っていたのか、それとも何かが飛んできたのか。
普段なら俺はその窓の真下に寝ている。ガラスが飛び散ったあたりに頭があるわけ。その日はたまたま、布団を敷く位置を変えていた。
虫の知らせだったんだろうかねぇ。
まぁ、単に、外がガオガオ言っているからおっかなくて布団を部屋の中央部に寄せただけなんだろうな。
8/21 に自転車で走っていて、「災害復旧支援」という幕をくっつけたトラックを見つけた。一体、何があったんだ? と思ったのだが、その台風の直後なんだってことに気づくまでしばらくかかった。喉もと過ぎれば何とやら、を地で行く薄情さである。
台風はまだあるらしい。「災害は忘れた頃にやってくる」。寺田寅彦はよく言った。
*1
それぞれ、湿潤断熱減率、乾燥断熱減率という。「断熱」というのは、外から暖められたり冷やされたりしない、という意味。純粋に、高さが変わったことによる温度変化を指す。(↑)
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