Speak about Speech: Shuno の方言千夜一夜




第392夜

破傷風



 自転車競技なんかやってるとよく転倒する。「よく」ってのは下手だってことなので大きな声で言うこっちゃないのだが。
 俺がやってるのはクロスカントリーで、現場は山の中なので、傷口に泥がつくことは多い。レースの序盤で転倒すると、怪我してから傷口を洗うまで 1 時間、とかいうこともある。となると怖いのは破傷風である。
 実は、5/16 に転倒してて、今日でちょうど 3 週間。ここまでで発症しなければまぁ OK だろうと思われる。

 子供の頃に予防注射やったもーん、という人は多いと思うが、その効力はいいところ 15 年だそうなので、20 代後半になったら、そろそろ切れてるかも、と疑っていい。
 破傷風の予防注射は 3 度しなければならない。1 度では免疫はできない。その 1 ヶ月後に追加すると免疫ができるが、これの効力が 1 年程度で、その頃に 3 度目をやるとやっと 5〜10 年の免疫になる、ということだそうだ。
 海外旅行の人はもちろん、屋外スポーツをやる人、スポーツはしないまでも、例えば子供がいて、一緒になって外と遊ぶような人はやっておくといいだろう。1 回 \3,000- はお世辞にも安くないが、俺みたいに、かかったらどうしよう、なんて心配してストレスためるよりはよっぽどましだ。

 がやがや天国からいも弁講座によれば、鹿児島では、破傷風のことを「かちほ」と言うらしい。元は何だろうなぁ。
 十津川かけはしネット十津川郷民族語彙によれば、奈良の十津川では「きずかぜ」だそうだが、これは「傷風」そのもの。
きずかぜ」と「かちほ」…似てるといえば、似てないことも…無理か。

 いや、去年の春に予防注射はしてあって、一応の免疫はあるはずなんだが、例の風邪のおかげで 3 度目をやってなかった。転倒したのは、2 度目をやってから 13 ヶ月目のところで、そういえば、と思って、転倒した後で 3 度目を打ってもらったのだが、さてどうなんだろう、というあたり。
 ちょっと調べて見ると、いや 1 年ではなく 1 年半だ、とか、その 1 年というのは「免疫がある」期間ではなく「免疫記憶がある」期間だ*1、とか、本人が気づかないような傷でも感染することがある、とか色々と情報はある。病気なんてのはそういうもんで、かからない人は中々かからないし、かかる人は簡単にかかる。それを網羅しようと思うと、破傷風菌の潜伏期間は「3 日〜2 ヶ月*2」なんてやたらに幅の広い数字になる。気の弱い人は、『家庭の医学』みたいな本を読んではいかん、というのはそういうことである。

 破傷風の典型的症状は、筋肉の過緊張というか痙攣によって口が開かなくなる、というものである。
 その前段階で、飯を食うと顎が疲れる、というのがあるのだが、そういう症状は実際にあった。だが、それは医者に行くのをグズグズと延ばしているうちに――この辺、心配性といいながら、実はそれほど深刻に受け止めてない、というのが伺えるわけだが――軽くなってきた。プログラマとして一日中キーボードを叩き、趣味でピアノも弾く、という場合、肩凝りりが持病になることは別に珍しくもなく、そこから引きずられて顎へ、というのも普通にある話だ。かつて、緊張性頭痛で筋弛緩剤を服用していた俺が言うのだから間違いない。
 ほかに、「嚥下困難」という症状もある。読んで字のごとしで、ものが飲み込みにくくなるのだが、これも前に経験がある。なんだかひっかかる、というか、何かあるぞ、という感じ。
 見極めの 1 つの手がかりとして、食事はちゃんとできるが、つばを飲み込むと引っかかるような気がする、という場合、それはストレスというか、精神的なものの可能性が高い。「食道神経症」「ヒステリー球」という言葉もある。後者のネーミングはうまいと思う。

 おもしろウチナーぐちによれば、沖縄の言葉で「左喉」と言えば音痴のことだそうである。
 高松では、「のぞしれ」が「ずうずうしい、分をわきまえろ」という意味なんだそうだ。「喉を知れ」の訛りとあるが、わかったようなわからんような。自分を知れ、ということなんだろうが、なんで喉?
「喉」を「のぞ」という地域は多い。

 もちろん、精神的なものかどうかは、ちゃんと医者に見てもらってから判断する、というか、してもらうべきである。気のせいだと思ってたら実は、という話だってあるわけだし。
 ただ、何度か怪我をして医者に見てもらったことがあるが、破傷風のことを持ち出すと、大抵は鼻で笑われる。現在の日本では、年に 50 例あるかどうか、というところらしい。だからって、俺の怪我が違うって保証は無い、と心配性の俺は思うわけだが。
 こういう小心者を関西では「あかんたれ」と言うらしい。「根性なし」という意味だと思ってた。
『秋田のことば (秋田県教育委員会編、無明舎出版)』によれば、「えじゃれけし」「じぐなし」「みのごなし」などという表現があるが、これは「臆病者」。

 俺を知る人の中には、意外だ、という人もあるだろう。すんげぇ心配性で小心者なんだよ、ボク。





*1
 予防接種をしてできた免疫は、時間が経つにつれて弱くなる。そこで追加接種すると反応してまた強くなる。この反応が起きる状態を「免疫記憶がある」と言う。それと、「免疫がある」というのとは別の話だ、ということである。
 この辺は、
労働者健康福祉機構海外勤務健康管理センターページに詳しい。()

*2
 大体は 1〜2 週間というところのようだが。
「(感染していれば)2 週間で必ず何らかの症状があらわれる」と書いてあるところもあってびっくりした。「必ず」なんて軽々しく書いてもいいのか?(
)





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