Speak about Speech: Shuno の方言千夜一夜




第326夜

露見



 こないだ、会社の連中と飲んでいたら「ホームページ、見ましたよ」と言われた。
 ドキっとする。
 だってカミングアウトしてないもの。
 知られて困るようなことは、少なくともここでは書いてないが、教えたわけでもないのに自力で到達し、それを書いてるのが俺だ、ということに気づいたとなると、うぅむ、と思わざるを得ない。
 これでは、俺が実は M78 星雲から来た恒点観測員で、明けの明星が輝くころ、東の空を飛んで去らなければならないのだ、ということもじきにバレてしまうのではないか。
 尤も、俺が特撮オタクだってことはすでに周知の事実だし、職場でものを言わないわけでもないから、俺の周囲にいる人間であれば、ここの文章を読んで、「あれ?」と思う可能性は大いにある。仕事がクソ忙しい時期、とかいう手がかりもあるし。

 特段、隠していたわけではなく、聞かれないから教えない、という程度のスタンスである。
 ただ、物言えば唇寒し、で痛い思いをしたことはあるので、言う内容と相手と状況には気をつけている。

 前の会社にいたころ、若い社員が、部活があるので、と残った仕事を先輩に任せて行ってしまったことがあった。仮に S 部としよう。「部活」と言っても、大会に出場するような立派なところではない。趣味の域を出ない。
 俺は、こらこら、それは本末転倒だろ、とたしなめた。
 上司に怒られたのは俺の方だった。
「S 部に含むところがあるのか」。
 ねぇよ。

 坊主憎けりゃで、そのスポーツは大嫌いになったのだが、田舎というのは、ことほどさように閉鎖的で後進的なのである。そんなことで会社を辞める決心をすることになろうとは思わなかったが。

はんつけ」という語がある。
 おそらく「はじく」が元だと思うが、「仲間はずれ」という意味。岩手でも言うようだ。
 他の地域でなんと言うか調べてみたが、「はぶ」系が目立つ。地域としては、関東以西、という感じ。「村八分の変化」「省く」「はばかる (『憎まれっ子世に憚る』の『はばかる』)」などなど諸説ある。

 方言で仲間はずれというと、方言札を思い出す。こんなページを見つけた。
 子供の教育にいいわきゃないのだが、そこに気づかなかったんだろうか、当時の人たちは。まだ「権威」というものが通用した時代だから、上の言うことは絶対だったのか。子供自身よりも、方言を撲滅することのほうが大事だったんだろうなぁ。角を矯めてなんとやらだ。

 今も、「セクハラ」「アルハラ」とかまびすしいが、「パワハラ」ってのもあるな。これは何をいまさら、という感じだが。
 誰が言い出したのか知らないが、こういう略語で扱うことによって、却って気楽な感じを与えてしまったな。やっている方が、自分の行為を「セクハラだ (笑)」とか言ってるもの。

 別にまずいこと書いてないとは言え、例えば「へぇぇ大卒なんだぁ…」とか言って「こっちに入ってこないで」という線を引かれてしまったような経験の持ち主としては、『言語』だの『日本語学』だのの専門誌を読んでる、というのはあんまり知られたくなかったりする。職場で読むときも、これにはブックカバーをかけているくらいだ。こないだまで『特撮黙示録』を読んでたのだが、これにカバーをかけてたのは、隠すためではなく汚したくないから。
 同じように、自分が所属する会社にいるときは“PRESIDENT”は読まないことにしている。これ、5 年位前から「経営者」の雑誌ではなく「ビジネスマン (しかも 30〜40 代、と俺は見ているが)」の雑誌になっているのだが、世間ではそう認知していない人も多い。社長になろうとしてる? なんて、痛くもない腹を探られたくはない。いるんだよ、そういう奴。

 に、方言撲滅を目指したホームページって無いのか、と書いたことがあるが、最近では、ひょっとしたら 2ch あたりでは断片的にそういう発言が出ていそうな気がする。
 アルハラはどうだろう。酒が飲めないやつは半人前だ! という人は現実にいるわけだから、そういう人がそういう趣旨のホームページを開設、というのはやはりないんだろうか。
 だが、こういうのも、書きにくい種類の話題であろう。全般的に、言い出しにくい雰囲気だから。
 実は、俺がホームページを持っていることを会社で黙っていたのと、さして変わらない構図だ、ということだ。

 俺が「情報発信」という流行り言葉を嫌うのはその辺に理由があるのかもしれない。




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