Lecture


次世代エフェクター講座 第3回

「音圧感について」

一般的に「迫力のある音」「音圧感がある音」「低音が効いた音」というも のは、同じ意味の言葉として捕らえられているように思われますが、こういっ た音は具体的にどのような特徴があるのでしょうか?
今回はそういった音の特徴を分析し、いわゆる「音圧感」を自在にコントロー ルする手引きをご紹介したいと思います。

それではまず、本来、音圧というものは正確にはなんなのか?というところ からご説明致します。何と音圧とは、単純に「音の大きさそのもの」のこと なのです。また、数値で表現する時の単位は、dB(デシベル)を用い、 「音波の圧力」を表わします。つまり正確には「音圧=低音」は間違いであ り、音程の高低は音圧とは直接には無関係なのです。しかし、これほど「音 圧=低音」のようなイメージが強いのは、おそらく、今日のさまざまなジャ ンルの楽曲において、低音の持つ意味が非常に重要だからでしょう。例えば、 バスドラムのタイトなリズムやベースの引き締まったグルーブ感。ギターピ ッキング時のアンプのうなり音など「低い音」でなければ表現しえない役割 があるからだと思われます。もし「音圧=低音」が無ければ、いかにも味気 ない楽曲になるだろうというのは、想像に難しくないと思われます。
従って、楽曲においての低音セッテイングは、おのずと重要になってきます。 しかし、他の音域(中高音)に比べれば的確に処理を施すのは多少の知識と 経験を要されます。
一般的に人は、200Hz以下の音を「低音」と呼びますが、仮に中高音と同じ エネルギーで「低音」が出ていても、人の耳には「低音の方が極端に小さく 聞こえる」ということがあります。これは人間の耳が「音域別コンプレッサー 」でも装備しているかの特性をあらかじめ持っているからで、特に小さい音 に対しては、その特性はさらに顕著になります。(この人間の耳の「悪い特 性」を緩和するために、コンポやステレオなどには「ラウドネス」スイッチ がついています。これは、音量が小さいときのみ「聞こえにくい低音を補う」 のが主とした目的です。)そういう理由から、大部分の人が心地いいなと思っ て聞いている時のスペアナ表示は、低音のグラフばかりが目立つのです。
そこで、音に迫力が欲しければ、思いのほか低音を増強してやらないといけ なくなります。しかし、ただやみくもに低音を増やしただけでは、ねらった 音とは程遠い音になってしいますので、以下に陥りやすい失敗例・および対 策参考例を示しましょう。

1:音が「割れる・歪む」
前述のように、低音はすでにかなりのエネルギーを持っているのに、それに 気づかずブーストし過ぎた場合、ヘッドルーム*をオーバーし歪みが発生しま す。

→ 相対的に中高音を下げるなどの対処が必要です。

2:音が「こもる・明瞭でなくなる」
漫然と低音をブーストしたのでは、音圧感を表現するのに必要の無い音域ま でもブーストすることにつながり、それが音の不明瞭感につながります。 また、低音域には「定常波」と呼ばれるこもる音(エフェクター講座第2回 :ハウリングについて参照)の音域も含まれるため、その音量が増えること により他の音域のマスキングが起こってしまうからです。
また、思ったよりもはるかに低い音域をコントロールしないと逆効果の場合 もあります。

→ ブースト方法を検討し、シェルビング*でななくピーキング*タイプEQを 使ってピンポイントブーストを行なってください。
→ さらに低い音域をコントロールしましょう。
→ 不要な帯域については逆にカットしてください。

3:迫力は出たが「聞き苦しくなった」
実は、低音とは「出っ放し」では効果がありません。リズム感やグルーブ感 を出すためには「出すところは出し、引くところは引く」のが重要なポイン トです。

→ 曲のアレンジを検討し、低音ばかりを目立たせるのではなく中高音(例 えばドラムで言えばハイハットなど)とのバランスを考慮したサウンドメイ キングが必要です。
→ もう一度じっくり音を聞きましょう。音圧感を出すには確かに低音が重 要ですが、それだけでどうにかしようとするにはムリがあるというものです。 低音のコントロールを行なうと同時に今度は中高音域によく耳を傾け、細か く加減してみましょう。そこには音圧を感じるための重要な倍音が含まれて います。
いずれの場合でも言えることは、楽曲にせよ楽器単体の音にせよ、その音全 体をよく聞き、トータルで心地よい音に仕上げることが重要です。 音圧のあるサウンド作りに王道はありません。常日頃から耳を鍛え、「音全 体」を聞く訓練をしましょう。
間違ってもアンプの「BASSツマミ」をフルアップにして、「もっと音圧 が欲しい」などと言わないように・・・。

プレイヤーにとって最良のパートナーと成り得るエフェクターとは、厳選さ れたパーツ、熟練したエフェクタービルダーによって、1つ1つていねいに組 み上げられたバラツキのないマシン。また、いかにウッドマテリアル及びアン プの性能を引き出すか。これにつきると私達は考えております。
しかしここ数年、エフェクターという概念が、元来出力される信号に対し効果 を与えるという作業より、「不正確なピッキングやフィンガリングをいかにス ムーズに聞こえるように錯覚を起こさせるか」というまやかし的な道具とし て扱われているように感じられます。
よく考えて下さい。エフェクターという道具は、「操られるの」ではなく「操る もの」なのです。
例えば、初・中級者にありがちなことですが、全ての音造りをエフェクター に頼りすぎるあまり、アンプのトーンコントロールをなえがしろにしすぎて いるケースが目立ちます。
始めて行ったスタジオで初めてつなぐアンプ・・・にもかかわらず、普段使 いなれたアンプのトーンセッティングで固定してしまい、「このアンプはよ くない・・」とか「このエフェクターはよくない」などの決め付けをしてし まうケースです。
十人十色というように、この世に存在する全てのアンプにもそれぞれ「顔や 色」が存在するはずです。
まず、スルーセッティングでしっかりとギターとアンプで好みのベーストー ンを造り、「そのアンプ・そのギター」の持ち合わせている最高のサウンド を引き出して下さい。そこで始めてエフェクターで着色すればいいのです。 これだけのことで道具を操れるわけです。どうです?とてもシンプルな作業 じゃないですか・・・。
また、どんなフレーズでも、生音で1音1音クリアに弾きこなせないと、せっ かくのエフェクトサウンドも台無しです。結局、一番いい音を引き出すのも 引き出せないのもあなた次第なのです。
ブートレッグハンドメイドエフェクターズは上級者向けに設計されておりま すが、私達は全てのプレイヤーの味方です。今は解釈できなくてもいい。し かし、いづれ理解ができた時、それは大きな力につながります。 それはブートレッグのマシンが、実戦のヴォリュームの時に真の威力を発揮 するとか、ささいなピッキングミスもPAに反映されてしまうほどピュアな 音質だなどです。
さらなる例として、大量生産モデルとちがい、ケースが未塗装だったりする のも音の抜けを考慮してあるためです。不思議なことに、同じ基板で組み込ま れたエフェクターであっても、塗装の有無や、ケースの形状が変わると音が 変わります。同じようなことがケースのデザインにもいえるようです。 私達は長年のカンと経験から、ケースの選定はアルミダイキャストの4点止 めを採用しております。電池交換が少々面倒ですが、これもよりしっかりした 確かなサウンドを望むためです。
細かな点を言い出すときりがないのですが、私達は様々なエレクトリックマ ジックと戦って参りました。
こうしてブートレッグ ハンドメイドエフェクターズを世に送り出すまでに、 私達は主にインディーズミュージシャンのエネルギッシュなアイデンティテ ィと共に、15年に渡る経験を積んで参りました。
オールハンドメイドのため、月産50台程度と、本当にごく少量しか生産でき ませんが、これからもより多くのミュージシャンと共に歩んで行きたいと考 えております。

* ヘッドルーム:基本になる音量に対して歪まずにアップできる音量のこ と。イコライザーなどのツマミを上げるばかりではこのヘッドルームの余裕 はほとんどなくなり少し大きい音が入ってきただけですぐ歪み出してしまい ます。
* シェルビング:ある周波数を境に棚を持ち上げる(下げる)ようにカーブ する特性のフィルタ。一般的にはオーディオアンプのトーンコントロールな どに使用されている。広いレンジにわたって調整が出来る反面、細かいチュー ニングには適さない。
* ピーキング :特定の周波数を中心とした(狭い)帯域をブースト、カッ トする特性のフィルタ。グラフィックイコライザはこのピーキングフィルタ の集まり。使用する機材にもよりますが、狙った帯域のみをピンポイントで コントロール出来るので、音全体のキャラクターに影響を与えずに望んだ効 果だけを得ることが出来る。



第1回 1998/3
第1回 ノイズについて
ノイズについて



第2回 1998/8
第2回 ハウリングについて
ハウリングについて



第3回 1999/5
第3回 音圧感について
音圧感について



第4回 SOON !
第4回 スイッチについて
スイッチについて



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