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1998年9月1日号  252

適応外使用の可否について

 Off−Label Use:適応外使用

 

   

 医療従事者が医薬品を使用する上で、必須となるのが、添付文書です。そして添付文書には必ず「効能・効果(適応)」項目があります。この項目に記載されていない場合を「適応外使用」と呼んでいます。日本では適応外とされていても、外国では適応薬として繁用され、場合によっては第一選択薬として使用されている薬剤もあります。
 しかし、保険診療としては、療養担当規則第2条第2項及び第12条等により、現在のところ保険請求はみとめられていません。

               {参考文献}:臨床と薬物治療 1998.8

 

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適応外使用が行われる主な理由は

1)諸外国や日本でその薬剤に対する有効性等が臨床的に確実に評価されているにもかかわらず、日本では適応が認められていない。

例:慢性関節リューマチでのメトトレキサート

2)現在の健康保険では予防的適応が認められていないが、疾患等により予防的使用が有効かつ必要である場合。
(例:虚血性脳疾患、虚血性心疾患に対する小児用バファリン錠)

2000年注:1999年リウマトレックスとして発売。ただし薬価が3倍近くになっている。

<基本原則>

a.適応外使用の目的が適切で明らかな事。

 従来の薬では十分な治療効果が期待できず、適応外使用によってのみ、その目的を達成できる可能性がある事が必要です。言い換えれば、同程度の効力を有する適応薬がある場合には、適応外使用は行うべきではありません。

b.インフォームドコンセントを十分に行う事。

 適応外使用をめぐる紛争の多くは、インフォームドコンセントを十分に行う事により避けられる可能性がある事から、インフォームドコンセントとその記録の実施には特に努力する必要があります。

選択上の参考

*適応外使用について、医学的に問題が無い薬剤

 その使用が、専門書、教科書、権威のある治療指針に記載されている薬剤。できれば1冊の印刷物のみでなく、複数の書物に同様の記載がみとめられること。

*適応外使用すべきでない薬剤

 適応外使用した報告等が無い薬剤、あるいは適応外使用に対して反対意見や疑問とする意見もある薬剤。

 適応外使用した報告等があるが、報告数や報告されてからの年月の経過が不十分な薬剤。例えば「有効とする学会発表を聞いたので、、、」という程度では、慎重に行う必要があります。このような先駆的かつ研究的に使用する場合には、使用者は万一副作用等が発生した場合の対応を準備していること。

*専門医により効能追加が妥当と判断された薬剤

 日本臨床薬理学会拡大学術委員会は、現在適応外使用されている薬剤と疾患の組み合わせ202組について、各疾患群16分野での薬物療法を判定基準(上記参照)にしたがって、それぞれの薬剤の効能追加(適応拡大)の妥当性を検討しています。


適応拡大候補薬剤の必要性の判定基準の例(循環器系)

◎ 国内的、国際的、教科書的にも確立している。

  硫酸Mg(静注):トルサード ドゥ ポワント

○ 国内的、国際的にはほぼ確立しその有効性と有用性を示す正確なデータがある。

  タンボコール錠:上室性頻脈性不整脈

△ 未だ議論が分かれているもの経験が少ないもの。

パナルジン錠:冠動脈再建術後の再狭窄防止


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医薬品の適応外使用について

〜〜保険診療上の取り扱い。〜〜

2007年10月15日号 No.462

 保険診療における医薬品については、厚生労働大臣が承認した効能効果によることとされていますが、有効性及び安全性が確認された医薬品が薬理作用に基づき処方された場合には、診療報酬明細書の審査に当たり、学術的に正しく、また、全国統一的な対応が求められているころです。

 これを踏まえ、今般、当該効能効果等の適応外使用の事例について、社会保険診療報酬支払い基金が設置している「審査情報提供検討委員会」において検討が行われ、下記の様に検討結果が取りまとめられました。

 薬品名   適応外使用が認められる疾患 (当院採用医薬品のみ記載)

・リズミック錠〜起立性調節障害、小児の起立性調節障害
・ボスミン注 〜心停止時の心拍再開のため、1回1mg静注(反復)した場合
・パナルジン錠〜冠動脈ステント留置後の血栓予防
・テグレトール〜抗痙攣薬の神経因性疼痛、各種神経性疼痛、癌性疼痛
・塩酸ドパミン〜乏尿等の急性循環不全の前状態(イノバン注) 麻酔時の昇圧
・ホリゾン注 〜新生児痙攣、鎮静
・リタリン錠 〜AD/HD(注意欠陥多動障害)、自閉症
・リスモダンR錠〜小児の頻脈性不整脈
  〃   P注
・アルダクトンA錠〜腎性尿崩症
・レニベース錠 〜小児の高血圧、小児の心不全
・フランドルテープS〜心不全
・ソルコーテフ注  〜循環系ショック状態
・ハイドロコートン注〜   〃
・ガスターD錠 〜胃食道逆流現象
  〃  注
・ビタミンB1散 〜ビタミンB1依存性楓糖尿症
  〃   注  ピルビン酸脱水素酵素異常症
・ビタミンB12注〜ビタミンB12依存性メチルマロン酸血症
・ビタミンB2〜ビタミンB2依存性マルチプルアシルCoA脱水素酵素耳用症
・ゾビラックス錠  〜水痘
・  〃 錠・顆粒 〜ヘルペス性歯肉口内炎
・  〃  注   〜   〃
・  〃 錠・注 〜角膜ヘルペス、角膜内皮炎、桐沢型ぶどう膜炎
・人免疫グロブリン 〜麻疹、A型肝炎、ポリオの予防の及び症状軽減のために「低出生児、新生児」に処方した場合
 (筋注) 
・オイラックス(軟膏)〜疥癬
・メチコバール注〜ベル麻痺、突発性難聴、反回神経麻痺
・ヘパリン注 〜抗リン脂質抗体症候群合併妊娠
・アドリアシン注 〜卵巣癌
・ラステット注  〜 〃
・パラプラチン  〜子宮体癌
・ユナシン錠 〜手術創などの2次感染、顎炎
   〃細粒  顎骨周囲蜂巣炎
   〃 注 〜皮膚軟部組織感染症、髄膜炎
・リファンピシン 〜非結核性抗酸菌症
・バクタ顆粒 〜ニューモシスチス肺炎
・フェアストン錠 〜閉経前乳癌
・トロンビン  〜内視鏡生検時出血
・オビソート注 〜術中の迅速な縮瞳
 (アセチルコリン)
・サンラビン注 〜骨異型性症候群(高リスク群)、難治性の造血器悪性腫瘍

   {参考文献}厚生労働省保険局医療課


   2007年10月15日号 No.462
                  <医学トピックス>  トリガーポイント注射法はこちらです。


1998年9月1日号  252

モルヒネ(5)

耐性、依存性の成因

 オピオイドの耐性、依存性の成因には、2つのメカニズムが考えられています。

1)オピオイドアンタゴニストのアデニル酸シクラーゼ活性抑制調節によるもの

 モルヒネの単回使用では急性効果としてcAMP量が減少します。さらに持続的にモルヒネを与薬すると、cAMP量の減少を代償するために、アデニル酸シクラーゼ活性が増大し、cAMP量は正常値を保ちます。この現象は耐性発現状態を示唆します。次に、モルヒネを中断すると急性効果としてのアデニル酸シクラーゼ活性増大により急激なcAMP量の増加がおこります。この現象は禁断症状を意味します。

2)オピオイド耐性、依存性の成因を受容体のダウンレギュレーションから解明しようとする試み。

 長期間に渡ってモルヒネを使用することにより、ニューロン上の受容体数が減少し、耐性、依存性が発現するという考えです。しかし、現在までオピオイド耐性、依存性のメカニズムは明確に証明されていません。
 実験的には1回の大量使用で明らかな耐性が出てきます。あとは依存性と同じように使用頻度が重要です。使用頻度を増せば耐性も非常に早くできます。
オピオイド耐性、依存性は臨床的にはモルヒネ与薬中止5〜6時間後から3日間が最も強く、身体症状は約1週間で軽快します。睡眠障害、抑うつ、無気力、異和感、不安、易刺激作用などは数ヶ月にわたって残存します。モルヒネの増量によって症状が改善されれば耐薬症状と診断されます。
徐々にモルヒネを切っていくと、退薬症状が出現することなくモルヒネを中止できます。しかし、疼痛下でも身体的依存を完全に形成しないことはありませんが、あらわれる退薬症状がかなり弱いことは動物実験でも明らかです。

 退薬症状というのは、臨床的には突然休薬すると、必ず出ます。何らかの状態でモルヒネを吸収できない状態が出てきます。たとえば持続皮下注をやっているときに針が抜けた場合には、強みが強烈に出て
下痢や発汗、頻脈などの退薬症状が出ます。
退薬症状は、使用期間、使用頻度や用量によってその強さが決まります。モルヒネを1週間処置して退薬症状を観察するとだいたい2日目にピークが来るのですが、それが疼痛下ですと1日目で起こり、2日目には回復してしまうのです。

 精神的依存については
次週で取り上げる予定です


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