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1996年12月15日  213

胃酸分泌抑制剤の血液障害

H2受容体およびプロトンポンプ阻害剤

 

 H2受容体拮抗剤は稀ではありますが顆粒球減少や血漿板減少の報告例が相次ぎ、平成元年1月に後続して開発されたファモチジンによる血球減少の死亡例がマスコミ報道にもなって、一躍、世の注目を集めるようになりました。
 また、最近では、プロトンポンプ阻害剤でも、同じように血液障害が報告されています。

    {参考文献}日本薬剤師会雑誌 1996.11

 

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H2-ブロッカーによる血液障害の発生機序

 骨髄の造血幹細胞にはH2-受容体が存在し、休止期にある幹細胞が必要に応じて分裂期に進む際に受容体が関与していると考えられています。感染や出血などのために顆粒球、血小板の動員のために骨髄では、幹細胞の分裂、成熟が要求されますが、その過程が、H2-ブロッカーにより阻害されるという説があります。しかし、H-2ブロッカーの種類を変えると障害が起こらないため、化学構造自体による問題ともされています。

 また、薬剤による血液障害は免疫反応という捉え方もされています。過敏性発現の機序にはH2-ブロッカーがH2受容体を有するサプレッサーT細胞を介し、造血幹細胞の増殖を抑制する可能性や炎症反応の場でのヒスタミンの免疫反応に対する制御機構に影響を与える説が考えられています。

 さらにH2-ブロッカー使用例に抗血小板抗体がみられたり、タガメットによる白血球、血小板減少例の血清中に白血球凝集素の証明された例、血小板減少例でザンタック存在下でのみ免疫グロブリンが血小板に結合して、血小板が破壊される可能性が強く示唆された例などがあります。

  • PPIは胃酸分泌の最終過程において酸分泌酵素であるH+-ATPase(プロトンポンプ)の活性を特異的に阻害し、強力な胃酸分泌抑制をもつもので、平成3年よりオメプラゾールが市販されました。た
    ※H2ブロッカーの副作用発現時の対策

     血液障害の発現時期は与薬数日から数ヵ月不定で、維持療法を目的とした長期与薬例も多く、この間、感染症の併発がみられたら直ちに血液検査を施行するとともに、ひとまずH2ブロッカー
    の与薬を中止して経過をみる必要性もあると思われます。

     経口の際、併用薬にも注意を向け、特に血液障害を来す頻度の高い抗生物質、鎮痛消炎剤あるいは抗精神・けいれん薬の併用の際血液 異常の発現の可能性を考慮し末梢血検査を行います。
     
    ※プロトンポンプ阻害剤の血液障害
     
     平成4年11月までの医薬品副作用情報によると、オメプラールは約85万人に与薬され、血液障害の報告された例は白血球減少6例、血漿板減少4例、汎血球減少1例で死亡例はありません。ただし企業内情報として本年7月までに白血球(顆粒球)減少44例、血小板減少37例、汎血球減少9例という数値もあります。タケプロンでは現在まで5例の血少板減少例が報告されています。

     
     顆粒球減少が進行するような例、無顆粒症等の治療としてGーCSFの与薬も考えられ、未だ適応症として認められてはいないが、病態によってはあえて試みるべきでしょう。

     静脈投与方法にも工夫が必要。注射例に副作用が多く、多くは、感染症、消化管出血、脳出血や手術後その他の予防的投与等、合併症の存在がある例に使用することが多く、血中濃度の上昇、骨髄造血過程の抑制が生じやすい状況にあると判断されます。ワン・ショット静注をさけ、点滴静注で緩徐に与薬します。


    3)肝硬変等の重症肝障害のある例では、通常の血中濃度の数倍以上になることがあり、与薬量を通常の1/2〜1/5とします。
    4)腎不全例では、尿からのクリアランスが悪く、血中停滞時間が延長するため与薬量を調節する。また、透析中の患者では、透析時間を考慮した与薬が必要となります。  
      H2ブロッカー
      血液障害発現頻度
          
           内服  注射
    白血球減少 0.07% 0.17%
    好中球減少 0.02%  -
    血小板減少 0.07%  -
    赤血球減少 0.02% 0.17%  
    白血球   0.18%  0.25%
    網内系      

    下記の薬品によりパルボウイルスB19による感染の危険性があります。

     献血アルブミン、グロベニンI、ベノグロブリンI、ベニロン、ガンマグロブリン、抗Dグロブリン、ノイアート、アンスロビンP、フィブロガミンP、テタノブリン、ヘブスブリン、ハプトグロビン、トロンビン等

     血漿分画製剤の現在の製造工程では、ヒトパルボウイルスB19等のウイルスを完全に不活化、除去することが困難であるため、本剤の投与によりその感染の可能性を否定できないので、投与後の経過を十分に観察すること。

    (慎重与薬)
    1.溶血性、失血性貧血の患者〜感染した場合には、発熱と急激な貧血を              伴う重篤な全身症状を起こすことがある
    2.免疫不全患者      〜感染した場合には、持続性の貧血を起こすことがある。

  • 免疫抑制状態の患者

    妊婦〜感染した場合には胎児への障害(流産、胎児水腫、胎児死亡)が起こる可能性が否定できない。有益性>危険性

     溶血性または失血性貧血患者ではaplastic crisis(無形成造血障害発作)を起こすことが知られている。
     パルボウイルスB19による疾患で最も一般的なのは、リンゴ病で小児に好発します。また成人では多発性の関節炎を伴うことが知られています。
     症状は一般的には軽度であり、予後も良好と理解されている。


    <医学辞典> 2007.10.15号 No.462

    トリガーポイント注射法

    トリガー:trigger〜引き金

     症状や痛みがその部分を刺激すると再現される、あるいは痛みが違う部分に出ることからその部分のことをトリガーポイント(引き金点)と呼んでいます。

     今痛みを発しているトリガーポイントを活性トリガーポイント、過去に出来たトリガーポイントで、普段は痛みを感じないものを潜在トリガーポイントといいます。

     トリガーポイントは活性化したり、潜在化したりします。昔、痛めた古傷が寒くなると痛くなるのは潜在トリガーポイントが活性化するためです。

     トリガーポイントは痛みの原因であると同時に治療点でもあります。トリガーポイントに対して、指圧と針を併用して治療を行います。理学療法に反応しない場合は、トリガーポイントへ直接局所麻酔薬を注射しますが、これを局所注射法またはトリガーポイント注射法といいます。

     その他、太い神経に集中する抹消神経ブロック、脊髄を包んでいる硬膜のすぐ外へ入れ、神経根や広い範囲の交感神経に効かせる硬膜外ブロックなどの方法も使用されます。

     局所麻酔薬としては、プロカインが推奨されますが、これはプロカイン(0.5〜1.0%)が筋に対して最も毒性が無いと考えられているためです。

     歯科では頻繁にカートリッジ注射用のリドカインが用いられますが、1〜2%キシロカインEも使用可能です。

     通常、筋への悪影響を最小限にするためと、麻酔時間の延長を必要としないことから血管収縮剤は使用されません。


            出典:日本病院薬剤師会雑誌 2006.1 東邦大学薬学部 大林雅彦

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