1998年8月15日号 251
急性中毒の診断と治療
状況の把握が大切
関連項目 中毒(誤飲)時の処置方法
急性毒物中毒の治療では、中毒起因物質の確認が重要です。患者が搬入された時点では曖昧なことが多いため、必ず詳しいことを家族などへ問診すると同時に、服毒したと疑われる容器やパッケージを持参させるようにさせます。 中毒起因物質の中で拮抗剤や解毒剤が存在するものはごく僅かですが、これらを熟知しておくことが特に救急医療の現場では必要です。 |
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未吸収毒物の吸収阻止
◎ 中毒起因物質と拮抗剤・解毒剤 こちら ← クリック
* 吸収毒物の排泄促進〜強制利尿、血液浄化、血液透析
* 生命維持療法
ショック−−−−−−− 血漿交換、昇圧剤
不整脈−−−−−−−− キシロカイン注、リスモダンP注
代謝性アシドーシス−− メイロン注
<現場ですぐにできる処置>
催吐(吐かせる。)〜服毒後4時間以内なら有効
コップ1〜2杯の水を飲ませてから顔を横に向かせ、指でのどの奥を刺激して吐かせる。
酸やアルカリを飲んだ時、石油製品を飲んだ時、また昏睡や痙攣を起こしているときは、この方法は禁忌
関連項目 中毒(誤飲)時の処置方法 もご覧下さい。
モルヒネが効かない時は
(モルヒネ4)
モルヒネがどうも効いてこないという場合も、時にはあります。そのようなときに考えるべきことは以下の通りです。
1)十分な量が使用されているか?〜その患者にとって必要な量に達していないのではないか?
2)作用部位に十分な量が到達しているか?
このような場合で最も多いのが胸水や腹水が貯留してきた場合です。胸水や腹水の中にモルヒネが浸出してしまい、結局、有効血中濃度に達していなかったという場合があります。
3)製剤によって薬物動態が異なることがあります。
今、目の前に1日中癌の痛みで苦しんでいる患者に
MSコンチン錠を処方すると、この錠剤は徐放剤なので吸収までに1.5時間、Tmaxまでに3時間かかるので、十分な効果が出るまでに計4.5時間かかることになり、これでもってモルヒネは効かないと判断してしまう場合があります。
4)モルヒネの効かない痛みではないか?
実際にモルヒネの効かない場合があります。神経が損傷されて神経組織自体の異常興奮によって起こっているような痛みや、骨転移による痛み、交感神経が関与している痛みなどはモルヒネが効きにくい痛みです。
<その対策>
・筋緊張性頭痛〜筋弛緩薬、NSAIDs、局所麻酔薬の圧痛点注射など
・帯状疱疹後神経痛〜三環系抗うつ薬、神経ブロック、NSAIDs等
・痛覚求進路遮断性疼痛(神経破壊、遮断後の疼痛)
三環系抗うつ薬、神経電気刺激法、抗痙攣薬
ケタラール持続点滴等
・胃腸管の膨満痛〜水酸化アルミゲル、プリンペラン、胃管による減圧など
・筋の攣縮による痛み〜筋弛緩薬(ジアゼパム等)
温熱療法、リラキサーションなど
・交感神経が関与した痛み(反射性交感神経ジストロフィーなど)
〜交感神経ブロック
・神経圧迫による痛み〜ステロイド、抗痙攣薬
キシロカイン点滴
{参考文献} オピオイド ミクス社
緊急安全情報
マイクロドーズ試験(MD試験:microdose study)
通常、100μg以下かつヒトにおいて薬理作用を発現すると推定される用量の1/100を超えない極めて低用量の被験物質を健常人に単回使用することにより行われる臨床試験のこと。
被験物質のヒトでの薬物動態に関する情報を医薬品の臨床開発の初期段階に得ることを目的としており、具体的には、被験物質の吸収や血中動態特性を明らかにすること、ヒトに特異的な代謝物を発見すること、分子イメージング技術を用いて被験物質の体内での局在及び受容体占有率に関する情報を得ることです。
本試験は、第T相試験前にヒトでの薬物動態情報を知ることが出来るため、開発中止のおそれのある薬剤をふるいにかけることができ、新薬開発の成功率を引き上げる手法として期待されています。
欧米では既に実施されており、日本では厚生省が2008年6月に本試験の実施に関するガイダンスを通知しています。
出典:ENIF 医薬ニュース Vol.17 No.20 2008