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1996年2月15日号 193

ミケラン点眼と気管支喘息

  副作用情報 NO.135

  <概要>

1.ミケラン点眼薬と気管支喘息

2.抗消化性潰瘍薬(プロトンポンプインヒビター:オメプラール、タケプロン等)による血液障害

3.肝動脈塞栓療法(スマンクス動注用)とショック等 について
 
             {厚生省薬務局安全課}

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1.ミケラン点眼薬と気管支喘息

 β遮断剤の点眼は全身移行することが知られており、眼局所作用のみならず全身的な副作用についても注意することが必要です。

 特に気管支収縮作用による、重篤な喘息発作、呼吸困難等に注意する必要があります。

 点眼後の副作用発現を最小限にとどめるために、全身性吸収を減少させる作用のある点眼後の涙嚢部の圧迫が推奨されています。

2.プロトンポンプインヒビターによる血液障害

 今般、複数の血液障害が発現した症例や、赤芽球癆を示した症例などがあり、使用を考慮する場合は血液障害の有無に注意する必要があります。

 また、与薬後においても血液障害についての慎重な観察と、異常が確認されたときに与薬中止などの適切な処置を行うことが重要です。

3.肝動脈塞栓療法とショック等について

 スマンクスの肝動脈塞栓療法により、黄疸、肝不全、肝腫瘍等の肝機能障害、アナフィラキシー様ショックをおこしたとする症例が報告されています。

 また、本療法の懸濁用剤のヨード化ケシ油脂肪酸エステル(スマンクス動注用懸濁用剤)は、リンパ系撮影や子宮卵管撮影の造影剤としても用いられており、この薬剤でもショックを起こす可能性があります。

<重大な副作用>

肝不全:黄疸、腹水等
肝腫瘍:発熱の遅延、腹痛、右季肋部痛等(腹部超音波検査等の実施)
間質性肺炎:発熱、咳嗽、呼吸困難、胸部X線異常、好酸球増多等を伴う。
急性腎不全:定期的に血清クレアチニン、BUN等の検査
当院にあるβ遮断剤の点眼剤

ミケラン点眼、ベントス点眼
チモプトール点眼

[禁忌]

 気管支喘息、気管支痙攣、重篤な慢性肺疾患のある患者

[副作用追加]

 気管支痙攣、呼吸困難


点眼の順序

出典:医薬ジャーナル 2000.10

 数種類の点眼剤が併用される際には、5分以上の間隔をあけることで相互の影響はなくなるため、医師から特に指示がない場合、順序は気にしなくよいとされています。しかし、以下のようなことを考慮して点眼を行う方が、より効果的です。

1.先に点眼した液が後の点眼液によって洗い出される可能性があります。そのため、より高い効果を期待する点眼剤を後に点眼する方がよい。

2.懸濁性の点眼液は水に溶解しにくく吸収されにくいので、後から点眼します。また、油性点眼液及び眼軟膏は、水性点眼をはじくため、後に点眼します。

3.点眼時の刺激により涙液量が増え、点眼液が薄まり、また結膜嚢から排出が早くなってしまうこともあります。このため、涙液のpH(7.0〜7.4)に近いものを先に点眼していく方が眼に対する刺激も少なく、涙液量も少なくなるため眼内移行の効率がよい。

4.機序は不明ですが、ピバレフリン点眼(他ではエピネフリン)を先に点眼した後、チモプトールを点眼した方が、その逆の場合に比べて眼圧効果が強く現れるとの報告があります。そのため、ピバレフリン点眼とチモプトール点眼の併用では、ピバレフリン点眼を先に点眼する方がよい。

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げんこつ法  点眼を的確に行うための方法

1)点眼剤を持たない方の手でげんこつをつくる。
2)げんこつを点眼する方の目の下にあて、まぶたを下に引っ張る。
3)点眼薬をもう一つの手の指先でつまんで、げんこつの上にのせて、点眼する。


{添付文書改訂のお知らせ}

非イオン性造影剤(オムニパーク等)

 ヨード造影剤の副作用には、開始直後から発現する即時性と、しばらく時間をおいてから発現する「遅発性副作用」が知られています。

・「遅発性副作用」は、開始より1時間〜数日後にも発現する可能性があり、またショック、アナフィラキシー様症状等の重篤な症状があらわれることもあります。従って、使用中のみならず与薬後も患者さんの状態の十分な観察が必要です。

・外来患者の場合、病院を離れてからも副作用が発現する可能性がありますので、特に注意が必要です。遅発性副作用は、発疹等の皮膚症状が大半を占めていますが、まれに重篤な副作用(ショック、アナフィラキシー様症状等)が発現する場合があります。外来患者に対しては、遅発性副作用が発現する可能性があることを説明して下さい。

※ その他副作用

 開始直後に一過性の血圧上昇が認められており、時間経過から本剤の関与も否定できないと思われますので、ご注意下さい。

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<外来患者さんへの説明>

 本日、あなたが受けられたX線検査では、「非イオン性造影剤」という検査薬を使用しました。ごくまれに1時間〜数日後においても、次のような症状があらわれることがあります。
 
 発疹(かゆみ)、発熱、気持ちが悪い、めまい、胸が苦しいなど
 何か異常があれば、すぐに来院されるか、電話でご連絡下さい。

 検査後は普段より多く水分を取るようにして下さい。


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狂犬病について    

   〜〜犬にかまれました、狂犬病に感染しますか?〜〜    関連項目 狂犬病 もご覧下さい。

2010年8月15日号 No.527

 日本では、昭和31年(1956)を最後に発生がありません。また動物では昭和32年(1957)を最後に発生がありません。現在、日本は狂犬病のない国です。

 輸入感染事例としては、2例ありますが、国内の場合、狂犬病は発生していないので、国内での感染の心配はありません。

{参考文献}予防接種 Q&A 社団法人細菌製剤協会編 等

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※ 日本国内で飼い犬(もしくは野良犬)に咬まれた場合、日本では、狂犬病が清浄化されていますので、国内の犬で狂犬病を発症する危険性はほとんどありません。加害犬が飼い犬かどうか特定できない場合(野良犬の可能性がある場合)は最寄の保険所に届出て状況を説明して下さい。

 加害犬を2週間観察して健康状態に変化がない場合は、以降の曝露後接種は必ずしも必要ありません。なお、海外から国内に侵入した動物に咬まれた場合は、状況によってワクチン接種を検討して下さい。

 飼い犬の場合は、かまれる事例は毎日発生していますが、過去50年間狂犬病になった例はありません。このようなこことから、実際にワクチン接種を受ける方は極めて稀です。  もし咬まれて心配な場合は、犬の履歴(海外との関係)を知って、犬の臨床症状を獣医師に診てもらい、ワクチン接種の必要性について、お近くのワクチン接種機関(下記:当院は予防指定対象病院になっていません)にご相談ください。

・大阪市立総合医療センター 06-6929-1221 (大阪市都島区都島本通2-13-22)
・大阪空港メディカルセンター 06-6856-6485 (豊中市蛍池西町3-555)
・関西医大滝井病院 06-6992-1001 (守口市文園町10-15)     等 


※ 狂犬病ワクチン接種の概要

 もし海外で狂犬病発症動物や、その疑いのある危険動物に咬まれたり、唾液に接触した場合に行います。

 1回量を1mlとして、その初回接種日を0として、以降、3、7、14、30,90日目の計6回皮下に摂取します。(1回13,300円)

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 世界的に見ると、未だに多くの国(中国、東南アジア、中南米、アフリカなどで、狂犬病の発生が見られていて、曝露後予防を受けている人は年間800〜1000万人)とされています。

 狂犬病がないと認められている地域は、ノルウエー、スウェーデン、アイスランド、イギリス、アイルランド、オーストラリア、ニュージーランド、台湾、グアム、ハワイ、フィジーとなっています。

 狂犬病のウイルスは、犬以外にも、猫、コウモリ、アライグマなどにも多く、これらの動物に咬まれたり、引っ掻かれたりした場合に感染します。

 もし狂犬病が発病した場合には、100%死亡するという危険な疾患です。感染から発症までの潜伏期間は咬まれた部位によって異なりますが、多くは1〜2ヶ月です。発病から死亡までは、2〜6日といわれています。

 海外で犬に咬まれたら?

 海外、特に東南アジア等の流行国で狂犬病が疑われる犬、猫及び野生動物に咬まれた場合は。まず傷口を石鹸と水で良く洗い流し、70%エタノールまたは、ポピドンヨード液(イソジン)で消毒し、医療機関を受診して下さい。

 また破傷風の危険もありますので、予防接種歴に応じた破傷風トキソイドの接種も考慮します。

 狂犬病は一旦発症すれば効果的な治療法はありません。出来るだけ早く、狂犬病ワクチン接種を開始する必要があります。

 <主な狂犬病危険動物>

犬、猫(アジア)、ジャッカル(アフリカ)、キツネ(ヨーロッパ)、コウモリ、アライグマ、スカンク(米国、カナダ)コヨーテ(中南米)

※ 狂犬病(またはその疑いのある)動物との接触状況と処置

・触れた、餌を与えた、傷のない皮膚をなめられた。→処置必要なし

・直接皮膚をかじられた、出血を伴わない引っかき傷やすり傷、傷のある皮膚をなめられた。→だたちにワクチン接種するが、10日間動物が健康であるか、剖検して狂犬病が否定された場合は中止する。

・1ヶ所以上の咬傷や引っかき傷、粘膜をなめられた。→直ちに狂犬病γグロブリン(日本では入手困難)とワクチンを開始するが、10日間動物が健康であるか、剖検して狂犬病が否定された場合は中止する。
 

 関連項目 狂犬病 もご覧下さい。

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<医学辞典>

キャッスルマン症候群

 1956年に初めて報告された極めて稀なリンパ増殖性疾患
リンパ節の腫脹を伴い、組織学的にはリンパ濾胞の過形成を認め、さらに血管新生が目立つタイプはヒアリン血管型(HV型)、形質細胞が濾胞間隙に多数見られるタイプは形質細胞型(PC型)と分類されています。

 またリンパ節腫脹が全身に認められる症例は多中心性キャッスルマン病(MCD)と呼ばれMCDはほとんどが形質細胞型です。

 形質細胞型のキャッスルマン病は、しばしば発熱、食欲不振、体重減少などの慢性の炎症症状を有し、咳嗽、神経症状、皮疹、浮腫、あるいは胸水や腹水を伴うこともあり、さらに検査値の異常として貧血、血小板増多、ポリクローナルな高γグロブリン血症、CRP高値、赤沈の亢進、低アルブミン血漿、尿蛋白や自己抗体の出現を認めます。

 また、リンパ増殖性の間質性肺炎やメサンギウム増殖性、アミロイドーシスなどを合併することもある疾患です。

 治療薬 アクテムラ(トシリズマプ:中外製薬) 2005年6月発売
 本剤に対するオーファンドラッグとして指定されています。

  出典:ファルマシア 2005.9

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