1996年11月1日号 210
テロメラーゼ
細胞分裂の回数券
細胞が癌化しているかどうかは、その細胞に含まれるテロメラーゼという酵素を調べると高い確率で分かるという発表が先月、横浜市で開かれた日本癌学会で相次ぎました。 体のどこの癌でも、ほとんどの場合にこの酵素の活動が活発になるので、顕微鏡による組織検査が判定が割れた時の有力な診断材料になると期待されています。 (朝日新聞 1996年10月12日、JJSHP、1996、10) 関連項目 テロメア |
’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’ DNAは、2倍に増えるときは普通のコピーと違って、もとのDNAとそのコピーのDNAとがそれぞれ娘細胞に分配されるのではなく、もとのDNA半分とコピーDNA半分からできたDNA分子が娘細胞に分配されます。ところが、糸状のDNA分子の末端部分はどうしても複製できないのです。複製できなかった部分は短くなります
末端部分のDNAはテロメアDNAと呼ばれ、特殊な塩基配列を持っています。複製のたびにテロメアDNAが末端から少しずつ短くなることはDNA複製の仕組みの持つ基本的な問題点なので避けることはできません。
このため、分裂してできた細胞(娘細胞)は、もとの細胞(親細胞)に比べて必ず短いDNAを持つことになります。娘細胞がまたDNA複製して細胞分裂すると、孫細胞は更に短いDNAを持ちます。こうして何回も分裂するうちに、DNAはどんどん短くなってしまいます。短くなれば、どこかで細胞は機能できなくなり、増殖できなくなり、やがて死にます。つまり細胞は決まった回数しか分裂できないのです。(回数券)
単細胞の生物、アメーバや酵母などはいくらでも分裂できます。永久に増え続けることができます。DNAが短くならないからです。
これらの生物はテロメアDNAだけを専門に合成(延長)する特別な酵素を持っているのです。それがテロメラーゼです。テロメラーゼを持つ細胞はいくら分裂を繰り返してもDNAの長さを一定に保つことができるのです。
ヒトでは、ほとんど全ての組織、細胞にテロメラーゼがありません。ところが癌組織では、85〜90%にテロメラーゼがあることが分かったのです。癌細胞は不死なのです。いくらでも分裂できるため、体の中でいくらでも増えることができます。
もし、テロメラーゼの働きを阻害する薬が見つかれば、癌細胞がどんどん分裂するにつれてテロメアDNAがどんどん短くなり、やがて勝手に死んでしまうはずです。たくさんの製薬会社がこのような薬を発見しようと力を注いでいます。
この酵素は癌細胞が死なない仕組みに深く関わっているとみられ、これを抑制することで治療につなげようという研究も始まりました。
「特に、癌か前癌か、細胞を見た病理医の判断が割れるような場合に客観的に診断できる。」
「将来的には、この酵素の働きを抑えることで癌の進行を食い止めるような薬の開発も可能」とこの酵素の研究に期待が寄せられています。
<癌診断に有力酵素>
癌学会の報告では、人から取り出して癌と診断された細胞の中で、テロメラーゼが活動していた確率(陽性率)は胃癌で86%、大腸癌で95%、肝癌で87%、肺癌100%、食道癌100%、腎癌100%、乳癌84%となっています。
一方、正常な細胞では、皮膚などを除きほとんどが陰性でした。
関連項目 テロメアもご覧下さい。
リボソーム:ribosome
タンパク生合成の場となるRNAタンパク質複合体粒子
リボソームはすべての細胞質のほか、ミトコンドリア、葉緑体中にも存在します。
真核細胞のリボソームは,沈降係数80
S、60 S、40 Sのサブユニットから構成されます。
(人間)
原核細胞のリボソームは70 S遊離型で、Mg2+濃度の低下で50 Sと30
Sに解離します。
(細菌)
蛋白合成阻害の抗生物質は、細菌の50Sや30Sに作用するため、人間にはダメージを与えずに、菌を殺すことが出来ます。
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リポソーム:liposome
細胞膜は脂質の二重層より構成されていますが、その構成成分であるリン脂質やグリセロ糖脂質を少なくとも50%以上(重量比)の水に、その脂質固有のゲル‐液晶転移温度以上で懸濁すると、自動的に脂質二重層よりなる閉鎖小胞が形成され、これがリポソームと呼ばれます。
リポソームは生体膜のモデルとしてのほか、補体作用機序の解明などの免疫学への応用、細胞間相互作用のモデル、膜に作用する薬剤や麻酔薬などの作用機序の解析、膜結合性酵素やレセプターなどの再構成にも用いられています。
また内部に薬剤などを封入しうるので,毒性の少ない薬剤キャリアーとしても注目されており、遺伝情報などを他の細胞へ移入する手段としても応用されつつあります。
副腎偶発腫
偶然の機会に発見された副腎腫瘍を副腎偶発腫(インシデンタローマ)といいます。
その多くは良性の副腎皮質腫瘍ですが、10%程度副腎癌が含まれています。
一見、無症状で非機能性に見える副腎腫瘍の中にはコルチゾールの自立性分泌を示すプレクリニカルクッシング症候群と呼ばれる病態が存在します。現時点では、顕性クッシング症候群に移行する病態か否かは明瞭ではなく、慎重な経過観察もしくは、腫瘍摘出で対処します。
プレクリニカルクッシング症候群
血中コルチゾール値は正常範囲内で理学的にもクッシング兆候を認めないにもかかわらず、血中コルチゾールの日内リズムを認めなかったり、デキサメサゾン抑制試験による抑制の程度が不十分であったり、コルチゾールの自立的過剰分泌を示唆する症例群が存在し、プレクリニカル(サブクリニカル)クッシングと呼ばれています。
プレクリニカルクッシング症候群が、将来、明瞭なクッシング症候群に移行するのかどうかは必ずしも明確ではなく、移行も報告されていますが、プレクリニカルクッシング症候群の好発年齢は50歳台を中心に高齢者に多く、むしろ両疾患群は独立した病態である可能性も示唆されています。
出典:治療 2005.9 東北地方太平洋沖地震による医薬品の供給状況
2011年4月1日号 No.541
3月11日の大震災・津波・原発事故に伴う様々な影響により、医薬品につきましても一部の製剤の供給が不安定になっております。
現時点で、災害を受けたとの報告があった医薬品メーカーは、「あすか製薬」、「扶桑薬品」、「持田製薬」、「ツムラ」などです。
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*あすか製薬
・パラミジンカプセル300mg・プロスタール錠25mg(GEあり)・ルテジオン配合錠・ホーリンV膣用錠1mg・アトニンO注5単位オルダミン注射用1g
・ゴナトロピン注用5000単位・ボセルモンデポー筋注
★チラーヂンS50μg
チラーヂンS50μgの処方量が多く、早い時期に調剤薬局の在庫がなくなる恐れがあります。従来通りの処方日数では、当院門前薬局での在庫量は現在1週間程度しかありません。院外薬局から在庫がないとの問い合わせ時には、当院では同成分のレボチロキシンNa25μgの製剤を採用していますので、レボチロキシンNaで対応するよう返答します。その場合には患者様の負担が増えることになります。
チラーヂンS50 は9.6円、レボチロキシンNa(25)2Tで19.2円 30日分処方(3割負担)の方で86円自己負担が増えます)
※ 調剤薬局にも、チラージンS錠、代替品のレボチロキシンNa(サンド製薬)の在庫がほとんどない状態です。
チラージンS錠、レボチロキシンNa錠の長期処方は避けていただくようお願いします。(原則14日〜30日まで)
なお、製造委託会社による生産。海外製品の緊急輸入、被害を受けた「いわき工場」の操業の再開などの対策がとられており、4月中旬をめどに、安定供給に向けて各関係者が努力しております。
※調剤薬局でチラーヂンS錠供給不足対策
今後1ヶ月供給不足すると思われます。
1)1ヶ月分以上、すでに処方されているなら過剰に処方をうけないこと。
2)手元に1か月分無いなら、主治医と相談して 追加処方を受ける。
*扶桑薬品
・サブラッド血液ろ過用補充液BSGキット
(ろ過透析型人工腎臓使用時の補充液)〜生食とブイペル(フサン)で代用可能
*持田製薬
・パルタンM錠(子宮収縮止血剤)〜1ヶ月程度は在庫あり、後発品もあります。
・ディナゲスト錠(子宮内膜症治療剤)〜1ヶ月程度は在庫あり、同一成分薬はありませんが、子宮内膜症の適応を持つ製剤は下記のとおりです。
リュープリン注、ゾラデックスデポ、ボンゾール錠、プラノバール錠、ルナベル配合錠
*ジョンソン・エンド・ジョンソン
サイデックスプラス28 3.5%液 (医療器具の消毒)〜代替あり。
*ツムラ
漢方製剤
特によく使用されている十全大補湯(N0,48)、大建中湯(No.100)が不足する可能性があります。(回復のめどは約1ヶ月ですので、長期処方は
避けていただくようにお願いします。)
黄砂症 2011年4月1日号
No.541
〜花粉症、喘息発作の隠れた共謀者?〜
黄砂の人体への影響について、黄砂と喘息小児の関連性についての調査がなされ、『黄砂飛来時、喘息小児の入院リスクが上昇する』との報告がなされました。これにより、黄砂は少なからず人体に影響を及ぼすということが示唆されました。またその影響は濃度依存的で、黄砂の検出 濃度が上がるほどリスクは上昇していました。
春先のスギ花粉によると考えられていた喘息悪化の一部や、鼻・のど・眼などへの症状は黄砂そのものによる影響、または黄砂でその炎症反応が憎悪した可能性も考えられます。
今後、『花粉症』ではなく『黄砂症』という概念が広がる日もやってくるかもしれません。
個人レベルにおいては、喘息や花粉症と同じようにステロイド吸入や抗アレルギー薬、マスク、メガネ、窓閉めなどの予防が必ずしも有効かどうかは明確なエビデンスがないが、黄砂の感受性があると考えられる喘息児は、予防を行う価値が十分にあると考えられます。
今年は昨年の何倍ものスギ花粉が飛散する、とテレビでも繰り返し伝えられています。これからは花粉だけでなく黄砂についても十分に気をつける必要がありそうです。
{参考文献}Medical
tribune 2011年2月3日号