HS病院薬剤部発行

薬剤ニュース

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  1995年

2月15日号

NO.170

                                               

   造影剤によるショックとその対策

                                   

      ***予備テストの有用性は疑問***             

 ヨ−ド含有X線造影剤の使用上の注意にはすでに[警告]として、ショック等の重篤な副作用があらわれることが記載されています。造影剤による検査における重篤な副作用を予知する目的で予備テストがありますが、現在ではこの予備テストについて議論されており、副作用を確実に予知する方法はありません。

 造影剤の使用に当たっては、いつ重篤な副作用が発生しても対処できるような心構えと体制の整備・マニュアルの作成が必要とされています。

 *ヨ-ド過敏症について

 造影剤によるショック等の重篤な副作用は、ヨ-ド過敏反応によるものとは限らず、、、という表現になっており、副作用の原因がヨ-ドでないとされるようになりました。

 1990年5月に厚生省の指導により、以前に記載されていた:"ヨ-ド過敏症テスト"という字句が削除され、テストを奨める表現も削除されました。

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 造影剤による副作用には処置なしで治まってしまう軽症なものから生命を脅かす重篤なものまであります。重篤なものを「呼吸困難、急激な血圧低下、心停止、意識消失のいずれかあるいは複数の症状が、でて治療を要したもの」と定義した場合、その発現頻度は 0、04%と報告されています。また造影検査が終わっても検査室を離れた後に発生する遅発性の副 作用も含まれているので注意が必要です。

  <予備テストの評価>

 造影剤で起きる副作用を予知できる方法はないといえます。外国で予備テストを行っているところは殆どありません。テストアンプルを添付しているのは日本だけになっています。

 国内の大規模調査の資料の分析結果も予備テストの信頼性がないことを裏付けています。重篤な副作用はテスト陽性例から発現せず、陰性例から 0、04%の発現が記録されています。これらのデ−タは日本医学放射線学会から公表されています。

◎予備テストをもし行うとすれば次の点に留意して下さい。

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・予備テストが陰性であることは、実際の検査で副作用が起きないことを保証していません。

・予備テスト自体で重篤な副作用が起きることがあります。テストといえども検査と同じ救急に対する体制が必要です。

・テストアンプルを検査室と別なところにためておいてテストするのは非常に問題です。(初期の注入で問題なく、さらに注入が進んでから重篤な副作用が起きることがあります。)

・予備テストで遅発性の副作用が事例の報告もあります。

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・外来患者に使用する場合には、注入1時間以後にも遅発性の副作用の発現の可能性のあることを患者に説明した上で、嘔気、胸痛・背部痛、発熱、皮疹・発疹など副作用と思われる症状が出現した場合には速やかに適切な処置をとること。(副作用発生時の対処法のマニュアル例ありますので、薬剤部DI室までお問い合わせ下さい。)

ヨード造影剤のプレテスト昭和63年5月1日号  No.21

                  

水溶性ヨード造影剤テストアンプル廃止 2000.6.15

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<医学用語辞典>

NSF:nephrogenic systemic fibrosisi
腎性全身性線維症


NSFは別名、腎性線維化皮膚症(NFD:nephrogenic fibrosing dermopathy)とも呼ばれ、皮膚での結合組織の過形成を特徴とする稀な疾患です。

皮膚は肥厚し、肌が粗く硬くなり、拘縮および関節が動かなくなることもあります。

NSF患者では、肺、肝臓、筋肉、心臓等の他の器管も含み、全身性の病態が認められる場合があります。患者の5%は、急速に進行する劇症型の臨床経過をたどります。

NSFは腎機能不全患者だけで報告されています。NSF患者のほとんどで進行腎疾患または末期人疾患が認められますが、中等度の腎機能障害患者でも数例報告されています。

※プロハンス注・シリンジ(非イオン性MRI用造影剤)の副作用 
外国で、重篤な腎障害のある患者において、他のガドリニウム系造影剤使用後に腎性全身性線維症(NSF)を発症した症例が報告されている。
 


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脱毛症のメカニズム

2004年3月1日号 No.378

 脱毛症とは、毛が脱落ないし疎となる疾患群で、1.真に毛が脱落した状態、2.硬毛が軟毛化した状態、3.脆弱な毛で切れやすく長く伸びない状態をいいます。

 1.は後天的な要因により毛が脱落する状態で、円形脱毛症、トリコチロマニア(抜毛癖)などがあります。
 2.は、毛が脱落するのではなく、毛が細く短い毛に置き変わることにより頭髪が薄くなるもので、男性型脱毛症はこのタイプの代表的   疾患です。
 3.ネザートン症候群、連珠毛、白輪毛など毛髪奇形のために毛が脆弱となるもので、いずれも遺伝性で稀な疾患です。

* 円形脱毛症

 円形脱毛症は若年者に多く、円形の脱毛巣が基本ですが、広範囲に脱毛することもあります。脱毛巣に短い切れ毛、根元の細い感嘆符毛、萎縮毛の黒点などの病的毛が見られるのが特徴です。

 局所免疫療法や副腎皮質ホルモン療法など、免疫抑制・修飾が有効であることから、成長期毛器官に対するTリンパ球による自己免疫反応が本症の病態と考えられています。
 また、円形脱毛症の約20〜30%に家族内発生があることから遺伝的因子の関与があり、また、本症発症への精神的ストレスの関与は患者の2割程度に証明されますが、Tリンパ球による自己免疫反応の誘導や増悪因子との詳細な関連はまだ証明されていません。

* 男性型脱毛症

 本症は、本来長い硬毛が、毛周期を繰り返すうちにある時期から短く細い軟毛になるものです。遺伝的素因に基づき、思春期以降のアンドロゲン増加により、前頭〜頭頂部の頭髪が薄くなります。

 アンドロゲン性脱毛症とも言い、男性ではテストステロン、女性では副腎皮質由来アンドロゲンの作用によります。組織学的に見ると毛根は思春期前には十分発達していたものの、続く毛周期で小さな毛根しか再生されず(毛根のミニチュア化)、毛の産生も早く停止してしまう病態です。

 テストステロンは、標的細胞である毛乳頭細胞の5αリダクターゼ(5α-R)により一層アンドロゲン作用の強い5αジヒドロキシテストステロン(5α-DHT)に還元され、核内アンドロゲン受容体と結合して作用します。

 5α-RにはI型とII型があり、後頭〜側頭部毛の毛乳頭細胞はI型だけを持っていますが、前頭〜頭頂部毛あるいは男性の髭ではI型とII型の両方が存在します。

 テストステロンが働くと、後頭〜側頭部毛はそれほど影響を受けませんが、髭の毛根は増殖が亢進されて発達し、一方、前頭〜頭頂部毛の毛根の増殖は抑制され、ミニチュア化に向かいます。

 一方、女性の前頭部毛根のI型とII型の5α-Rおよびアンドロゲン受容体は男性の約半分ですが、男性と同様に後頭部毛根に比べてレベルが高くなっています。しかし女性の毛根では、男性と異なり、テストステロンをエストラジオールに変換するチトクロームp450アロマターゼが存在し、結果的に産生される5α-DHTがそれほど多くないため、素因のある女性でも男性ほど顕著な状態には至りません。

 男性の男性型脱毛症には、内服育毛剤であるフィナステライド(市販薬)が有効です。フィナステライドはII型の5α-Rを阻害します。外用剤のミノキシジル(市販薬)は、5α-Rとは無関係に、毛乳頭細胞からの増殖亢進因子の産生を高めることで、有効であると考えられます。ミノキシジルは女性にも有効とされています。

   {参考文献}臨床と薬物治療 2004.2


医学・薬学用語解説(や)

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