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ヨード造影剤のプレテスト

昭和63年5月1日号  No.21

 

 

水溶性ヨード造影剤は、尿路系、血管系の造影の他、CTにも用いられるようになって使用量は急増してきています。

 ヨード造影剤に副作用が発現することは広く知られており、死に至る重篤なものから、嘔気のみのような軽微なものもあります。

 全国11施設で行った33430例のヨード造影剤使用に対する臨床調査によりますと、プレテスト実施は90%でプレテスト陽性者は108例(0.3%)でした。その副作用発現頻度は52例48%で明らかに陰性者よりも多くなっています。しかしその内容は嘔気(63%)、発疹・発赤(33%)、嘔吐(25%)、血圧低下(10%)だり、副作用症状としては陰性者とほぼ同じ傾向を示しました。

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 <プレテストの問題点>

*プレテスト陰性でも、本検査で重篤な反応を起こすものがある。

*逆にプレテスト陽性でも本検査で異常のないものがある。

*プレテストでは1〜5mlの少量のため用量依存の副作用の予知は出来ない。また本当のヨードアレルギーを有する人ではプレテストの注入のみでも死亡に至らしめる可能性がある。

*プレテストではdelayed reaction(遅延反応)は無視されている。

 
 プレテストのは以上のような問題点がありますが、現在のところ他に有効な手段が亡く、テスト陽性者の法が陰性者よりも副作用発現頻度が高いなどからプレテストを中止すべきであるとの結論は出せません。しかし、「テスト陰性=安全」と考えるのは誤りであり、あくまでも細心の注意と副作用発現後の速やかで正しい処置を行うことが大切です。


2000年6月テストアンプル廃止

こちらをご覧ください。↓

水溶性ヨード造影剤テストアンプル廃止について(水溶性ヨード造影剤の重要な基本的注意)


ムコール症

昭和63年4月15日号 NO.20 に掲載

副作用情報 No.89

デスフェラール注によるムコール症

 ムコール症は、Mucorales(ケカビ目)による急性感染症で、通常は重症糖尿病、白血病、悪性リンパ腫などの重篤な疾患に日和見感染として発症する場合が主です。

 ムコール症は組織学的には血栓性血管炎と急性壊死性炎が主で、菌は血管、特に動脈に強い親和性を持ち、血管内で増殖して血栓、梗塞を起こすのが特徴です。

 脳型ムコール症は副鼻腔炎から眼症状を呈し、脳CTで生前診断がつく例も最近では増加していますが、全身ムコール症では基礎疾患の症状に隠れて診断がつきにくく、血液培養も陰性の場合多く見受けられます。

 その他に、肺型、胃腸型、皮膚型等のムコール症が知られています。有効な薬剤としてはアムホテリシンBがあります。

 今般、デスフェラール注(メシル酸デフェロキサミン)を使用した症例でムコール症を発症したとする報告が、10報24症例が企業から報告されています。

 メシル酸デフェロキサミンは適応として原発性・続発性ヘモクロマトーソスでの尿中への鉄排泄増加を目的とした製剤です。

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 ムコール症は希な感染症ですが、報告例の2/3以上が糖尿病患者であることから糖尿病に特徴的な感染症の1つといえます。

 ムコール症の中で汎発型は基礎疾患を有した一般状態の悪い患者の致死的な劇症型感染症で、臨床的に気づかれることがほとんどなく生前診断が困難な疾患です。

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<医学用語辞典>

HPS
hemophagocytic syndrome

血球貪食症候群

 HPSは血液貪食を伴うマクロファージの増殖のため高熱、汎血球減少、多臓器不全と様々な病態を呈する疾患群の総称ですが、各種の感染症が引き金となったり、悪性腫瘍に伴って発症します。

 汎発型のムコール症によるHPSが惹起されたと思われる糖尿病の症例がありました。この症例の感染経路は抜糸後の創部からの直接侵入及び菌体の入った滲出物誤嚥と考えられましたが、基礎疾患に糖尿病を有したため汎発型ムコール症発症しHPSを惹起したと思われます。

 ムコール症により惹起されたHPSの報告例はこれまでなく極めて希な症例と思われます。

    出典:日本内科学会雑誌 2000.1.10

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本症は、単一遺伝子病として、また感染症、膠原病や悪性腫瘍の合併症として発症します。

高熱が持続し、急速に播種性血管内凝固(DIC)が進行するため、本症を疑ったら早期の治療介入が必要です。

本症の共通病態である免疫の過剰活性化をきたす疾患と誘因は多様です。続発性の臨床像は、自然軽快する軽症例から造血細胞移植の必要な重症例まで幅広いため、疫学を理解し、治療と平行しながら原疾患の診断を進めねばなりません。

*こんな所見があれば、本症を疑う

・抗菌薬に不応の高熱が持続し、血球減少、播種性血管内凝固および肝脾腫がみられた場合。

・高フェリチン血症、低コレステロール血症、高トリグリセリド血症、血清可溶性IL-2受容体の上昇が特長的で、骨髄に血球貪食組織球が増加する。

・まれな単一遺伝子病である原発性と感染症、膠原病および悪性リンパ腫に合併する続発性に分けられる。

・小児ではEBウイルス関連、成人ではリンパ腫関連が多い。

<注意>

・播種性血管内凝固の進行が予後を左右する。

・感染症関連では自然軽快するものもあるが、EBウイルス関連ではエトポシドを必要とする重症例が多い。

・膠原病や自己免疫疾患に伴うものにはシクロスポリンが有効

・原発性では同種造血細胞移植が根治療法となる。

・本症を疑ったら、早急に検査を進め血液専門医へ紹介することが望ましい。

出典:治療 2010.10


DLIS
ジゴキシン様免疫反応物質

digitalis-like immunoreactive substances
digoxin-like immunoreactive substances
DLIF:digitalis-like immunoreactive factor

抗ジゴキシン抗体と交叉反応を示す物質で、高血圧、心不全、腎不全、肝障害のある患者、妊婦、胎児、新生児などの血中や尿中に存在することが知られています。

一方DLISは元来生体に存在する物質、Na+、K+-ATPaseを阻害し血圧・体液量調節系へ作用する因子とも考えられています。この場合、DILSは、EDLF:endogenous digitalis-like factorと称され、厳密にDLISと区別されています。

肥大型心筋症(HCM)の患者にDLISが存在すること、大阪医科大学薬剤部の井尻先生によって確認されています。

ジゴキシンを服用している患者の血中濃度を測定すると、真のジゴキシン濃度よりも高く測定されることがあります。これはジゴキシン様免疫反応物質DLISと呼ばれます。

この現象は血清内の内因性ジゴキシン様物質あるいは外因性のジゴキシンと構造の類似した併用薬が抗ジゴキシン抗体と交叉反応することや内因性・外因性の測定妨害物質によって起こるとされています。

ジゴキシンは有効治療域の狭い薬であるため、DLISの存在はジゴキシンの血中濃度を過大評価する危険性があります。

※ 内因性ジゴキシン様物質

bufenolide,内因性のouabainが内因性ジゴキシン様物質の本体と考えられています。

{参考文献} Q&Aで学ぶTDM活用ガイド 薬局別冊 2004.10 等

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カウンターフィット医薬品
counterfeit medichines


 故意に、又は詐欺の目的を持って内容や出所・起源に関して関して偽表示された医薬品のこと。
抗HIV薬、抗癌剤、抗生物質、降圧剤、高脂血症治療薬、解熱鎮痛剤、抗マラリア剤、生活改善薬等あらゆる薬剤の偽物が出回っています。

  出典:EN 医薬品ニュース 2008.12.25 Vol.17
 

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