HS病院薬剤部発行     

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薬剤ニ ュ ー ス  

  1994年

6月15日号

NO.154

 

 

薬剤と月経異常

    −医薬品副作用情報[解説]−

  月経異常を起こす可能性のある薬剤には2種類あり、性ステロイドホルモンのようにその薬理作用により当然月経に影響を与えることが予想される薬剤と日常頻繁に使用される薬剤で、それを使用している患者の数%に月経異常を来す薬剤です。後者のうち最も多いのは高プロラクチン血症を起こし、結果的に月経異常を引き起こすものです。また最近多く開発された抗アレルギ−剤にも月経異常を起こす可能性が指摘されています。

 [表]高プロラクチン血症を起こす可能性のある薬剤

1、Major Tranquilizer

 フェノチアジン系薬剤〜コントミン等

ブチルフェノン系薬剤〜セレネ-ス

2、高血圧治療剤〜アルドメット

3、中枢性抗潰瘍剤〜ドグマチ-ル

4、中枢性制吐剤〜プリンペラン

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 月経が無くなる、月経周期が不規則になるなどの月経異常は特に若い女性にはかなり頻繁にみられます。最も多い原因はダイエットをしたために起こる体重減少性の無月経です。次いで多い原因は多嚢胞性卵巣症候群によるものです。薬剤に起因する月経異常は恐らくこの2つに次ぐものと思われます。

(1)月経異常が当然予測される薬剤

 卵胞ホルモンと黄体ホルモンの合剤、子宮内膜症や乳腺症に用いられるダナゾ−ル(ボンゾ-ル) などの性ステロイドはその代表といえます。その他にもGn RHのアゴニスト(スプレキュア)、乳癌治療に用いられられる抗エストロゲン剤(ノルバデックス) などもそういった薬剤です。

 また多くの抗悪性腫瘍剤も卵胞毒性があり、与薬時は一時的に無月経になることも多くみうけられます。

(2)抗プロラクチン血症を起こす可能性のある薬剤

 プロラクチンは乳汁分泌に関与する脳下垂体前葉から分泌されるホルモンで、その分泌はドパミンが抑制しています。

 上表に示すように高プロラクチン血症を呈する薬剤は広範囲に分布しており精神科の多くの薬剤やドグマチ−ル、プリンペランなど日常診療に数多く使用されるものです。

 (薬剤ニュ−スNo.51参照

 これらの薬剤を使用しても高プロラクチン血症を呈する可能性は数%であり、あらかじめ月経異常が起こる可能性を説明するほどではないと考えられます。

 薬剤による月経異常が疑われた場合、プロラクチン濃度を測定し、乳漏症の有無を検査します。月経異常の原因が薬剤であることが確認できた場合、その原因薬剤の効果と副作用である月経異常を考慮し薬剤を継続するかどうかを決めることになります。

通常は原因薬剤を中止すれば月経は正常化します。

[抗アレルギ−剤]

 抗アレルギ−剤はアトピ−治療のために長期間使用される頻度が高くなっています。したがって、抗アレルギ−剤による月経異常の多くは皮膚科から報告されています。

 抗アレルギ−剤による月経異常は頻発月経、つまり月経の周期が短くなるタイプがほとんどで、恐らく無排卵周期症になっているものと思われます。

 原因と考えられる薬剤は、抗ロイコトリエンや抗PAF等の幅広い作用があります。卵巣での排卵、脳下垂体からのゴナドトロピン分泌等にはそれらのメディエ−タ−が関与していることは、少なくとも実験動物では明らかにされており、ヒトでもそれらの現象を阻害し、月経異常を引き起こしことは十分に予想されます。

   <厚生省薬務局安全課>


<<医学・薬学用語辞典>>


セサミンの抗高血圧作用と血管内皮機能改善効果

 ゴマは昔から健康を増進させるといわれ、広く親しまれてきましたが、近年その様々な生理活性が科学的に解明されてきています。

 中でもゴマに特徴的な成分であるリグナン酸の持つ生理活性が注目されています。

 セサミンはこのリグナン化合物の一種で、ゴマに0.5〜1%程度含まれています。

 セサミンの生理活性としてはこれまでに、肝過酸化脂質生成抑制効果、アルコール分解促進作用に基づく肝機能増強作用、癌細胞増殖抑制効果、コレステロールの吸収抑制による血清コレステロール低下作用、免疫機能への影響などが報告されています。

 最近の研究によるとセサミンは酸化ストレスの亢進を効果的に抑制することにより、高血圧の発症と進展を遅らせ、血管内皮機能を改善することが明らかになりました。またこれらの効果には抗酸化性を持つセサミン代謝物のカテコール体セサミンが関係する可能性が示唆されています。

 近年、高血圧の発症要因のひとつとして血管系での酸化ストレスの亢進と血管内皮細胞障害との関連性が注目されています。本態性高血圧モデルとなっている高血圧自然発症ラットに
スーパーオキシドジムスターゼ(SOD)を投与すると血圧が低下すること、アンギオテンシンII持続注入による高血圧モデルでは、SODの慢性投与が血圧の上昇を抑制し、さらに減弱した内皮依存性弛緩反応を改善することも報告されています。

 高血圧を含めた種々の循環器疾患の発症や進展に活性酸素が関係することは、一般的な知識として広まりつつありますが、セサミンは生体内で効果的に働く強力な抗酸化剤であることから、ヒトでの有効性に期待がもたれています。

      出典:治療 2004.4

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