無駄口薬理学薬学用語辞典やさしい薬理学毒舌薬理学

 

 

 

 

読み込み中

しばらくお待ち下さい。

 

 


メインページへ

天疱瘡様症状

1993年4月1日号 No.127


医薬品副作用情報 No.119


 天疱瘡および天疱瘡様症状は全身の皮膚に水疱を生じる自己免疫性水疱症で、両者は組織学的に棘融解(棘細胞離解,アカントリーゼ)の有無及び免疫グロブリンの沈着態度で区別されるとされています。

 薬剤により誘発されるものとしては、D−ペニシラミン、チオラによるものがすでに報告されています。発生機序としては、分子内遊離のSH基が表皮細胞膜および表皮細胞間の蛋白質のSH基と結合して抗原性を獲得し抗体が産生され、それが天疱瘡抗体と交差反応性を示し、天疱瘡様病変を惹起しているという意見と、自己反応性T細胞の関与を注目する考えがあります。

 カプトリル(アンジオテンシン変換酵素阻害剤:ACE阻害剤)により、天疱瘡様症状を発現したとする症例が2例(海外で4例)報告されました。

 これまでカプトリルによる皮膚障害の報告は少なく、また、天疱瘡様症状等の皮膚障害の発現についても、その使用量から勘案して発現頻度は低いと考えられます。しかし報告された症例はカプトリル服用後に皮膚障害が発現し、内服中止により改善していることから、因果関係は否定できません。

*セタプリル錠、レニベース錠、インヒベース錠、アデカット錠、ロンゲス錠など他のACE阻害剤でも天疱瘡様症状が発現する可能性があります。


偽膜性大腸炎

 菌交代現象によって異常増殖したClostridiumu difficileの産生する毒素により大腸粘膜が障害されて発症すると考えられています。

 下痢、発熱で発症し、著明な白血球増多、低蛋白白血症、電解質異常を認め、糞便よりClostridiumu difficileおよびその毒素が高率に検出されます。確定診断には大腸内視鏡が必要で、黄白色の偽膜を認めます。治療としては、原因薬剤の中止の他、バンコマイシンの内服が一般的。また、電解質や血清蛋白値に注意が必要です。

<患者さんへの注意>

「服用中、あるいは飲み終わって数日たった後でも、1にち2〜3回の軟便、さらに頻回の水のような下痢、お腹がはる、腹痛、お腹の鈍い痛み、発熱、吐き気などの症状が現れた場合には、すぐに服薬を中止して主治医に連絡して下さい。

<ポイント>

 抗菌剤、抗生物質による偽膜性大腸炎は、高齢者や基礎疾患を有する場合に発症しやすくなります。

 下痢、腹痛、発熱等の症状に始まりますが、比較的緩徐に出現するため、診断が遅れることがあり、電解質異常や脱水等が引き起こされ重症化する場合があります。

 患者自身は元の疾患の悪化と思い込みそのままにしておくことも考えられ、抗菌剤、抗生物質を飲み始めてから、初期症状に気づいた場合には、原疾患と思い込まずに、すぐに主治医に連絡し指示を確認するよう指導する必要があります。なお、腹痛を伴う頻回の水様便が認められた場合には、服薬を中止して、すぐに主治医に受診するよう指導する必要があります。

<症状>

 水様性下痢(1日2〜3回の軟便から1日10回異常の水様性便便、ときに血が混じることもある)がはじまり、その後、腹部膨満感、軽度腹痛、腹部鈍痛が生じ、38°C以上の発熱が出現することが報告されています。

 他に、食欲不振、悪心・嘔吐等の症状がみられることもありま。重症例では、イレウスやショック、腸穿孔または頻回の下痢による電解質異常・脱水、血圧低下等を生じることもあり、適切な処置が行なわれないと死に至ることもあります。消化器症状が乏しい症例や無症状の場合があるため、診断が遅れる原因となります。

<好発時期>

 抗菌剤、抗生物質服用から発症までの期間は、1〜2日から6ヵ月、平均22.8日。
一方、抗菌剤服用中止後4〜21日目に発症した症例も報告されています。

 ニューキノロン系抗菌剤では、服薬日数は3〜22日、服薬中止後の発現例では、中止後11日目に下痢を発現した症例が報告されています。

<転機>

 軽症例では原因薬剤の中止のみで治癒し得ます。重症の場合や原疾患への抗菌剤が不可欠で継続服薬が必要な症例では、治療薬である塩酸バンコマイシンを与薬します。
 症状軽快後も2週間継続して服薬し、大腸内視鏡で正常粘膜に回復したことを確認後に終了するなど、再発予防のため十分な加療が必要です。

<機序>

 起炎性の強い毒素エンテロトキシン(トキシンAまたはD1トキシン)が偽膜性腸炎の主たる原因として考えられており、好中球浸潤、腸粘膜絨毛の破壊を招くとされています。

 高齢者や重篤な基礎疾患を有する患者(腎不全、白血病など)で本副作用の発症が多いとされていますが、その原因についての明確な機序は解明されていません。

<治療法>

 第1に原因薬剤を中止。腸内細菌叢の正常化のために乳酸菌製剤の与薬も行なわています。

 重症の場合や原疾患への投与継続例では、Clostridiumu difficileに有効な薬剤の与薬を行います。その場合の第1選択薬は、塩酸バンコマイシンで1日0.5〜2gを4回に分けて経口します。症状軽快後も2週間は継続して服薬し、大腸内視鏡で正常粘膜に回復したことを確認後終了します。

 第2選択薬は、メトロニダゾールで1日0.25〜1gを4回に分けて経口(保険適応外)

 重症例では、輸液管理を行ないます。抗コリン剤は腸内容物を停滞させ、腸管内の毒素排泄を遅延させるため使用しません。

出典:重大な副作用指導情報集

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

出血性大腸炎

 腹部全体が痛む突発性の腹痛(かなり強い)、水様性便、新鮮な血の混じった血便(トマトケチャップ様)がみられます。しかし一部の症例では下血を伴わない下痢や軟便で、腹痛も軽度の場合があります。

 NSAIDsのメフェナム酸では抗生物質と同様の症状を示すことが知られています。またインドメタシンファルネシルでは、嘔気、嘔吐を伴う下腹部痛が発現した例が報告されています。

<患者さんへの注意>
「急にお腹が痛む、お腹全体が痛む、頻回の下痢、トマトジュースのような下痢、水のような下痢」などの症状に気づいた場合は、服薬を中止してすぐに主治医に受診して下さい。

<作用機序>

 いまだ解明されていません。大腸菌叢の菌交代現象、アレルギー、大腸粘膜のプロスタグランジン(PG)合成抑制による粘膜防御機構・粘膜出血・粘膜修復作用の減弱によるなどいくつかの説があります。

 抗生物質では、服薬後3〜4日で突然発症しますが、中には6時間と短いものから30日と長い例も報告されています。インドメタシンファルネシルでは16日〜7ヶ月、フルフェナム酸では服用開始2年を経過した後発現したという報告もあります。

<治療>

 第一に原因薬剤の中止、次いで対症療法として、整腸剤や鎮痙剤などを用います。
 激しい腹痛と脱水症状が強い場合には、入院加療を行うこともあります。脱水に対しては、補液を行う。塩酸バンコマイシンは不要です。

発現頻度〜不明
転帰〜予後は比較的良好で原因薬剤を中止して適切な処置を行うことにより、数日〜1週間以内で速やかに回復します。

 薬剤に起因する出血性大腸炎は、抗生物質(特に広域合成ペニシリンなど)による報告が多く、NSAIDsでの報告もあります。

 腹部疝痛、下痢、下血など急性腹症として薬剤服用後比較的短期間で発症します。しかしNSAIDsでは、服用後発症までの期間は長い傾向にあります。近年、ヘリコバクタピロリの除菌のため、アモキシシリンが使用されるように、減少傾向にあったこの副作用が今後増加する可能性が指摘されています。

出典:重大な副作用指導情報集

 脱水が軽度の場合は、経口輸液も可能で、WHOではORSという処方を推奨しています。日本では市販されていないため、ソリタ顆粒やスポーツ飲料で代用しています。

ORS:oral rehydration salts

食塩3.5g、重曹2.5g、無水ブドウ糖20g(白糖40g)、add水1L

老人や小児など容易に脱水症状を来すような場合には、5%ブドウ糖液や乳酸加リンゲル液などの電解質を点滴静注

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

Q:抗生物質の副作用の出血性大腸炎について教えて下さい。

A:まず出血性大腸炎ですが,これは主として経口ペニシリン剤の服用後に,急激に血性下痢,腹痛で発症します。Klebsiella oxytoca が純培養状に検出されることがありますが,発症機序は未だ不明です。深部大腸を中心に腸管の痙攣,粘膜の発赤,びまん性の出血を認めます。原因となった抗菌薬の中止のみで速やかに治癒します。

 次に偽膜性大腸炎ですが,抗菌薬投与により腸管内常在菌叢が破壊され,菌交代によりClostridium difficile が異常繁殖し,その菌毒素によって腸炎を生じます。重篤な基礎疾患を有していることが多く,水様性下痢を主訴とします。内視鏡的には直腸,S状結腸から全大腸にわたって黄白色で半球状の偽膜が多発します。確診は糞便の嫌気性培養によるC.difficile の証明,あるいはその菌毒素の検出によります。

 後者の原因抗生剤としては,ダラシン,第3世代セフェム系,ユナシンなどが知られています。

Q:偽膜性大腸炎だった場合は、バンコマイシンやメトロニダゾールの併用で抗生物質を継続することができるようですが、出血性大腸炎だった場合はこういう患者さんには、抗生物質を使用できないのでしょうか?

A:偽膜性大腸炎では,重症の場合はバンコマイシンやメトロニダゾールの併用で経過を観ながら他系統の抗生物質を慎重に検討をします。
軽症の場合は,フラジール250mg 3〜4錠を分3−4です。
基本的には,原因抗生剤の中止,基礎疾患の治療とともに,輸液により脱水,低蛋白血症,電解質異常を補正します。腸管の蠕動を抑制するような止痢薬は禁忌です。
出血性大腸炎では,まずは原因薬剤の中止です。治癒経過を観た上で他系統の抗生剤を検討する以外ないのではないでしょうか?


羞明(しゅう明)

photophobia

まぶしいことを嫌うこと

 眼が光によって強く刺激されるため、光をまぶしく感じ,光を受けることを嫌う状態

 眼痛や流涙を伴うこともある。角膜炎、虹彩炎などの前眼部疾患,水晶体,硝子体の混濁、球後視神経炎、髄膜炎などの疾患、および白子症(白児症)、虹彩欠損症で生じます。

 原因は三叉神経第1枝の直接刺激または縮瞳に対する三叉神経の過敏反応と考えられています。白子症などにみられる羞明を単なるまぶしさdazzlingとして区別することもある.


<副作用として羞明の記載のある薬品(当院採用分のみ)>

IDU点眼,アダプチノール錠,インフリー,エリスパン錠,チモプトール点眼,ドプス,ハルシオン錠,ピバレフリン点眼,ベトプティック点眼,ミケラン点眼,ランドセン,レペタン坐薬,レペタン注,ロートエキス,アネキセート,タンボコール錠,ノルアドレナリン,ラニラピッド錠,キニジン錠,イオメロン,イントロンA,オーアイエフ,塩酸キニーネ,タキソテール注,バイアグラ錠,トルソプト点眼液1%

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

NAION:non-arteritic anterior ischemic optic neuropathy
非動脈炎性前部虚血性視神経症

AION:anterior ischemic optic neuropathy
虚血性視神経症

 視神経での急激な循環障害により発症するもので、比較的高齢者の片眼に突発する視神経障害の重要な原因の一つとされています。

 虚血性視神経症の発症に関連する因子には、多くのものがあげられていますが、側頭動脈炎が基礎疾患とされる動脈炎性虚血性症(arteritic ION:AION)と側頭動脈炎によらない。非動脈炎性虚血性視神経症(NAION)とに区別されています。

 そのリスクファクターは「50歳以上」、「高血圧」、「高コレステロール」、「糖尿病」など、多くが勃起不全(ED)のリスクファクターと共通しています。

 2005年5月、FDAはバイアグラ錠等(PDE5阻害剤)を服用した43例でNAIONに起因する視覚障害が報告されています。

 バイアグラ錠とNAION発症との因果関係は不明です。

    出典:ファイザー資料


無駄口薬理学薬学用語辞典やさしい薬理学毒舌薬理学