だいくとおにろく(日本の昔話)


  目 次
1. いきさつ
2. 新聞記事
3. あらすじ
4. 作者紹介
5. 読後感

松居直 再話 赤羽末吉 画
株式会社 福音館書店
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1. いきさつ
 詩人の俵 万智さんが、朝日新聞の夕刊に「かーかん、はあい 子どもと本と私」という連載を書いておられます。毎回楽しく読んでいるのですが、今年(2009年)の4月22日の分はとても面白かったので図書館で本を借りてきました。まず、この記事を読んでいただき、次に本のご紹介をします。もちろん、本は改めて購入しました。

2. 新聞記事 「かーかん、はあい 子どもと本と私」 俵 万智 鬼の名は、おにぎり? おにく?
 図書館をぶらぶらしていたら「あ、だいくとおにろくだ!」と息子が1冊の絵本を見つけた。NHK教育テレビの「おはなしのくに」という番組で、以前紹介されていた昔話だ。この番組は、俳優さんが1人で、けっこう長いお話を語って聞かせるというスタイル。背景や音響効果、絵による描写も多少はあるものの、基本的には俳優さんの「語り」の力によるところが大きい。正直言って、途中で飽きてしまうものもあった。そんななか、息子と私が釘(くぎ)づけになったのが、ワハハ本舗座長の佐藤正宏さんによる「だいくとおにろく」だった。
 朗読とか読み聞かせというより、これはもう一人芝居だなと思った。大工に代わって橋をかけた鬼は、約束の目玉を渡せと迫る。名前を当てることができたら許してやるというのだが……。最後の、名前を当てる場面が、このお話で一番盛り上がるところ。佐藤さんの演じる鬼は、鬼なのに人間味があふれていて、とてもチャーミングだった。
 借りてきた『だいくとおにろく』(松居直再話、赤羽末吉絵、福音館書店・840円)を早速読む。鬼の名前をすでに知ることができたのに、何回かわざと間違えて言うところが、やはりおもしろい。
 「がわたろうだ」 「ごんごろうだな」 「だいたろうだっ」……違う名前を読むたびに、息子が嬉(うれ)しそうな顔をするので、つい調子にのって「じゃあ、おに、おに、おに……おにぎり?」と言うと、ものすごくウケた。こうなると、根が大阪人の私は、さらに張りきってしまう。
 「おに、おに……オニオングラタン?」「ちがう−、ワシは食べ物じゃない」「じゃあ、おに……ごっこ?」 「遊びでもないわ」「うーん、おに……は、そと?」 「豆まいて、どうすんじゃあ」「おに、おに、おにいちゃん?」 「おまえは、おとうとか!」 「おにいち」「ん?」 「おにに」 「ちがうちがう」 「おにさん」 「どきっ」 「おによん、おにご、おにしち?」 「なんで、ろくをとばすんじゃい!」 「そうか、じやあ、おにろくだ」「うわあー」てな具合。
 ヘンな名前を言うたびに、息子は大喜び。次の日など「あの、名前をあてるところから、読んで」と言う。
 「おにく?」 「だから、食ベ物じゃないって」 「おにやんま?」 「ワシはトンボか」「おにもつ?」 「なんだとー」と、母のワルノリは続くのだった。
 ちなみに、いくつかの「大工と鬼六」を読んでみたが、「わざと間違える名前」には、ひとつとして同じものがない。「強太郎、おん吉、つの兵衛」 「権助、権兵衛、権吉」 「鬼太郎、鬼次郎、鬼すけ、鬼きち、鬼さく、鬼べい」……。再話をする人も、きっとここは、楽しんで書いておられたのだろう。
(出典 朝日新聞 2009.4.22)

3. あらすじ(絵本は絵と文章が一体のもの。それでも筋をまとめてみました)
 むかし、あるところに、とても ながれの はやい おおきな かわが あった。あんまり ながれが はやいので、なんど はしを かけても、たちまち ながされてしまう。
 こまった むらの ひとたちは このあたりで いちばん なだかい だいくに たのんで、はしを かけてもらうことにした。
 だいくは ひきうけてはみたものの、 しんぱいになって、はしを かける ばしょへいって、じいっと ながれる みずを みつめていた。
 すると、ながれの なかに、ぷく ぷくと あわが うかんで、なかから ぷっくり、おおきな おにが あらわれた。
 おには だいくが はしをかけたいときいて、「それは むりだが、おまえの めだまを よこしたら、おれが おまえに かわって、はしを かけてやってもよい」と いった。だいくは いいかげんな へんじをして、いえにかえった。
 つぎのひ、だいくが かわへ いってみると、なんと まあ はしが はんぶん かかっていた。
 また つぎのひ、かわへ いってみると、たまげたことに、はしが もう ちゃんと りっぱに できていた。
 そこへ おにが でてきて、「さあ、めだまぁ よこせっ」と いった。だいくが たまげて、「まってくれ」と いうと、おには、「まてねえ」と いう。「たのむ。まってくれ」と だいくが にげだす うしろから、おには おおごえで どなった。「そんなら、おれの なまえを あてれば ゆるしてやっても ええぞ」
 だいくは、どんどん、にげて、あてもなく やまの ほうへ にげていった。そして あっちの やま、こっちの たにと、あるいていると、ふっと とおくの ほうから、ほそい こえで こもりうたが きこえてきた。
 はやく おにろくぁ めだまぁ もってこばぁ ええ なあ−−−
 だいくは それを きいて、はっと われにかえった。そして、そのまま うちへ かえって ねてしまった。
 そのつぎのひ、だいくが かわへ いくと、ぷっくり おにが でてきて、「さあ、はやく めだまぁ よこせっ」と いった。だいくが、「もうすこし まってくれ」と いうと、おには、「そんならば、おれの なまえを あててみろ」と いった。だいくは、「よしきた。おまえの なまえは、かわたろうだ」と でまかせを いった。 すると、おには よろこんで、「そんな なまえでは ない。なかなか おにの なまえが いいあてられるもんじゃない」と にかにか わらった。
 だいくは、また、「ごんたろうだな」と いった。「うんにゃ、ちがう」「だいたろうだっ」「うんにゃ、ちがう ちがう」 そこで いちばん おしまいに、だいくは えらく でっかい こえで、
 「おにろく!」と どなった。 すると おには、「きいたな!」と くやしそうに いうなり、ぽかっと きえて なくなってしまった。 

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4. 作者紹介
松居 直(まついただし)
1926年、京都市に生まれる。同志社大学を卒業後、福音館書店の創業に参画。編集部長、社長、会長を経て、現在相談役。主な絵本に『こぷじいさま』『ももたろう』(サンケイ児童出版文化賞受賞)『ぴかくんめをまわす』『山になった巨人』『桃源郷ものがたり』(以上福音館書店)、著書に『絵本とは何か』『絵本をみる眼』『絵本を読む』(以上日本エディタースクール出版部)、『絵本のよろこび』(NHK出版)などがある。東京在住。

赤羽末吉(あかばすえきち) 1910〜1990
東京に生まれた。1959年、日本童画会展で茂田井賞受賞。主な絵本に『ももたろう』(サンケイ児童出版文化賞)、『スーホの白い馬』(サンケイ児童出版文化賞、ブルックリン美術館絵本賞)、『かさじぞう』『こぶじいさま』『くわずにょうぼう』『ほしになったりゅうのきば』『つるにょうぼう』『したきりすずめ』『かちかちやま』『うまかたやまんば』『みるなのくら』『にぎりめしごろごろ』『おおきなおおきなおいも』(以上福音館書店)、さし絵に『日本の昔話(全5拳)』(福音舘書店)『白いりゅう黒いりゅう』(サンケイ児童出版文化賞、岩波書店)など多数。1980年、それまでの絵本の業績に対して、国際アンデルセン賞画家賞を受賞した。

5. 読後感
 この絵本はサンケイ児童出版文化賞大賞受賞作品だそうです。松居さんのすじと、赤羽さんの絵も素敵ですが、俵 万智さんが息子さんと交わす会話がとても良いと思います。こうやって小さなお子さんが、お母さんと楽しい会話を交わしながら育って行くのが、ほほえましく感じられます。ただ、読み聞かせるだけでなく、絵本を通じて親子が楽しみながら会話を交わすことが、大事なのだと思います。

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[Last updated 6/30/2009]