Web2.0


「Web2.0って何なの?」 ニッキイの大疑問

 今年(2006年)よく耳にした言葉ね。インターネットに関係あるってことぐらい分かるけど、具体的にどんなことを指すのかって言われると・・・・・・。

「Web2.0」時代が来たという。これまでとは何がどう違うのか。尽きない疑問を解消しようと、角張晃美さん(32)と宮島麻紀さん(36)が産業部の関口和一編集委員を訪れた。
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角張晃美さん 自動車メーカー系商社に勤務。円滑なコミュニケーション能力を身につけるのが目標で、最近はコーチングに関心を持っている。
宮島麻紀さん コンテナ輸送会社で貿易事務に携わる。新年をすてきに迎えようと、12月に入ってから掃除・片づけにはまっている。
 ■ニッキィとは 最近日経を読み始めた女性の愛称です。日本経済新聞社は毎週、経済通、世の中通を目指す女性読者を東京・大手町の本社に招き、その疑問にわかりやすく答える場を設けています。
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 ▼「Web2.0」ってそもそも何ですか。
 「Web(ウェブ)とは英語で『くもの巣』を表し、インターネットを指すことはご存じだと思います。ソフトウェアの世界では最初の第一版を『リリース1.0』、大幅に改訂した第二版を『2.0』と呼んでいます。Web2.0とはインターネット第二版、つまり『ネット革命の第二幕』という意味です」
 「米国でネット株バブルが崩壊した後、検索大手のグーグルが2004年夏に株式を上場、再びネット株に注目が集まりました。そうしたネット業界の復活に目をつけた米ハイテク出版社のティム・オライリー社長が『Web2.0会議』という集まりを開いてから、話題となったわけです」
▼「1.0」時代とは何が違うのですか。
 「まず情報発信の担い手が変わりました。ネットの普及で誰もが情報を発信できるようになっても、1.0時代はそれを活用していたのはメディアや企業でした。2.0時代になると個人や消費者が情報発信の主役となったのです。ブログや社交情報サービス(SNS)がそのいい例です」
 「また、情報が手元のパソコンではなく、サーバー側に蓄積され、必要に応じてアクセスすればよくなりました。米IT(情報技術)コンサルタントの梅田望夫さんの表現を借りれば『ネットのあちら側』の広がりです。グーグルが象徴ですが、サーバーや回線コストの劇的な下落がその背景にあります。梅田さんは『チープ革命』と呼んでいますが、無償基本ソフトの『リナックス』のようなオープンソース(公開仕様)ソフトの普及が価格の下落を可能にしました」
 「さらにサーバーに様々な情報が蓄積され、それをオープンにした結果、皆が情報を共有できるようになりました。クチコミサイトが典型ですが、そうした利用者参加型、情報共有型のサービスがWeb2.0の大きな特徴です。最近では『CGM(消費者生成メディア)』とも呼びます」
「もう一つ見逃せないのが『ロングテール現象』です。ネット上に様々な情報が蓄積されたことで、これまで流通市揚に乗らなかった商品や情報を検索し、提供できるようになりました。検索頻度の高い品目順にグラフ化すると、右下がりの長い曲線が描かれ、動物の尾のように見えることから名付けられました」
▼ 具体的にはどんな企業やサービスがWeb2.0に当たりますか。
 「先ほどのグーグルや米ネット通販の『アマゾン・ドットコム』が代表例です。グーグルはネット地図サービスも展開しています。地図情報を公開し、周辺の不動産や飲食店案内などに活用していますが、、互いのサーバーの情報を連携することで、複合的なコンテンツ(情報の内容)を簡単に構築できるのもWeb2.0の特徴です」
 「米国では動画共有サービスの『ユーチューブ』やSNSの『マイスペース』が人気を呼んでいます。日本には『ミクシィ』があります。いずれもWeb2.0の代表的なサービスだといえるでしょう」
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 ▼Web2.0で企業やサービスはどう変わるのでしょうか。
 「米マイクロソフトも最近、『ウィンドウズライブ』というネット上の情報検索サーピスを始めました。来年1月末に一般発売する次世代基本ソフトの『ウィンドウズ・ビスタ』もWeb2.0の新しい技術をふんだんに採用しています」
 「ビル・ゲイツ会長が08年の引退を表明し、ソフト開発責任者のポストを情報共有ソフトに強いレイ・オジー氏に譲ったのは、Web2.0対応が狙いだといわれます。ゲイツ氏といえども技術革新には逆らえなかったわげです」

 日本では最近、携帯電話の進化を「モバイル2.0」と呼ぶが、米国でも「2.0」の表現には「革新」という意味があり、「ビジネス2.0」という雑誌もある。つまり「Web2.0」は利用者の参加や情報共有を促すネットの新技術を総称した言葉だといえる。それを定義したのが米オライリーメディア社のティム・オライリー社長だ。
 同社長は1990年代前半に「グローバル・ネットワーク・ナビゲーター(GNN)」というネット情報サービスを展開、いわばヤフーやグーグルの先輩にあたる。だがパソコン通信からインターネットヘの転身を狙っていた米AOLに同事業を譲渡、今日のAOLのポータルサービスはそれがもとになっている。
 Web2.0の技術には、毎回クリックしなくても自動的に情報が更新される「Ajax」や、登録したサイトの情報を自動的に入手できる「RSS」、プログの書き込みを連携させる「トラックバック」といった技術などがある。こうした技術はオープンソースと同様、ネット上での技術者間の協力により進化してきたもので、まさにネット革命が次の革命を促したといえる。     (編集委員 関口和一)
(出典 日本経済新聞 2006.12.25夕刊)

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[Last Updated 12/31/2006]