6 ソール・トレーン
ジョン・コルトレーン


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  目 次

1 タイトル、曲名、演奏者
 CDのタイトルと収録された曲をご紹介します。
2 CDの紹介
 ライナーノートに載っている、ジョン・コルトレーンを始とする演奏者と、曲についての紹介です。
3 CDの聴き方
 「ジャズ完全入門 !」に載っている内容で、このCDの聴き方が判ります。

1 タイトルと曲名
SOULTRANE
JOHN COLTRANE
ソウルトレーン/ジョン・コルトレーン
1.グッド・ベイト
 GOOD BAIT(Dameron-Basic) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・12:01
2.アイ・ウォント・トゥ・トーク・アバウト・ユー
 I WANT TO TALK ABOUT YOU (Billy Eckstine)・10:48
3.ユー・セイ・ユー・ケア
 YOU SAY YOU CARE (Styne-Robin) ・・・・・・・・・・・・・6:12
4.テーマ・フォー・アーニー
 THEME FOR ERNIE (Fred Lacey) ・・・・・・・・・・・・・・4:53
5.ロシアの子守唄
 RUSSIAN LULLABY (Irving Berlin)・・・・・・・・・・・・・5:33
■ジョン・コルトレーン(ts)
■レッド・ガーランド(p)
■ポール・チェンバ-ス(b)
■アート・テイラー(ds)
1958年2月7日録音    VICJ-2153    MONO

GOOD BAIT/I WANT TO TALK ABOUT YOU/YOU SAY YOU CARE/THEME FOR ERNIE/RUSSIAN LULLABY
John Coltrane (ts)
Red Garland(p)
Paul Chambers (b)
Art Taylor (ds)
Recorded February 7, 1958
Original recordings Produced by Bob Weinstock
Original recordings engineered by Rudy Van Gelder
(Van Gelder Studios, Hackensack, New Jersey)
This album is remastered using 20bit A/D converter with K2

Mastering engineer: Tamaki Beck for JVC Studios

NOISE INFORMATION:
This recording is taken from the original analog 1950's source
material and therefore contains inherent tape flaws, such as
hiss, distortion, and analog dropouts.
These tape flaws become more evident on low level passages

このCDを制作するに当たっては、20bit K2スーパー・コーティングを用いてCD化致しました。

尚、この際に1950年代のアナログ・マスター・テープを使用しておりますので、アナログ・マスター・テープ固有のテープ・ヒス・ノイズ、歪み、ドロップアウトといった瑕を含んております。御了承下さい。

Prestige

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2 CDの紹介
第U期マスターズ・オブ・ジャズ〜ザ・ヒストリー・シリーズ スイングジャーナル誌選定ゴールドディスク

コルトレーン、プレスティッジ時代の最高傑作
 プレスティッジに残された、数多くのコルトレーンのアルバムの中で、 『ソウルトレーン』は疑いなく最高の出来栄えを示した一作である。もちろんコルトレーンのアルバムは、どれもが一聴に値するものばかりだが、それは彼の演奏スタイルが日々刻々と変化しているからであって、あくなき音楽探究の姿勢をそこに見ることができるからなのだ。たとえば、やはり名作と言われている『ラッシュ・ライフ』等には、 57年から58年にかけての3つのセッションが収められていて、短期間における彼の音楽的な変化を窺うことができるという点でも興味深いものだった。ただしアルバムとしての完成度という点では、 『ソウルトレーン』にかなわない。このアルバムは、 58年という時点におけるコルトレーンの音楽が、比類なき美しさをもって、 5つのトラックの隅々にまで結実している。ワン・ホーン・クアルテットという楽器編成も理想的で、まったく非の打ちどころのない作品となっているのである。録音データは、次のとおり。
●ジョン・コルトレーン(テナー・サックス)
●レッド・ガーランド(ピアノ)
●ポール・チェンパース(ベース)
●アート・ティラー(ドラムス)
1958年2月7日録音
(なおこの頃のコルトレーンのセッションは、いくつかのアルバムにまたがって収録されているケースが多いのだが、2月7日に演奏されたのはこの5曲だけで、この日の残り演奏というのはない)
  58年初頭と言えば、 一時コンボを解散してフランスヘ渡ったりしていたマイルス・デイビスが、再び自身のグループを結成して活動を始めた時期に当たっている。そしてコルトレーンももちろん、マイルスのグループに再加人するわけだが、前年(57年)セロニアス・モンクのもとで、あの"シーツ・オブ・サウンド"と呼ばれる独自の演奏スタイルをほぼ完成させたコルトレーンは、新しいマイルス・グループに加わって、さらなるステップを歩み始めたのである。それは言うまでもなく、既成のコードによるアドリブから一歩脱け出した、モード・ジャズへのアプローチなのだが、レコードの上でそれが現れるのは58年半ば以降のことで、それ以前のもの(たとえばこのアルバム)では、コードに基づいた自信に満ちた演奏が聴かれるのである。逆に言えば、コード分解によるめまぐるしいまでの細かいフレーズを吹き続けてゆく"シーツ・オブ・サウンド"は、この時点ですでに頂点に達しており、コルトレーンはすぐさま次なる歩みを始めたと言ってもよいであろう。一時たりともひとつ所に留まることのなかったコルトレーンなのだが、このアルバムが彼の音楽展開の"過程"に位置しながら、見事に完成されたバランスを保っているのは、そういう理由による。プレスティッジ時代における最高傑作と言うのも、このアルバムがコルトレーンの瞬時的なピークを捉えることに成功しているからなのである。
 コルトレーンは、同時期のテナー・ジャイアント、ソニー・ロリンズと比ベて、努力の人であると言われた。もちろんロリンズだって大変な努力の人には違いないが、いわゆる天才肌のロリンズに対して、コルトレーンはひたむきな努力型と、言うことはできると思う。それを裏づけるのが、プレスティッジに残された膨大なアルバムでもあるわけだが、とにかくユーモアやくつろぎに満ちたロリンズのプレイに比べて、コルトレーンの激しい吹奏ぶりから、デビュー当時の彼はよく"アンダリー・ヤング・テナー・マン"等と呼ばれたりしたものだ。それだけにコルトレーンのプレイには、 リラックスを感じさせるものはほとんどないのだが、このアルバムの1曲目など、自信に満ちた力強い吹奏の中に、コルトレーンとしては例外的なほどの、くつろぎやユーモアのセンスを見出すことができるのである。バックの好サポートもさることながら、これもおそらくコルトレーンが自己の演奏に自信をもったところから生まれてくる余裕なのであろう。
 ピアニスト、レッド・ガーランドは、コルトレーンとは第1期マイルス・クインテット時代からの仲間で、お互い気心はよく知れている。そしてガーランドもまた、 58年再編されたマイルス・コンボのレギュラーとして、再びコルトレーンと行動を共にしたのだった。それでなくともコルトレーンとガーランドは、多くのプレスティッジのアルバムで一緒に演奏してきた。ちなみに『トレーニング・イン』(57年8月23日録音)や『セティン・ザ・ペース』(58年3月26日録音)等のアルバムは、本ディスクとまったく同じパーソネルで固められているし、その他のアルバムでもサイドにガーランドが加わったものは、実に数多くある。また同じプレスティッジの『ディグ・イット』『オール・モーニング・ロング』『ソウル・ジャンクション』『ハイ・プレッシャー』等、ガーランド名義のアルバムでは、コルトレーンのほうがサイドマンとして、ガーランドと共演している。これらのアルバムでは、その性格上、演奏がガーランド・ペースで進められているものが多いわけだが、ともかくこうした共演の機会を得て、ふたりはお互いの音楽を完全に理解しつくしたのだ。決して進むべき方向が同じではないコルトレーンとガーランドだが、両者のコンビネーションは絶妙で、演奏にしばしばスリリングな瞬間を生み出していることは、アルバムをお聴きになる皆さんが感じられることであろう。こうしたコンビネーションの確かさは、他のふたりのサイドメンについてもまったく同様である。

演奏曲目について
グッド・ペイト
 タッド・ダメロンとカウントペイシーが、 1944年に共作した曲だが、ディジー・ガレスピー楽団の演奏などでも知られ、バップのスタンダード・ナンバーになっている。ミディアム・テンポに乗ってトレーンが、シンプルなテーマを歌い上げたあと、そのまま彼のアドリブに人る。トレーンは引き締まったトーンで細かいフレーズを吹いてゆくが、そこにはいつもの緊迫感とは違った、大らかな表情がある。シングル・トーンを中心にした、ガーランドのソロも印象的だ。次いでチェンパースのピチカート・ソロが挿まれ、コルトレーンとアート・ティラーとの2コーラスにわたる4小節交換を経て、後テーマに戻っている。

アイ・ウォント・トゥ・トーク・アバウト・ユー
 同じくバップ時代の曲で、バンド・リーダー親歌手のビリー・エクスタインが作曲したもの。エクスタイン楽団による演奏は、現在イギリスのスポットライト・レーベルから発売されている。ここでの演奏は、コルトレーン・バラードの典型とも言うべきもの。ただ甘く流れることなしに、あくまでも素材として彼自身の個性的な世界を描き尽くしてみせる。ガーランド、チェンパースのソロも、こうした雰囲気を少しも損なってはいない。なおこの曲は以後、 60年代にもずっと、コルトレーンの重要なレパートリーになっている。

ユー・セイ・ユー・ケア
 ジョー・スタイン〜レオ・ロビンのコンビによる作品だが、モダン・ジャズで演奏されるのは珍しい。ここではテーマの提示に続いて、やはりコルトレーンの躍動的なアドリブ・プレイが聴かれる。彼のソロはテクニックがあるのはもちろんだが、決してそれに溺れてはいない。ソロ構成にちゃんと山場を作り、言いたいことを簡潔に言い切っている.ここでもガーランドとチェンパースのソロがフイーチュアされる。

テーマ・フォー・アーニー
 フィラデルフィア生まれのフレツド・レイシーが、黒人アルト奏者、アーニー・ヘンリーに捧げたナンバー。ヘンリーはコルトレーンと前後して、ガレスピー楽団でアルト・サックスを吹いていたこともあるが、彼はその優れた才能を充分に聴かせることなく、57年12月にこの世を去ってしまっている。コルトレーンは哀調を帯びたメロディーを、ストレートに歌い上げているが、そこにはまぎれもないコルトレーンの世界が存在しているのである。

ロシアの子守唄
 アーヴイング・バーリンの曲で、マイナー・キーの親しみやすいメロディーは、デイキシーやスウイング・ジャズの素材としてもよく用いられている。荘重なガーランドのイントロに始まるここでの演奏は、一転して急速調に変わり、コルトレーンの激しい吹奏が聴かれる。"シーツ・オブ・サウンド"の典型とも呼ぶべき演奏で、抒情味を排したハードなプレイが素晴らしい。ガーランドのソロを経て、再びコルトレーンがテーマを奏するが、ラストのカデンツアによるエンディングも実に見事なものである。 [岡崎正通]

●本解説はLP発発売時のものを使用しております。
発売元:ビクターエンタテインメント株式会社              (出典 ライナー・ノート)

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3 CDの聴き方
 ジョン・コルトレーンのアルバムもまた、マイルスとは違った意味で 「最初の一枚」が難しい。彼の演奏はインパルス・レーベルになってからは一般に"重く"なっており、とくに後期になるほど、"しんどい"アルバムの比率が高くなる。だから入門編は、それ以前のアトランティック・レーベル、プレスティッジ・レーベル時代が望ましい。一般的にはアトランティック・レーベルの『マイ・フェイパリット・シングス』あたりがよく薦めめられるようだが、これもマイルス・デイヴイスの 「最初の一枚」 のところで書いたことが当てはまり、有名なタイトル曲を聴いだけで納得、の図式がちょっと心もとない。
 1950年代の半ばにマイルス・デイヴイス・クインテットに採用された頃のジョン・コルトレーンの演奏は、やる気のほどは窺えても少々ぎこちなかったり、演奏の方向を思いあぐねているようなところが散見された。それが一時マイルス・コンボを抜けて、ピアノのセロニアス・モンクのバンドで音楽理論の修行をしたあたりから目に見えて演奏がスムースになり、また自信も感じられるようになってきた。
 つまり自分のスタイルを確立させたということなのだが、このアルバムはちょうどその成果が結実した時期の傑作である。聴きどころは、コルトレーンが自信を持ってソロを進めているアービング・バーリン作曲の「ロシアの子守歌」での、空間を音で埋めつくすような「シーツ・オプ・サウンド」の典型的な演奏だ。バラバラと機関銃のように音符をまき散らしているようでいて、よく聴くと無駄な音が一音もなく、また嵌まるべきところに音が収まっているが、これはモンクの下で楽理を勉強した成果が現れているのだ。
 また、ピアニストのクツド・タメロンとカウント・ペイシーが作曲したほのぼのとした味わいの名曲「グツト・ベイト」も、テーマ(→用語解説)を吹き終わったあと、アドリブ・ソロ(→用語解説)に入ってからも堂々と確信を持って演奏を構築していくが、こういった堅固な構造物を思わせるようなコルトレーンのアドリブが、その場の成り行き任せのようなソニー・ロリンズのアドリブ・ラインとはまったく対照的であるところまで聴き取れるようになれば、あなたはもう相当ジャズのポイントが掴めたと言ってよい。
 このアルバムにはその後のコルトレーンの特徴すべてが含まれているので、じつくりと腰を据えてつき合うことによって、それがアトランティックに移籍してどのように発展していったのか、また、インパルス・レーベルではどう変化したのかといった彼の軌跡が正確に辿れるようになる。
 彼のテナー・サックスの音は他のテナーマンに比べてかなり特徴的なのだが、その少しばかり固めで引き締まった音色を完全に覚え込んでしまおう。そして、他のアルバムのサイドマンにコルトレーンが入っていても、ジャケットの表示を見ないでも確実にコルトレーンの演奏であると断言できるようになるまで彼の特徴を完全に頭に刷り込んでおこう。『キャノンボール・アダレイ・クインテット・イン・シカゴ』(Mercury)のところでも書いたが、こうした判じもののような聴き方もジャズの世界に馴染む大切な方法なのである。
 コルトレーンもまた時代によってスタイルを変えているが、二枚目のアルバムの選択肢も二つある。同系統の『ラッシュ・ライフ』(Prestige)でもう少し彼に馴染んでみるのもよし、また彼のその後の展開の成果であるアトランティックの 『ジャイアント・ステツプス』 に挑戦してみるのも悪くない。そして三枚目以降にはインパルスの、たとえば『ライブ・アツト・ザ・ヴイレッジ・ヴアンガード』といったアルバムでコルトレーンの到達点を自分のものとしよう。
   (出典 ジャズ完全入門 !)

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[Last Updated 2/28/2002]