15 コンコルド−モダン・ジャズ・クアルテット


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  目 次

1 タイトル、曲名、演奏者
 CDのタイトルと収録された曲をご紹介します。
2 CDの紹介
 ライナーノートに載っている、演奏グループのモダン・ジャズ・クァルテットと、曲についての紹介です。
3 CDの聴き方
 「ジャズ完全入門 !」に載っている内容で、このCDの聴き方が判ります。

1 タイトルと曲名
CONCORDE
THE MODERN JAZZ QUARTET
コンコルド/M.J.Q.

1.ラルフズ・ニュー・ブルース
 RALPH'S NEW BLUES (Milt Jackson)・・・・・・・・・・・・・7:09
2.オール・オプ・ユー
 ALL OF YOU (Cole Porter)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4:28
3.四月の想い出
 I'LL REMEMBER APRIL (Roye-DePaul)・・・・・・・・・・・5:06
4.ガーシュイン・メドレー:
 スーン
 フォー・ユー、フォー・ミー、フォーエヴァーモア
 ラヴ・ウォークト・イン
 アワ・ラヴ・イズ・ヒア・トゥ・ステイ
 GERSHWIN MEDLEY: (Gershwin-Gershwin)
 SOON;
 FOR YOU、 FOR ME、 FOREVERMORE;
 LOVE WALKED IN;
 OUR LOVE IS HERE TO STAY・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7:57
5.朝日のようにさわやかに
 SOFTLY、 AS IN A MORNING SUNRISE
(Hammerstein-Romberg) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7:55
6.コンコルド
 CONCORDE(John Lewis)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3:41

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モダン・ジャズ・クァルテット:
■ミルト・ジャクソン(vib)
■ジョン・ルイス(p)
■バーシー・ヒース(b)
■コニー・ケイ(ds)
1955年7月2日録音

THE MODERN JAZZ QUARTET:
Milt Jackson (vib)
John Lewis (p)
Percy Heath (b)
Connie Kay (ds)
Recorded July 2、 1955

このCDを制作するに当たっては、20bit K2スーパー・コーディングを用いてCD化致しました。
尚、この際に1950年代のアナログ・マスター・テープを使用しております

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2 CDの紹介
■M.J.Q.における『コンコルド』の位置
 プレスティツジにおけるM.J.Q.のレコードとして『ジャンゴ』とともに重要な作品が『コンコルド』である。『ジャンゴ』は三つのセッションを収めたもので、もともとは25cm盤2枚で発売されていたものを合体して1枚の30cmLPにまとめたもので、『コンコルド』こそM.J.Q.における初の30cmLPだったのである。したがって、アルバムとしての統一感もあり、アメリカで発売当時大きな話題になったものである。また、このアルバムから、ドラマーがケニー・クラークでなくコニー・ケイに代わっている点も注目されよう。
  M.J.Q.のLPもそうとうの枚数に達しているが、『コンコルド』は、初期の傑作として、 M.J.Q.を知るには欠かせないレコードで、吹き込みデータは次のようになっている。
 ジョン・ルイス(ピアノ)
 ミルト・ジャクソン(ヴァイブ)
 パーシー・ヒース(ベース)
 コニー・ケイ(ドラムス)
1955年7月2日録音。

 M.J.Q.は、ほかのジャズ・グループとはちょっと性格を異にしている。誕生したのは1952年の暮れで、この頃は黒人ジャズの不況期である。クール・ジャズから発展したウエスト・コースト・ジャズが起こり、どちらかといえば白人ジャズの盛んだった時代である。こういった時代を背景にしているので、 M.J.Q.にはやはりその時代を反映した性格がみられる。 1949年くらいからいわゆるクール・ジャズが起こり、マイルス・デイビスには有名な『クールの誕生』というアルバムがあるが、このセッションにジョン・ルイスはアレンジャーとして加わっている。つまり彼はクール・ジャズの洗礼も受けたミュージシャンだった。この頃生まれたコンボに、ヴァイブを加えたジョージ・シアリング・クインテットがあり、クール・コンボとして人気を集めた。そして、このクール時代や次の50年代はじめに起こったウエスト・コースト・ジャズでは、作・編他といおうか、グループ・サウンドが非常に尊ばれた。M.J.Q.はこういった時代を背景に生まれてきたので、 一種のさわやかなクールネスと、グループ・サウンドをもっていたのだともいえよう。
 ニューヨークで黒人ジャズが勢力を盛り返すのは、 1954〜55年頃からだが、 M.J.Q.は52年末に生まれており、黒人グループとしては、ユニークな先発隊だったわけである。したがって、 50年代中期に台頭したハード・バッパーたちとは違った性格の演奏となっている。

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  M.J.Q.の中心の人物は、いうまでもなくジョン・ルイスとミルト・ジャクソンであるが、この2人のうちどちらが欠けてもM.J.Q.は存続しえなかっただろう。 2人の共演から生まれる音楽こそM.J.Q.のエッセンスとなるものだからである。ベースとドラムスは万一代わってもM.J.Q.は成り立つだろう。事実、前身グループではベースはレイ・ブラウンであり、 M.J.Q.のオリジナル・メンバーではドラムはケニー・クラークであった。
  M.J.Q.のレパートリーにおいて、主として作・編曲を行なっているのも、ジョン・ルイスとミルト・ジャクソンである。 2人は無類のブルース好きで、その点でもうまが合う。しかし、このブルースをフォーク・ブルースのような生の形ではなく、知的な操作を経て、洗練された作品にまとめ上げている点にも注目したい。ヨーロッパの古典音楽の手法と香りを、ジャズと見事に融合させたジョン・ルイスのセンスは素晴しいと思う。どちらも犠牲にされることなく、ともに生かされているのである。ひと頃バロック・ジャズなるものが盛んになったが、その先駆者的作品をM.J.Q.のある種の演奏、たとえば『コンコルド』などの中に見出すことができる。それも既成の曲を使うのではなく、オリジナル作品の中で行なっている点に、ジョン・ルイスの独創性を感ずる。さらに、集合即興演奏、インタープレイ、グループ・エキスプレッションなどの点で、 M.J.Q.が今日のジャズに対して示唆したものは大きい。
 ところで、M.J.Q.のレギュラー・グループとしてのスタートは1952年末だが、その前身グループともいうべきものは、もっとさかのぼって発見することができる。M.J.Q.はもともとデイジー・ガレスピー楽団のリズム・セクションから生まれたものであり、 M.J.Q.のオリジナル・メンバーは、すべてガレスピー楽団の出身だったのである。たとえば、1946年にデイジー・ガレスピー・クインテットが演奏、録音した「ウープ・バップ・シュバム」「ザッツ・アール・プラザー」は、ミルト・ジャクソン(vib)、ジョン・ルイス(p)、レイ・ブラウン(b)、ケニー・クラーク(ds)というリズム・セクションと共演したもので、ここにM.J.Q.の原型を発見できる。ジョン・ルイスの回想では、M.J.Q.はこのレイ・ブラウンを加えた4人でほぼその形を整えていたという。ミルト・ジャクソンがガレスピーの経営するディー・ジー・レコードのために集めたレコーディング・コンボがこのクァルテットであり、その頃ベースはレイ・ブラウンだった。ジョン・ルイスは、この4人で演奏するのは無上の楽しみで、ほかのセッションとは違って、この4人で演奏すると、不思議な霊感に打たれ、精神的な統合が感じられたという。サヴォイから再発されたものには『ミルト・ミート・シッド』『D&E』(51年8月)などがあり、M.J.Q.的センスが感じられ、ブルーノートに移ると、レイ・ブラウンからパーシー・ヒースに代わり、 「リリー」「ホワッツ・ニュー」「ウイロー・ウィープ・フォー・ミー」の3曲が吹き込まれているが、メンバーはオリジナルM.J.Q.と同じで、演奏のパターンやコンセプションもレギュラーのM.J.Q.と近似している。ただ、ミルト・ジャクソン・クアルテットと称していたので、ミルト・ジャクソンが表面に強く出ているが、 「リリー」はM.J.Q.による「イエスタデイズ」の原型であり、 「ウイロー・ウィープ・フォー・ミー」はのちにM.J.Q.になってから、ほぼ同じ編曲で再演されており、この時のセッションはすでにM.J.Q.と呼んでもいいほどのものだ。
 この時代はミルト・ジャクソンのほうが人気が高く、ミルト・ジャクソンはやがてプレスティッジから誘われ、プレスティッジとリーダー契約することになるが、その契約に際しミルトは、是非ジョン・ルイスも俺の相棒として契約してくれと申し出て、プレスティッジでM.J.Q.が誕生することになったのであり、ミルトとルイスのお互いの信頼感の上にM.J.Q.は成立するのである。

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■曲目と演奏について
ラルフズ・ニュー・ブルース
 すでにモダン・ジャズのスタンダード・ナンバーとして広く演奏され、親しまれている名曲である。ジャズ評論家として著名で、ポップスにも興味をもち、ジェファーソン・エアプレインの発見者としても知られるラルフ・J・グリーソンに捧げられたミルト・ジャクソン作曲のブルースである。ジェリー・マリガンの『私は死にたくない』のテーマは、多分にこの曲がヒントになっているようだ。
 ジョン・ルイスのピアノとミルト・ジャクソンのヴァイブがフーガ風に、応答形式で進行するさわやかなブルース・テーマが印象的である。ソロはミルト、ルイスの順であらわれるが、ともにブルースを得意とするプレイヤーだけに、充実している。ジョン・ルイスは昔ブルースを好まないピアニストといわれたこともあるが、とんでもない話で、ブルースをもっとも得意とするピアニストである。このアルバムを飾る代表的な演奏である。
オール・オプ・ユー
 スタンダード・ナンバーである。 1954年にコール・ポーターがミュージカル『絹の靴下』のために書いた甘美なバラッドである。ここでは、ミルト・ジャクソンがリリカルなヴァイブ・プレイを展開する。ヴァイブレーションを生かしたきめの細かい、デリケートな表現が美しい。バラッドのうまいミルト・ジャクソンの魅力がよく出ている。室内楽風のしっとりしたムードが印象的だ。
四月の想い出
 ビ・バップ時代から50年代にかけて、モダン・ジャズメンが好んで採り上げたスタンダード・ナンバーである。1941年にドン・レイ、ジーン・デポールの2人が共作したメロディの美しい佳曲である。M.J.Q.はこの曲をじつは『ジャンゴ』の録音の時に一度吹き込んだのだが、この54年12月の吹き込みは、どういうわけか今日まで発売されていない。気に入らなかったのであろう。それで『コンコルド』の吹き込みに際し、再度演奏したものである。以前の吹き込みと比べようがないのは残念だが、ここでは思い切って早いテンポで処理している。ホットでスインギーな演奏には、バップを通過してきたジャズメンらしいプレイを発見できる。ミルト、ルイスのソロにつづき、 2人のかけ合いプレイもきかれる。コニー・ケイのシンバル・ワークも全編を通じて光っている。
ガーシュイン・メドレー
 M.J.Q.はほかのアルバムでもバラッド・メドレーを吹き込んでいるが、 M.J.Q.ではバラッド演奏が非常に重要な位置を占めている。
 ここでは幾多の名曲を書いているジョージ・ガーシュインの曲ばかりが4曲バラッド・メドレーとして演奏されている。演奏されるのは「スーン」「フォー・ユー、フォー・ミー、フォーエヴァーモア」「ラヴ・ウォークト・イン」「アワ・ラヴ・イズ・ヒア・トゥ・ステイ」の4曲である。
「スーン」は『ストライク・アップ・ザ・バンド』の中の曲で、ベースのパーシー・ヒースがメロディを導き出す。 「フォー・ユー、フォー・ミー、フォーエヴァーモア」では、半コーラスをジョン・ルイスがメロディを弾き、後半はミルト・ジャクソンが提示されたメロディに対して、カウンター・ラインをインプロヴァイズしていく。「ラブ・ウォークトイン」では、カノン形式でミルトとルイスによってメロディが前半の半コーラスで奏され、後半はミルトのソロとなる。「アワ・ラヴ・イズ・ヒア・トゥ・ステイ」はごくゆっくりしたテンポで演奏される。ルイスのピアノ・ソロが光っているし、ミルトのメロデイ・ラインに対して、ルイスがカウンター・ポイントしていくからみ方が絶妙である。

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朝日のようにさわやかに
「ラルフズ・ニュー・ブルース」 「コンコルド」とともにこのアルバム最大のききものになっている曲である。 1928年のミュージカル『ニュー・ムーン』のためにシグマンド・ロンバーグが書いた曲で、このミュージカルからは、もう1曲「恋人よ我に帰れ」というヒットも出ている。
  M.J.Q.のレパートリーの中でももっとも人気の高い曲の一つで、イントロダクションとエンディングで、バッハのカノンの技法を用いたアレンジメントも優雅でしゃれている。
 ミディアム・テンポのグルーヴィーな演奏で、リズムもよく、快適にスイングしている。ミルト・ジャクソンのヴァイブ、ジョン・ルイスのピアノもともにブルース・フィーリングを感じさせるソロで、 M.J.Q.の魅力を存分に発揮した演奏となっている。
コンコルド
 短い曲だが、音楽的にすぐれたジョン・ルイスのオリジナルである。ジョン・ルイスにはヨーロッパの古典や優雅なフランス的香気に対するあこがれのようなものがあって、いくつかのフランスにちなんだ曲を書いている。 「ジャンゴ」「ヴアンドーム」「ベルサイユ」などがそうだが、この曲は、コンコルド広場にちなんで書かれたものである。フーガの技法を採り入れた注目すべき作品で、 4人が一丸となってのグループ・インプロヴィゼーションは、スリルに富んでいるし、 M.J.Q.ならではの音楽的な演奏である。バランスのとれた演奏で、グループ・エキスプレツションとソロとの調和が美しい。のちに演奏された「ベルサイユ」は、同じテーマ、同じ曲想で書かれた曲である。                    [岩浪洋三]
●本解説はLP発売時のものを使用しております。             (出典 ライナー・ノート)

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3 CDの聴き方
「女子学院」という名門校がある。こういうネーミングは凄い。すなわち、この学校が出来たときは他に女の子の学校はなかったということだ。同じように図太いのがM.J.Q.「モダン・ジャズ・カルテット」だろう。ピアノのジョン・ルイス、ヴァイブのミルト・ジャクソン、ベースのパーシー・ヒース、そしてドラムスのケニー・クラークによるこのカルテットが結成された1952年当時、こういうジャズ・グループは他になかった。その後1955年にドラマーがコニー・ケイに変わるが、1974年に至るまで同じメンバー同じコンセプトを貫き、1981年には再結成され、文字通り「モダン・ジャズの四重奏団」の名にふさわしい活躍を続けた名コンボである。
 他にない、というところを具体的に説明すると、まず1940年代のハード・バップ・コンボは「チャーリー・パーカー・クインテット」などともっともらしい名前がついていても、その中身はパーカーを大将とした五人組以上の意味はなく、実際その構成メンバーはコロコロと変わっており、他のコンボも似たり寄ったりであった。それには理由があって、ビ・バップという音楽はリーダーのアドリブの切れ味が勝負なので、彼の演奏をバック・アップする能力のあるサイドマンなら臨時要員でも一向に構わなかった。
 それが単にリーダーのソロの個性だけで聴かせるのでなく、演奏全体を有機的なまとまりとして構成しようということになると、メンバー全員の意思統一というか音楽的な合意形成が必要になり、恒常的なグループが誕生し始める。これがハード・バップ・コンボ成立の必然性なのだが、その先駆けが彼らM.J.Q.なのである。
 またピアノとヴァイヴという組合せもユニークだ。どちらかと言うと似た傾向(共に打楽器)の音色なので、よほど工夫がないと音楽がモノトーンになりかねない。それにもかかわらず彼らのグループが長続きしたのには理由がある。実質的な音楽監督であるジョン・ルイスのクラシック的な発想と、ミルト・ジャクソンのソウルフル(黒人的と言ってもよい)なヴァイヴ・サウンドがうまくバランスして、実によく練られたM.J.Q.サウンドが誕生したのである。
 このアルバムはドラムスがコニー・ケイに変わったM.J.Q.の代表作であり、彼らの音楽的指向性が明確に現れた傑作である。すなわちジョン・ルイスによって緻密に練られた構成と各自のアドリブ・ソロが有機的に融合した、ハード・バップ的演奏の典型であると同時に、グループ・サウンドとしてのM.J.Q.カラーが確立された名演なのだ。
 聴きどころは、一聴、洗練されたヨーロッパ・サウンドのようでいて、その実本質的な部分で黒人的な要素が非常に色濃いところだ。もう少し説明すると、バロック音楽を思わせるような端正な全体のフォーマットやクールなサウンドはクラシック的かもしれないが、ミルト・ジャクソンのヴァイブにしろ、ジョン・ルイスのピアノにしろ、リズムに対してタメを利かせて(リズムに正確に合わせるのでなく、心もち後ろのほうにタイミングをずらして)乗っており、それがシンプルでいながら重厚な感覚を聴き手に与えている。
 演奏そのものについて言えば、どんな部分でもメンバー全員がお互いの出す音に正確に反応しており、とくに、ジョン・ルイスとミルト・ジャクソンの交歓を注意深く聴いてみると、その呼吸の合い具合は不気味なほどだ。世間ではイメージで彼らの音楽をスタティックなものと思い込んでいるようだが、たとえば「4月の思い出」の二人の強烈なからみを聴けば、このグループが屈指のハード・バップ・コンボであることを納得されるだろう。
                                     (出典 ジャズ完全入門 !)

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[Last Updated 6/30/2001]