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目 次
2 CDの紹介
1 タイトル、曲名、演奏者
CDのタイトルと収録された曲をご紹介します。
2 CDの紹介
ライナーノートに載っている、クリフォード・ブラウンを始とする演奏者と、曲についての紹介です。
3 CDの聴き方
「ジャズ完全入門 !」に載っている内容で、このCDの聴き方が判ります。
1 タイトルと曲名
クリフォード・ブラウン・アンド・マックス・ローチ+2 PHCE-4166
Cliflopd Brown and Max Roach+2
1.デライラ (8:04)
Delilah (Victor Young)
2.パリジャン・ソロウフェア (7:16)
Parisian Thorougfare (Bud Powell)
3.ザ・ブルース・ウォーク (6:44)
The Blues Walk (C. Brown)
4.ダフード (4:02)
Daahoud (C. Brown)
5.ジョイ・スプリンク (6:49)
Joy Spring (C. Brown)
6.ジョードゥ[edited version] (4:00)
Jordu (Duke Jordan)
7.ホワット・アム・アイ・ヒア・フォー(3:07)
What Am l Here For (Ellinton)
8.ジョイ・スプリング[alt. take] (6:44)
Joy Spring [alt. take] (C. Brown)
9.ダフード[alt. take] (4:06)
Daahoud [alt. take] (C. Brown)
クリフォード・ブラウン=マックス・ローチ・クインテッド
CLIFFORD BROWN=MAX ROACH Quintet:
クリフォード・ブラウン(tp)
CLIFFORD BROWN
ハロルド・ランド(ts)
HAROLD LAND
リッチー・パウエル(p)
RICHIE POWELL
ジョージ・モロウ(b)
GEORGE MORROW
マックス・ローチ(ds)
MAX ROACH
録音:
1954年8月2日(I,2)/L.A
1954年8月3日(6)/LA
1954年8月6日(4,5,8,9)/LA
1955年2月24日(3)/NY
1955年2月25日(7)/N.Y.
*オリジナルLPでは、 1〜3がSide-Aに、 4〜7がSide-Bに、それぞれ収録されております。
Original Sessions Produced by Bob Shad Reissue Produced by Klyoshi Koyama
Project Coordinated by David McDonagh
Technical Supervised by Suenori Fukui
Digital Transfer, Remastering + Editing: Kiyoshi Tokiwa
Reissue Planned by Yutaka Shinohara & Kaz Yanagida
Special Thanks to Wulf Mueller, David McDonagh, Michael Lang, lrene
Geerts, Vanessa De Fabrega, Time lord. DIGITAL SOLUTIONS & Hideyuki "Groovy"
Takiguchi.
ウエスト・コーストで旗揚げしたグループ
「1950年代の前半、ニューヨーク・ジャズ界は不況だったでしょう?」もう30年ほどの昔、マックス・ローチにきいたことがある。ローチはきっぱりと否定して「そんなことはない」と言ったが、人間渦中にいると客観的になれないものだ。
大戦後5年で起こった朝鮮戦争は、黒人ジャズメンを続々徴収し、太平洋側のロスを中心とするウエスト・コーストに繁栄をもたらしたが、ニューヨーク・ジャズ界には火が消えた様な不況が襲った。ミンガスは郵便局員に、ソニー・スティットは青写眞の技帥に、デューク・ジョーダンがタクシー・ドライヴァーになった世相が好況とは言われまい。
現にマックス・ローチは、シェリー・マンが抜けたハワード・ラムゼイ・ライトハウス・オール・スターズのドラマーとしてロスによばれ、数週間を過ごした。ウエスト・コースト・ジャズの全盛期で、ニューヨークに見られない活況をみたローチは、コンサート・プロモーターのジーン・ノーマンから「君自身のコンボをつくってロスで旗揚げしたまえ」と勧められ、いったんニューヨークに帰ると、クリフォード・ブラウン、ソニー・スティットを連れてロスに引き返した。ソニー・スティットは数週間このグループで働いたあと、ニューヨークに帰ってしまった。
テナー・サックスは一時テディ・エドワーズが入ったが、 54年8月、メンバーを一新してこのディスクのものをレギュラーとした。翌年、主導権を奪われたウエスト・コーストに巻き返しを計ったニューヨーク・ジャズ界に戻ったが、ロスに戻るハロルド・ランドの後任にジャズから離れてシカゴで肉体労働に従事していたソニー・ロリンズを入れてクリフォードが25歳で事故死するまでクリフォード・ブラウン〜マックス・ローチ・クインテットは、そのメンバーのまま継続したのであった。
1963年1月、ジャズ・メッセンジャーズのトランペッターとして初来日をしたフレディ・ハバードに「日本でトランペットの神様といわれているのはクリフォード・ブラウンだ」と言ったら、 「クリフォードは僕にとっても神様なのだ」という答えが即座に返ってきたことを思い出す。
またマックス・ローチはチャーリー・パーカーがアルト・サックスで試みたスイング・ビートの細分化に対応できる奏法を初めて作り出した点で、モダン・ジャズ・ドラムの開祖であった。
ハロルド・ランドはカリフォルニア州サンディエゴから、この年(54年)ロスに出てこのコンボでのプレイで一躍実力を認められたのであった。
ピアノの1)、リッチー・パウエルは天才バド・パウエルの実弟であり、ここに聴くようにすばらしいプレイヤーであった。
ベースのジョージ・モロウはこのグループ以降の消息が途絶えていたが、 75年初夏アニタ・オデイの伴奏コンボで来日している。
[演奏解説]
1.デライラ
あまりに印象深い名演なのでクリフォードのオリジナルと思っているファンも多いが、映画『サムソンとデリラ』(1949年・日本公開は52年)の主題歌としてヴィクター・ヤングが作りアカデミー主題歌賞にノミネートされた曲である。クリフォードはアンサンブルでミュート、ソロはオープンで吹く。ハロルド・ランド、リッチー・パウエルのソロもすぐれたものだ。ラストにマックス・ローチはマレットで華麗なソロをとり、ラスト・アンサンブルにわたしている。
2.パリジャン・ソロウフェア
バド・パウエルのオリジナル曲。演奏が喜々として楽しげなのは、パリが、アメリカで差別に苦しむ黒人たちにとって自由を満喫できる都会だからである。どことなくガーシュインの(パリのアメリカ人)を思わせるアンサンブルから、各人のソロ〜4小節交換と続く。
3.ザ・ブルース・ウォーク
この曲と7曲目は1955年2月にニューヨークで吹き込まれたものである。メンバーは変わらない。ソニー・スティットが作曲してルーストに吹き込んだ(Loose Walk)であるにもかかわらず、クリフォードのオリジナルとしたのはプロデューサー、ボブ・シャッドのしわざであろう。こんな間違いは口頭で曲名を聞いたときによく起こる。クリフォードはそんなことをやる男ではなかった。
演奏はクリフォードが参加していたころのジャズ・メッセンジャーズ(アート・プレイキー・クインテット)のスタイルを彷彿とさせる。
4.ダフード
これもクリフォードのオリジナル曲。曲名はアラビア語でDavid(人名)のことだそうだ。
5.ジョイ・スプリング
クリフォード・ブラウンのオリジナル曲。
ハロルド・ランドに続いてクリフォードが、そしてリッチー・パウエルも・‥…という風に全員がすばらしいソロをとる。まったく技量と若さが一体となったグループだ。
6.ジョードゥ
日本のファンにはなじみ深いデユーク・ジョーダンのオリジナル。そしてこの曲の決定的名演として知られるもの。クリフォードはもちろん、全員がすばらしいソロに終始する。
7.ホワット・アム・アイ・ヒア・フォー
誰もが指摘していることだが、このデユーク・エリントンの曲に対するテンポの設定は速すぎる。しかし、クリフォードといい、マックス・ローチといい、どんなスピードで演じても常に完璧であった。
なお、本CDシリーズ化に際し、 4曲目の(ダフード)と5曲目の(ジョイ・スプリング)の別テイクが、追加収録されている。
油井正一 (出典 ライナー・ノート)
3 CDの聴き方
美しいメロデイ、よい曲がそのまま名演となっているアルバムは、実はそう多いわけではない。実際は、取り立てて注目されていなかった曲が名演奏によって脚光を浴び、「名曲」に出世するのである。たとえば一曲目の「デリラ」は映画「サムソンとデリラ」の主題曲だが、それがあたかもジャズのために作曲されたナンバーのように聴こえてしまうのは、クリフォード・ブラウンの輝かしいソロのおかげなのだ。それほどジャズではミュージシヤンの力が重視されるのだが、このアルバムはそんな理屈を忘れさせるような気持ちよい演奏が並んでおり、入門者が自然にジャズに親しむのに最適のアルバムである。
ピアニスト、デューク・ジョーダンの陰影を帯びた名曲「ジョードゥ」をこれほど魅力的に演奏したアルバムがあったろうか。クリフォード・ブラウンのオリジナル曲「ジョィ・スプリング」の、全員が躍動するような若々しさ。「ダフード」の小気味よい勢い。この作品は、代表する一曲を選び出すのに苦労するほど出来のよい演奏がひしめいている。
アルバムの解説としてはこれで十分なような気もするが、もう少しその素晴らしさを噛み砕いて説明してみよう。たとえば同じトランペッターであるマイルス・デイヴイスの演奏は、細部にまで気を配った、かなり仕掛けの効いた彼の解釈が名演を生み出している。それに比べるとクリフォード・ブラウンはもっとストレートに吹いて、しかも名演奏なのだ。
もちろんブラウニーだってちゃんと効果を計算した演奏をやっているに違いないのだが、その跡があまり見えない。これは楽器演奏者としての彼の力量とも関わっている。音自体に説得力があるのだ。力と輝きを同時に備えている。だから彼が吹くとどんなフレーズも魅力的に聴こえてしまう。そして彼はまた天性のメロディ・メーカーでもある。彼のアドリブ・ラインはそのままで美しいメロディになっている。これはどちらがよいということではないが、いかにもジャズのアドリブらしい極端な音の跳躍を聴かせどころとするミュージシャンに対し、クリフォード・ブラウンのソロは、文字通り「即興的な作曲」という言い方が妥当するようなタイプなのである。
このことを違った角度から説明すると、アドリブ一発が勝負だった「ビ・バップ」に対し、元の曲のメロディや、曲想とアドリブの調和を考えたスタイルと言うことも出来る。そしてそれはハード・バップの定義そのものなのである。つまりクリフォード・ブラウン・マツクス・ローチ・クインテットは、マイルス・デイヴィス・クインテットと並んだ、典型的なハード・バップ・コンボなのだ。
このアルバムの聴きどころは、まず、なんといってもクリフォード・ブラウンの輝かしく流麗なトランペット・サウンドと、天性のメロディ感覚を堪能することだ。窓ガラスをビビらすような強烈なパワーを秘めていながら、それがちっとも耳障りにならないのは音色に厚みがあるからだ。また、ジャズのアドリブがよく飲み込めない初心者は彼の節回しをじっくりと聴くといいだろう。あらかじめ作曲された元のメロディとは違っているのだが、それが原曲と無関係というイメージを起こさせない。
もう一つのポイントは、音楽全体をマックス・ローチのドラムが確実に支えているところで、彼の正確なドラミングが演奏を安定した底固いものとしている。また聴き逃せないのがサイドマンの活躍で、テナー・サックスのハロルド・ランドは音楽の雰囲気を的確に捉えた個性的なよい演奏をしている。「デリラ」で、リーダーが出てくるまでにこの曲の陰影の利いたエキゾチックなムードを巧みに描き出しているのは、ハロルド・ランドの功績である。
(出典 ジャズ完全入門 !)
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[Last Updated 2/28/2002]