18  チャーリー・パーカー/フィエスタ


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  目 次

1 タイトル、曲名、演奏者
 CDのタイトルと収録された曲をご紹介します。
2 CDの紹介
 ライナーノートに載っている、演奏者チャーリー・パーカーと、曲についての紹介です。
3 CDの聴き方
 「ジャズ完全入門 !」に載っている内容で、このCDの聴き方が判ります。

1 タイトル、曲名、演奏者
CHARLIE PARKER AND HIS SOUTH OF THE BORDER ORCHESTRA/FIESTA
チャーリー・パーカー/フィエスタ

@ウン・ポキート・デ・卜ウ・アモール
  UN POQUITO DE TU AMOR
  (Unknown)

Aティコ・ティコ
  TICO TICO
  (Olieverla/Abreu)

Bフィエスタ
 (Traditional)

Cホワイ・ドゥ・アイ・ラヴ・ユー
  WHY DO I LOVE YOU
  (Kern/Hammerstein)
Dホワイ・ドゥ・アイ・ラヴ・ユー(別テイク)
   WHY DO I LOVE YOU (ALTERNATE TAKE)
  (Kern/Hammerstein)

Eホワイ・ドゥ・アイ・ラヴ・ユー(別テイク)
   WHY DO I LOVE YOU (ALTERNATE TAKE)
  (Kern /Hammersteln)

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Fママ・イネズ
 (Grenet/Gilbert)

Gラ・クカラチャ
  LA CUCURACHA
  (Traditional)

Hエストレリータ
  ESTRELLITA
  (Traditional)

Iビギン・ザ・ビギン
  BEGIN THE BEGUINE
  (Porter)

Jラ・パロマ
  LA PALOMA
  (Traditional)

Kマイ・リトル・スエード・シューズ
  MY LITTLE SUEDE SHOES
  (Parker)

〈バーソネル〉
*吹き込みデータは解説書内をご参照下さい。

チャーリー・パーカー(as)
ウォルター・ビショツプ(p)
テディ・コティック(b)
ロイ・ヘインズ(ds)
マチート楽団ほか

録音 1948、49、51、52年
原盤 Verve
日本盤/ポリドール

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2 CDの紹介
■チャーリー・パーカー唯一の異色作
 チャーリー・パーカーはヴァーヴ・レコードの全アーティストの中でノーマン・グランツからもっとも厚遇されたジャズマンだったのではないだろうか。
 '46年1月28日のJ.A.T.P.コンサートに初登場してから'54年12月10日に2曲録音の最後まで8年半の長期間に亙ってグランツと関わり続けたわけである。もしパーカーが55年3月12日にニュー∃ークで死亡しなければ、まだまだ続いたかもしれない。'46年から'49年までJ.A.T.P.のレギュラーとして活躍したがその間いくつものエピソードを残しており、そのプレイと共に貴重な記録となっている。'48年から専属としてグランツと交流を深め、様々な話題作を発表した。彼の録音で特に有名なのが"ダイアル・セッション"と"サヴォイ・セッション"だが、どちらも通常のコンボ・セッションである。ヴァーヴが前二者と異なるのはコンボはもとよりウイズ・ストリングス、ビッグ・バンド、ラテン、ジャム・セッションと色々な角度からパーカーの魅力を抽出したことである。この3大レーベルでパーカーの大部分を知ることが出来るわけだが、どういうわけか昔から"ダイアル" "サヴォイ"よリヴァーヴは落ちるという説がある。なるほどJ.A.T.P.での乗りの悪いプレイやウイズ・ストリングスでのコマーシャル化したイメージ、ラスト・レコーディングとなった「プレイズ・コール・ポーター」での過去の栄光を台無しにしたプレイ、等々の記録も現実として残っているがその面だけを捉えて良くないと片づけるのは性急ではないだろうか。 「ナウズ・ザ・タイム」や「スウェディッシュ・シュナップス」などのアルバムは決して前二者に引けをとらないものである。ストリングスとの共演でもマイ・ペースで俺の後からついて来い風のところなどいかにもパーカーらしい。また「プレイズ・コール・ポーター」でのアドリブのアイディアが浮かばず坦々とメロディーだけのプレイもまぎれもないパーカー自身の音なのである。ここにもパーカーの魅力があり、この一枚は筆者の好きな作品となっている。そして歴史上有名な一枚が「バード・アンド・ディズ」である。二卵性双生児といわれたディジー・ガレスピーとのコンビの録音は意外と少なく、おまけにピアノがセロニアス・モンクとくればこれは大変なセッションだ。残念なのはドラムスがバディ・リッチだったことで、よく聴けばリッチも意識して、より合わせようとした努力は買えるのだが、やはり、もしロイ・ヘインズかマックス・ローチだったらもっと違った作品になっていただろう。この様にヴァーヴの諸作は良しにつけ悪しにつけファンの話題を集めたのは間違いない。 '50年近くが過ぎようとしている今現在でもこの論争は決着をみていないのが何よりの証しである。

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 あのパーカーがノーマン・グランツに一目おいていたのはたしかである。パーカーの作になる本作Kの「マイ・リトル・スエード・シューズ」だが、これはグランツに捧げたもので当時グランツはいつもスエード靴を愛用していたことからつけられた。またこんな話もある。 '50年12月に録音されたマチート・オーケストラの録音はハリー・エディソンとフリップ・フイリップスをフィーチュアするはずだったのがラテン・リズムのバックでエディソンが立往生してしまい、仕方なくグランツの「パーカーを呼んでこい」の鶴の一声でパーカーがスッ飛んで来たという。そこでチコ・オファリルがスタジオで急遽譜面を書き直しほとんどリハーサル無しでやったそうでこの時チコ・オファリルはプレッシャーからかなりナーヴァスになったそうである。この録音は本シリーズの「マチート/アフロ・キューバン・ジャズ(POCJ-2774)」で聴くことが出来る。なんでもハリー・エディソンはとうとう最後までソロはとらせてもらえなかったそうだが、考えてみればハリーも気の毒な存在だった。コンセプトの違いは、はじめから,グランツもわかっていたろうに・・・・・・。なぜハリーだったのだろうか。ここはガレスピーですよ。いやハワード・マギーでもよかった。どうもグランツ氏、時々わからなくなることがある。
 ヴァーヴに於けるパーカーの一連の録音でたったひとつ残念なことがある。一曲だけでよいからアカペラ(無伴奏)を録ってほしかつた。コールマン・ホーキンスには有名な「ピカソ」があるのに……。
 さて本題に入ろう。表題に"チャーリー・パーカー唯一の異色作"としたのはLP一枚でラテンの名曲をパーカー流のラテン・ジャズとして作ったのが他に無いからである。正確にはもう一枚マチート・オーケストラでフィーチュアされたのがあるが、それは組曲であり本作と趣きを異にした作品である。この本作も発売当時はコマーシャル化したパーカーということであまり評価されなかったようである。G〜Jのようなポピュラーとなった曲を採用したのも一因があるようである。しかしあのパーカーが他ジャンルの曲をパーカーのジャズに作り直してしまったところに意味があり、素材は何であれジャズになるというジャズ音楽の最大の特異性を実証してみせたところに本作品の存在価値があるのである。
 今回CDとして単独にLPフォーマットで世界初登場ということになった。全12曲は次の内容で録音された。
● @ABCDEK
  CHARLIE PARKER'S JAZZERS
  Charlie Parker (as), Walter Bishop (p), Teddy Kotick (b), Roy Haynes (ds),
 Jose Manguel (bongo), Ralph Miranda (conga).
            NYC, March 12, 1951
●FGHIJ
  CHARLIE PARKER QUINTET
  Benny Harris (tp) (I out), Charie Parker (as), Walter Bishop (p), Teddy Kotick (b), Max Roach (ds), Ralph Miranda (conga), Prob. Jose Manguel (bongo)
           NYC, January 22, 1952

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 ビル・サイモン氏のライナーでパーソネルが紹介されているがいささか不正確である。最初のセッションでロイ・ヘインズが抜けている。また'52年のセッションでケニー・ドーハムが追加と記されているが、これが大ウソ、ベニー・ハリスが加わったのである。またドラムスはマックス・ローチでこれも抜けている。どうもヴァーヴというレーベルはこういう細かいところによくミスが目立つ。これもノーマン・グランツのおおまかな性格によるものだろうか。
 アルバム・タイトルの"FIESTA"とはスペイン系ラテン・アメリカの宗教的な祝祭、祭典を意味する。つまりこのアルバムはラテンの聖典ということになるのだろう。
@は本CDのレーベルでは作者不明となっているがキューバのJulio Gutierrezがスペイン語の詞と曲を作りペドロ・バルガスとマチートが1948年に録音したとNat Shapiro-BrucePolloca共著の「Popular Music, 1920-1979 A Revised Cumulatio」に記載がある。多分この曲であろう。Aブラジルの曲。英語詞をアーヴィン・ドレイク、ポルトガル詞をアロイシオ・オリヴェイラ、作曲はZequinha Abreuで'43年の映画"SALVDOS AMIGOS"でザビア・クガートがプレイした。現在ではサンバの古典としてブラジルの代表的な一曲である。Bはレーベルではトラッドとなっているが'31年にWalter SamuelとLeonard Whiteupか作ったと前記のポピューラー・ミュージックで一曲だけ登録されている。多分この曲がそうだと思うが未確認である。Cはジェローム・カーンとオスカー・ハマースタインの共作のスタンダード。27年作の古い曲でトミー・ドーシーやケニー・ドーハムが演っている。Fはキューバの曲で'31年に英詞をL. Wolfe Gilbert、曲をEliseo Grenetが作った。他にグラント・グリーンで聴ける。Gは、詞、曲共にHawley Aderが'16年に作ったとの記録もあるが一般には詞、曲とも不明とされている。短編映画「ラ・クカラチャ」の挿入歌。 ウディ・ハーマンに良いのがある。H'23年にマヌエル M.ポンセが書いた。ジミー・ランスフォードやインパルスにソニー・スティットが録音している。この曲もレーベルにはトラッドとなっている。I'35年にコール・ポーターが作った大スタンダード。'35年のミュージカル「ジュビリー」、 '46年の映画「夜も昼も」で使われた。アーティ・ショウで大ヒットしポピュラーとなつた。アーテイ・ショウは言っている。 「この曲は演るのが本当に嫌だった。毎日毎日こればっかりやらせられたよ」。Jはもっとも古い1877年にSebastian Yradierが作った。クロード・ソーンヒルがコロムビアへ録音したのが有名。ディーン・マーチンの歌もポピュラーだ。ラス卜のKは敬愛を込めてパーカーがノーマン・グランツに捧げた一曲だがシンプルなメロディーをパーカー独特の叙情性豊かなフレーズで思い入れたっぷりに歌いあげる。ラストにふさわしい印象に残る名演である。この曲の録音日には5曲が録られたが、実はこのKが最初で@ABCの順であった。どの曲もかなり多くのテイクが録られておりかなり苦労した様子が伺える。 '52年分も同順でやはリテイクは多い。
 ラテンの曲は比較的テンポは一定しており踊リやすいものだが、ビバップはもっと早い曲が多く踊りには適さない。バーカーがここではどの曲もメロディーを実に見事に歌い上げており聴けば聴くほど味が出るという愛すべき一枚であるとあえて言いたい。だがただひとつだけクレームをつけたい!?。それはラッパのベニー・ハリスだ。こんな三流使わなきゃもっとグレードがアップしたのに‥‥‥。
                 岡村 融

発売:ポリドール株式会社
販売:ユニバーサル ミュージック株式会社
 (出典 ライナー・ノート)

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3 CDの聴き方
 掛け値なしのジャズの天才チャーリー・パーカーの音楽に、「お勉強」でなく親しんでもらうにはどうしたらよいか。思案の挙句ポンと膝を打って出てきたのがこのアルバムだ。要は気軽に楽しんでもらえればよい。だったら自分自身がふだん気楽に聴いているこれでいいじゃあないか、というわけだ。つまりバーボン片手に、昼下がりの空に浮かぶ入道雲を眺めながらのBGMとしても一向に構わないような演奏でありながら、その気になってパーカーのフレーズに耳を寄せれば、直ちに至楽の境地に身を飛び立たせることができるのがこのアルバムのよいところである。
 中身は、いま流行(はや)りのラテン・ミュージックだ。ラテン・バンドのマチート楽団との共演(この演奏が一番凄い)や、チャーリー・パーカー・カルテットにボンゴやコンガを加えた演奏、クインテット、プラス、コンガなど、すべてラテン仕立てである。演奏曲目もラテン・ナンバーが中心なので、ジャズを初めて聴く方でもごく自然に聴けるだろう。
 アルバムを購入されたら、アドリブがどう、パーカーのソロがどうした‥‥‥はいいから、とにかくのんびりと楽しんでいただきたい。「エストレリータ」「ビギン・ザ・ビギン」などいい曲が並んでいるので、ポピュラー・ミュージックを楽しむ要領で普通に聴いていただけると思う。
 話は脇道にそれるが、ジャズという音楽はそれこそスルメの足のように噛めば噛むほどに味が出るもので、よい演奏は回数を重ねるほどに味が出てくる。だからこのアルバムも理屈抜きに聴いているうちに次第に味が増してくるはずだ。
 余計なお世話かもしれないがその道筋を措いてみれば、まず、ノー天気なボンゴ、コンガの楽天リズムの中から、パーカーのアルト・サウンドが、とくに音量をあげたわけでもないのに実在感を増し、まるでその音だけがポリュウムを上げたようにしっかりと耳についてくるようになる。これがステージ1。
 セカンド・ステージになると、パーカーのサックスが所々で異様な飛躍というか、何やら怪しげな、メロディとはちょっと違った節回しをハイ・スピードで捻り出すところが気になってくる。この段階はけっこう続いて、始めはなんだなんだと思いつつ、とくに耳障りでもないのでやり過ごすうち、ある日突如という感じでその部分が気持ちよく感じるよ、つになる。
 ハイ、出来上がり。これであなたは完全なジャズ中毒患者だ。あなたが気持ちいいと感じたところが「アドリブ」という奴なのだ。こうなってしまうと曲目云々より、その気持ちのいいところにしか耳が行かなくなってしまい、その部分がよりアナーキーにプッ飛んでるアルバムヘとジャズ渉猟の旅が始まる。ご安心あれ、パーカーのアドリブの凄みで言えば、これはまだほんの序の口で、「ダイアル」 「サヴォイ」と、極楽へと続く道の先にはいくらでも宝の山がある。
 彼のアルト・サウンドには特有のコシの強さと、得も言われぬ存在感があるのだが、それはこうしたポピュラー・ナンバーでも、いやポップスだからこそ余計に、何気ない節回しにポピュラー・ミュージシャンにはない力強さが感じられるのだ。そしてアドリブのスピード感にも注目していただきたい。始終速めに演奏しているのでなく、ここぞというときに気合いを込めてフレーズを押し出すので、聴き手はとてつもないスリルを味わうことができる。また、明るいはずのメロディを吹いたときに心ならずもという感じで漂う、哀感というかアナーキーな無常観は、パーカー晩年の特徴でもある。
 (出典 ジャズ完全入門 !)

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[Last Updated 3/31/2002]