本の紹介  太平洋戦争の読み方


奥宮 正武(おくみや まさたけ)著
 1993.3 (東洋経済新報社)

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1 まえおき
 NMCの「歴史に学ぶ会」では中央公論社の「日本の歴史」(井上 光貞ほか企画、全26巻別巻5巻)を毎月1回輪講している。江戸時代、明治維新、大正時代と勉強してきて昨年から第25巻の「太平洋戦争」に入った。98.11月は私がスピーカーで参考書として取り上げたのが本書である。この本を取り上げた理由は次のとおりである。
 1) たまたま時代が一致している。
 2) 筆者が主題に合った経歴の持ち主である。
 3) 取り上げられている「失敗の本質」はNMCの例会で筆者から講演のあった本で特に興味があった。

2 著者略歴
  1909年 生まれ
  1930年 海兵卒
  1933年 飛行学生教程終了
  1942〜44年 アリューシャン・ミッドウエイ作戦、南太平洋海戦、ガダルカナル・ソロモン方面作戦
      マリアナ沖海戦等に参加
  1944〜45年 大本営海軍参謀
  第二次世界大戦後 復員省史実調査部部員
  退職後も戦史の研究に従事
  1954年 航空自衛隊入隊、統合幕僚会議事務局、防衛研究所に勤務
      学校長、部隊長等を歴任、退職時空将
  現在  PHP研究所研究顧問
  [主な著書]
  「ミッドウウエー」「機動部隊」「零戦」(共著、朝日ソノラマ、それらは米・英・仏・独・
   スペイン・ポルトガル・ロシア語等に翻訳されている)
  「太平洋戦争と十人の提督」「ラバウル海軍航空隊」「退官巨砲主義の盛衰」
  「真実の太平洋戦争」「平和と戦争の研究」等多数    

3 概 要
 太平洋戦争の戦記としては防衛庁防衛研修所(現研究所)戦史室が編集した「戦史叢書」がもっとも信用される。しかし、この戦史は次の二つの点から戦争の全貌を伝えていない。
1. 多くの人が分担執筆したため、統一した歴史観に基づいていない。
2. 総計102巻におよぶ大作が年代に関係なく編纂され、できたものから公刊されている。
 そこで著者は第一部で、戦史を読むさいに参考となる予備知識を述べている。
 つづいて第二部では戦史叢書中、戦争の大きな流れに対応する海軍関係の巻を、年代順に取り上げて、読み方についての著者の私見を述べている。
 第三部では野中郁次郎氏ほかが執筆した「失敗の本質」を取り上げて、その読み方についての述べている。
 読み方の例としては「南東方面海軍作戦(2)−ガ島撤収まで−」(第八三回配本)の項では、ガダルカナル作戦で、わが陸海軍部隊が異常な苦戦に陥った最大の理由として、ラバウルから遠く離れたところにポツンと飛行場を作ったこと、戦陣訓の存在のほか、次の6項目を重要な項目としてあげている。
1) わが陸海軍に水陸両用作戦の思想がなかった
2) わが陸海軍が統合作戦部隊を作れなかった
3) わが国力が米国にくらべて、かくだんにおとっていた
4) 海上輸送力の不足
5) 陸軍航空部隊が米軍にくらべて著しく劣っていた
6) 防疫対策の不備
 なお詳細については原著をご一読願いたい。

4 目 次

まえがき
第一部 必要な予備知識 …………………………………………… 1
 第一章 戦争とは?
 第二章 日本の戦争指導機構の特異性
 第三章 戦陣訓が与えた深刻な影響
 第四章 『戦史叢書』編纂時の事情
第二部 『戦史叢書』の問題点 …………………………………… 41
 第一章 緒戦の大勝の時期
  一 「ハワイ作戦」 (第一〇回配本)
  二 「比島マレー方面海軍進攻作戦」(第二四回配本)
  三 「蘭印・ベンガル湾方面海軍進攻作戦」(第二六回配本)
 第二章 互角の作戦の時期 ……………………………………… 63
  一 「南東方面海軍作戦(1)」(第四九回配本)
  二 「ミッドウェー海戦」(第四三回配本)
  三 「南東方面海軍作戦(2)−ガ島撤収まで」(第八三回配本)
 第三章 防戦一方の時期
  一 「南東方面海軍作戦(3)−ガ島撤収後−」(第九六回配本)
  二 「中部太平洋方面海軍作戦(2)(第六二回配本)
  三 「マリアナ沖海戦」(第一二回配本)
 第四章 絶望の戦いの時期 ……………………………………… 133
  一 「海軍捷号作戦(2)−フィリピン沖海戦−」(第五六回配本)
  二 「本土方面海軍作戦(前半)」(第八五回配本)
  三 「沖縄方面海軍作戦」(第一七回配本)
  四 「本土方面海軍作戦(後半)」(第八五回配本)
第三部 『失敗の本質』 の問題点 ………………………………179
     本書の紹介
 序 章 「日本軍の失敗から何を学ぶか」
 第一章 「失敗の事例研究」
  一 「ノモンハン事件−失敗の序曲」
  二 「ミッドウエー作戦−海戦のターニング・ポイント」
  三 「ガダルカナル作戦−陸戦のターニング・ポイント」
  四 「インパール作戦−賭の失敗」
  五 「レイテ海戦−自己認識の失敗」
  六 「沖縄戦−終局段階での失敗」
 第二章 「失敗の本質−戦略・組織における日本軍の失敗の分析」
 第三章 「失敗の教訓−日本軍の失敗の本質と今日的課題」

結 び 戦史の総合的な読み方 ……………………………………261
  太平洋戦争の主要戦域概図

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[Last updated 10/31/2001]