伝達力



 6月25日のTBS「情熱大陸」は、美術作家・奈良美智。展覧会のようすや自宅兼アトリエで実際に絵を描いているところとかを映していた。

 五木寛之『不安の力』のカバー作品がとても印象に残っていたのだが、「みち」と読んでいたので、男だとは思わなかった。

 その「よしとも」と鶴見俊輔の対談(「美術手帳」2001年12月号)を放送前に読んだばかりだったので、再読してみた。

 方言について語っている。
語数はすごい少ないんだけれども、ひとつの同じ言葉でたくさんの意味を表現できるというか、それが標準語と比べてちがうところだな、とはいつも思うんですよ。同じ言葉なんだけれども、微妙なニュアンスのちがいを同じ言葉でいっぱい表現できる。(p189)
 それを受けて鶴見は、知識人を「知ったかぶりしない人」と定義する。よく掴んでいる言葉しか使わない語彙の少ない系統の人たち、志賀直哉、藤枝静男、小川国夫、バーナード・リーチがそれにあたる。

 番組では、吉本ばななに「彼から絵をとったら何も残らない」なんて言われてしまった奈良だが、旅先では山奥ばかりを歩き回っている。少女ばかり描いている奈良だが、あぶないおじさんと芸術家の境はどこにあるのだろう。外国でことばが通じなくても、絵を描けば子どもたちとコミュニケーションできてしまう奈良がうらやましい。

 『未来におきたいものは』では、大江健三郎、加藤典洋赤瀬川原平橋本治、横尾忠則とも対談している。
(2006-07-03)