図書館の棚を磨こう



 図書館の書棚の前に立つと、本をぶちまけたくなることがある。つまらない本ばかり並んでいて、腹がたつのだ。

 津野海太郎は『だれのための電子図書館?』の中で、公共図書館について次のように述べている。
私は、公共図書館が、しばしば小説よりもすぐれたマンガを、それが小説でなくマンガであるという理由だけで排除してしまうのは困ったことだと思っている。地域図書館の人たちが、いま国立国会図書館などを中心にすすめられている図書館電子化、ネットワーク化の動きに無関心すぎるのはちょっとまずいんじゃないの、とも感じている。
 マンガの話を書いてから2年たつのに、状況はちっとも改善されていない。やる気あるの?、と聞きたくなる。
そのくせ、とっくに使いものにならなくなった古いコンピュータ・ソフトの入門書などを、何十冊も開架式書棚に押し込んだままにしているんだからなあ。
 自分の感性に自信のある赤木かん子は、図書館についても詳しい。図書館の日常作業とは、
・新しいものをチェックして入れ、
・いらなくなったものは抜いて、棚を磨き、
・なくなったものは補充する
 ことであると教えてくれる。さらに、
本を選んで買うときの図書館の仕事というのは、デパートやブティックの仕入れ担当と同じです。どんなレベルの品物をどれくらい仕入れるかで、店の品ぞろえも雰囲気も違ってくるでしょう?(中略)図書館員というのは本を仕入れて本棚を作る人たちなんです。
 そう、その棚が問題なんだ。
図書館の棚って、バランス、ですもんね。(中略)最先端から中堅健全路線までバランスよくそろえて、知的、かつ豊かな棚をつくると、その前に立ったとき、心がのびやかに、嬉々として安らぐのがわかるでしょう?図書館は人を解放し、知的な好奇心を満たしてくれるところです。
 私も、棚の前に立って心のびやかに安らいでみたい。

 『図書館であそぼう』を書いた翻訳家の辻さんは、多くの図書館関係者に取材している。パリの市立図書館の人は、次のように語る。
たまにしか利用されず、各図書館では購入しにくい本を、この中央書庫で買ってはどうかと考えています。出版界も不況でそうした本はすぐ絶版になって入手がむずかしくなるからなおさらです。出版部数が限られた分野をささえるのも図書館のひとつの役割ですから。
 小さな図書館だって、きっちりとした品ぞろえをすれば、それは小さな出版社の本を買い支えることにもなる。なにしろ日本には2500もの公立図書館があるのだから。でも図書館の事情に詳しい人の話によると、図書館員には選書能力がないそうだ。

 行きつけの図書館を見ると、設備と人件費にお金を使いすぎて、肝心の蔵書にお金がまわっていないように思う。これからは図書館のリストラが必要なのかもしれない。
(2001-07-06)
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