隠れマンガファン



 わたしは、マンガが好きである。しかしふだんはまったく読まなかった。なぜならマンガを買えないからである。とくに雑誌はだめ。我が家では禁令が出ていたから。

 昔は、1種類だけ月刊誌を買っていた。創刊号からほとんど欠号なしで持っていたのだが、引っ越しとともに廃棄処分となった。だれももらい手がいなかったからだ。それ以来禁令が出てしまって、マンガが読めなくなった。

 ところが1年前『ガラスの仮面』により禁令は破られた。怒涛のように全巻読破し、今もすべてがていねいに保存されている。

 とはいっても開国されているわけではないので、雑誌は買えない。しかたがないので古本屋で100円とか150円のマンガを買ってきては読んでいる。連載ものは続いていないし、本もきれいではない。中身が大切なのだから気にしない。

 もともとかつて読んでいたといっても、月刊雑誌というひとつの窓を通して、限られた世界のをのぞいていたので、マンガという広い世界のことは何も知らないのが実状だ。とりあえず今は大家の代表作を中心に楽しんでいる。

 最近はマンガを置く図書館も増えたけど、その蔵書は貧弱極まりない。さすが文化果つる極東の国だけのことはある。小説の棚を1/3くらい削ってでもマンガを置くべきだ。図書館は税金で運営されていることを忘れてもらっては困る。

 というわけで手にしたのが、『漫画の時間』という評論集である。著者のいしかわじゅんは、れっきとした漫画家である。それゆえにか取り上げている作品は、ほとんど知らないものばかり。マンガってこんなにいろいろあるんだ、と見せつけられ圧倒される。

 中身はわたしでも分かるくらい質が高い。座布団1枚じゃぜんぜん足りない。出版文化賞でもあげたい。こういう本を出し渋った晶文社の担当編集者A嬢は、大バカ者である。マンガはどんどん新しく生まれてくる。それをまったくフォローできない私は、この本以降の論評が読みたい。いしかわさん、お願いだからホームページで公開してくださいな。
  • 漫画の時間 いしかわじゅん 晶文社 1995 NDC726.1
     いしかわじゅんは、NHKテレビ「BSマンガ夜話」のレギュラーでもある。
(1999-06-14)
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