人生に目的が必要だろうか五木寛之の「人生の目的」が発売2週間で30万部が売れたという。この本はまだ読んでいないが、おそらく「夜明けを待ちながら」と似た内容と思われるので、こちらを紹介しよう。 五木氏の主張は、はっきりしている。 友達に期待するな、恋人に期待するな、学校の先生に期待するな、親にも期待するな、社会にも期待するな、国家にも期待するな、人間はひとりで老いていき、そして死んでいく存在なのである、この人生は束の間である、ということ覚悟せよ。まったくプラス思考とは反対の本である。各章の見出しを見ても、自殺について、生きる意味、悲しみの効用、自己責任、覚悟ということ、....くらーくなるような話題ばかりである。これまでは生きるためのヒントを述べていた五木氏が、これだけはっきりものを言うのは、やはり自分自身晩年にさしかかり、今言っておかねばならないという切迫感を感じているからに違いない。 グローバル・スタンダードを強制され、強いものが勝つという市場原理の世界に投げ込まれたとき、頼りになるものは何もない。すべての行動は、自己責任のもとに決断しなければならない。こんな主張を聞くと、私は同志を得たような気がする。反面ここまで悲観的になりたくはないとも思う。 かつて『風の王国』で見せたような結社への期待を、まったく忘れてしまったかのようである。夫婦というものにいまだ信頼を寄せている私は、五木氏に甘いと言われてしまうのだろうか。 ついでに作家相手の対談集『風の対話』も読んでみた。「山人は骨、里人は肉、浪民は血、..」なんていう話のほうがのどかで、私の好みである。
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