読んで楽しい人生訓



 ものはついでと思って本を読んだら、ちょっと困ってしまった。その本とは、『楽しく生きるのに努力はいらない』のこと。これは前著『正しく生きるとはどういうことか』を、生きるためのヒント集として使えるように、より分かりやすく書き直した本だ。前半を読んでいると、自分の書いた文章を読んでいるような錯覚に陥ってしまった。あまりにも似ているのだ。文体といい、内容といい。これは困ったとしか言いようがない。

 たとえば「人生に目的など本当はない」というタイトルから、梅棹忠夫の『私の生きがい論』や五木寛之の『人生の目的』を連想する。

 この本は二部構成になっていて、第1部は自分自身の身の処し方についての話、第2部は他人とつきあう方法についての話だ。第1部の基本的な考えは、気ままで上品に生きよう、である。著者の言う上品に生きるとは、自分自身の楽しみ・欲望を徹底的に追及しながらも、自分が社会の中のひとりに過ぎないことを明晰に意識している生き方のことである。だから「臓器移植は下品である」という表現が出てくるわけだ。第2部は、「もくじ」ページの「人間(じんかん)」の項目に当たる。

 50項目もの文章を読んでいると、さすがにちょっとあきてくる。しかしこの本の目次はとてもよくできていて、各項目のタイトルで結論をずばりと述べ、その脇にキーセンテンスが書いてある。だから目次だけを読めば、本全体の要旨がだいたい分かり、気に入ったところだけ読むというやり方ができるようになっている。これは本当に親切。きっと読者のレベルに合わせた編集法なのだろう。

  • 楽しく生きるのに努力はいらない 元気がわき出る50のヒント 池田清彦 サンマーク出版 1999 NDC159 \1600+tax
(2000-08-11)
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