Speak about Speech: Shuno の方言千夜一夜
第122夜
県都
もうちょっと、土地絡みの話。
「駅裏」という単語はどこの地域にもあると思う。駅の出入り口が 1 つしかないと、そ
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こを起点に町が発展していくから、出入り口のない方が相対的に寂しくなってしまうのは
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当然である。
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秋田駅も長らくそうだったのだが、昨年、秋田新幹線「こまち」の開通に時期を合わせ
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て橋上駅に改装した。
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とは言いながら、駅ビルにあったデパートは以前のままの位置、つまり「表側」に建っ
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ているし、「駅裏」であった方の出入り口にはトイレがないし、駐車場から改札口までは
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遠回りだし (*1)、「駅裏」からまっすぐ、片道 1 車線対面交通の高速秋田道につながる
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片道 2 車線の道が整備されたりして、あいかわらず、やることがちょいとチグハグだ。
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今、そっち側は「駅東地区」と呼ばれている。
城があれば、「城南」「城北」という表現もあろう。秋田市にも城南中学校と城東中学
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校がある。西と北のはないが。
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仮面ライダー本郷猛は城南大学の研究者であった。
さて、こんなような、地域ネタの文章を入力していて困ることがある。
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秋田県は、大きく、北部・南部・中央の3つにわけることができる。中央は、男鹿から
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秋田市、由利本荘にかけての海岸部をさし、北部は北半分、南部は南半分というわけ
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だ。なお、郡境界に左右されるので、田沢湖付近は南部に分類される。
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これを「県北 (けんぽく)」「県南 (けんなん)」と呼ぶのだが、これが仮名漢字変換プ
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ログラムの辞書に登録されていない。
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「けんほく」だけはあったりするのが不思議である。どこで使われているのか、ご存じ
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の方は教えて欲しい。
これがちょっと前に、NIFTY-SERVE の日本語フォーラムで話題になった。
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いろんな呼び方があるらしい。
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青森は、津軽と南部 (*2) にわかれる。山形は、庄内・置賜・村山・最上である。これが
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一例。封建時代に複数の藩であった地域を一つにまとめて県とした場合であろう。
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香川などは、東讃・西讃だそうだ。1県 = 1藩だとこうなるのだろう。京都の、洛北・洛
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南もこの部類か。
「県東」「県西」という呼び方は、どうもないらしい。
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旧国名や藩名の意識が失われていて、かつ、東西に長い県でなくてはならないのだと考
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えられるが、そういうのがないわけだ。
もうひとつが「県都」。
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辞書的な意味合いとしては県庁所在地であるが、ちょっとニュアンスが違う。県の顔・
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中心地ということである。秋田市は今後どうあるべきか、というような議論をするときに
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使われることが多い。
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これが、それほど使われていないらしい。もちろん、辞書にもない。
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また青森と山形の話をすると、例えば、青森・弘前・八戸、あるいは鶴岡・山形・米沢・
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新庄というように、県内に多数の都市を抱えている。そこが、県庁所在地こそ人口 30 万
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人だが、他の市は 10 万に届かないという秋田県とは違う。「総合的な県の中心」という
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概念が成立しにくいわけだ。岩手では「県都」という表現を使うそうだから、納得である。
まぁ、ちょっと方言とはくくりにくい話題ではあったが、地域に依存する表現なので、方
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言と言ってしまってもよかろう。
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土地の言葉であるだけに、地域のあり方とも密接に関係している、ということである。
*1:東側 (旧駅裏) の駐車場からダイレクトに上がれる階段があるが、これは、西側 (旧
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駅表) への連絡通路であって、みどりの窓口などがある正面口には直結していないの
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である。券売機しかない、小さな改札口ならある。
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*2:これは「南部氏の領地」であって、南半分という意味ではない。アクセントも
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「なんぶ」であって、南半分の「なんぶ」とは違う。
参考:
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青:県北
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赤:中央
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黄:県南
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