Speak about Speech: Shuno の方言千夜一夜
第103夜
どってことないっす
今回のテーマは「接続助詞」。難しくはないのでご心配なく。
トップバッターは「どって」。
コーヒー飲むどってお湯沸がすど思ったっけ工事中でガス止まったった
コーヒーを飲もうとして、お湯を沸かそうとしたら、工事中でガスが止まっていた
「どって」は、「〜しようとして」「〜するつもりで」「〜するために」ということである。
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疑問形にするには「が」をつければよい。これは「か」の訛り。
汽車でねくて車で行ぐ? 荷物運ぶどってが?
列車じゃなくて車で行く? 荷物を運ぶためか?
元の形は「〜と思って」だったりするかもしれない。思いっきり短縮すると「どって」
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になりそうな気がする。尤も、これも思いつきであって、なんの根拠もない。
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「ど」を無声音にすると一層、秋田弁らしい。
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そのせいか、希に「ど」が脱落した形が観察されることがある。「コーヒー飲むって」
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「荷物運ぶってが」となるわけだが、これが本当に「ど」の脱落なのか、別の語なの
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かは不明。希なだけに難しいところ。
次鋒は「ごで」。「ご」は鼻濁音ではない。思いっ切り濁って欲しい。
A:へば、この話、12月まで凍結だんだすべが
じゃ、この話は12月まで凍結なんでしょうか
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B:んだごでな
そうらしいな
この「ごで」は推測の意味を持つ。
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Bには確たる根拠はないので確信が持てない。意味に忠実に訳すなら「そういうこと
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になるんだろうなぁ」とでもなろうか。状況証拠だけで推測しているという感じである。妥
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当な理由があっての推測であれば「んだべな」「んだな」となるように思う。
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こんな使い方もある:
A:あれ、むげのあんちゃ、まだ出がげるどごだね
あら、向かいのお兄さん、また出かけるところだわ
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B:まだ飲みに行ぐあんだごで
また飲みに行くんでしょうねぇ
こっちの例では、ちょっと非難がましく「どうせ酒でしょう」というような含みが感じられ
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る。これは例文がそうなっている、というだけのことで、「ごで」自体にが持っているニュ
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アンスではない。ただし、軽蔑したような場面で使われることが多いのは事実である。
A:あい〜、あんた下着みでった かっこして
おやまぁ、あんな下着みたいな恰好をして
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B:あいで オシャレなんだごでなぁ
あれでオシャレなんでしょうねぇ
このBの発言には「私には理解できないけど」「バッカじゃなかろか」という含みがあ
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る。この辺は文脈や語調で判定するしかあるまい。
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元はなんでしょうねぇ。「〜ということだろうか」「〜ということで」あたりが音も似てい
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るといえば言えるが、ちょっと離れ過ぎか。
津軽弁でこれに似た意味を持つのが「(だ)びょん」。青森の、故牧良介氏が建てた
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「だびょん劇場」が有名。
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大館など、秋田県北部でも使う。
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これは、「ごで」より更に中立で、非難のニュアンスはなくなる。ただし、推測の意味を
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持つだけに、邪推や勘繰りなどの場面で使われれば、文全体としてそういう意味を持つ
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ことはある。
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もうちょっと根拠の確実性があがるように思うがどうだろう。
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「んだごでな」が「そういうことになるんだろうなぁ」であるとするなら、「んだびょん」は
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「多分、そうだろう」という感じか。
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「(だ)べ」と他の助詞・助動詞が結合して、それが変化したものだびょん。
秋田弁で、これにそっくりな形を持つ「だおん」。
なぼ とめだったって 夜になれば 飲むあんだおん
いくら止めたって、夜になれば酒を飲むんだよ
人に、何かを報告する時に、それを強調するために使う。上の例では、噂の主は、本
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来は酒を飲むべきではないのだ、ということが推測される。それでも飲むんですよ、とい
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う嘆きや憤りである。彼の話は、
ごしゃげば こんだ 「酒は百薬の長だ」てあんだおん
怒れば、今度は「酒は百薬の長だ」とくるんですよ
と続く。
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「〜だもん」と似ているが、「だって喉が渇いてるんだもん」というような言い訳には
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使えない。
最初に、接続助詞と断言はしたものの、ここで上げたものは既に分解不可能であり、
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活用語尾なのか助詞なのかは問題があるところだ。
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