Speak about Speech: Shuno の方言千夜一夜



第963夜

うちトコ4 (1)



 さて、やっともぐら氏の「うちのトコでは4」を紹介できる。
 奥付に寄れば発行は 2014/12/28. おおむねその辺りで入手したんだが、ここまでずれこんでしまったのは、時間がとれなかったから。
 前にも書いたような気がするが、何か元ネタがあってこの文章を書く場合、
1) 読みながら (テレビであれば見ながら) メモを取る
2) メモを取った点について裏を取る
3) 文章を書く
 というステップを踏むが、1) に結構、時間がかかる。黙って読んだり見たりするのに比べると、最長で倍くらいの時間がかかかってると思う。
 2) もそこそこ時間がかかる。今は、地元を離れてしまっているので資料が手元にないせいもありネット便りだから、ネットに接続できない状態では作業できない、という問題もある。
 3) はそうでもない。pomera を持ち歩けば隙間時間も使えるし。
 もう一つ、本の場合、ネタがたくさん見つかってしまう、ということもある。今回の「うちのトコでは4」は全部で 271p だが、取ったメモは 140 項目に及ぶ。これを全部、確認するとなると大変な手間なのだ。
 楽しいんだけどね。

「うちのトコでは4」の冒頭は方言について。東條操の方言区画から始まるのだが、面白い表現がたくさん。
 北海道の「海明け」と「気嵐」なんかどう。
「海明け」は、厳密な定義は気象庁のページにあるが、海の氷が少なくなって航行可能になることを言う。紋別市あたりでは海明けの日をホームページで告知している。
気嵐 (けあらし)」は、平たく言えば海の上に発生する霧。JAF のホームページに記事がある。

 話は変わるが、宮崎市は市街地が海の近くまで広がっている。*1 寒い朝にはものすごい雲が海からそびえたっていることがあり、怪獣映画で見るような津波を思わせる大迫力なのだが、ケータイで写真に撮ってもそれが伝わらないのが残念である。
   

 その関連で冬・雪の表現をいくつか拾ってみる。
がまわれ 北海道 内部の水分が凍って木が割れる現象。
あまゆき 岩手 みぞれ。「雨雪」
かのこゆき 新潟 固い雪。
こーせんゆき 新潟 細かい雪。
ずんずら 富山 田んぼなどが、上を歩けるくらいに固く凍っている状態。
ざらゆき 山形 氷まじりの雪。
しつ 島根 樹木に積もっている雪。
はだゆき 福島 春先、地面にうっすら積もっている雪。
はわ 鳥取 乾いた雪。
かたゆき 青森 凍った雪。
しめりゆき 滋賀 水気を含んだ雪。
 そして、沖縄には「ものが自然に凍る」という現象を表現する言葉がない。そりゃそうだろうなぁ。

 方言ではないが、雪国の人間はオールマイティに雪に強いのではない、というエピソードがある。地域によって雪質は異なるので、自分が慣れたのと違うと途端に無力になる、というので笑った。
 例えば、さらさらとしたアスピリンスノーの地域では雪に傘を差すこともできようが、雪が湿って重い地域でそんなことしたら傘の上に雪が積もってとてもじゃないが差してられない。*2

 笑ったのは、山形の月山スキー場は雪が多すぎて冬季は閉鎖される、という話。山形の観光サイトにも書いてある
 その代り初夏まで滑れるわけだけどね。
 宮崎にもスキー場がある。去年の暮れ辺りにでも行けばよかった、とちょっと後悔している。いや、スキーをやるつもりはないんだけど、ちょっと話のネタに。
 今度の冬は多分、大忙しでそんな暇はないと思うんだよなー。
 こないだ高千穂に行ったとき、凍結注意の標識を見て驚いたが。
   

 よそ者のくせに、生意気に宮崎弁に関連するネタを挙げておく。
よだきい」はよく宮崎・大分の言葉として紹介されるが、鳥取でも使う地域があるらしい。
 愛媛で言う「〜じゃないか?」という意味の「ことない? (「団子食べたことない?」は経験を問うているのではなく、食べたかどうかを聞いている)」は宮崎の「こっせん」と同じであろう。
 宮崎で一番驚いたのは「だからよー」で、「そうなんだよ!」という意味なのだが、これ秋田の「したがら」と同じだと思われる。

 というわけで、今週はここまで。
 最後に、去年の初氷の写真。漫画では (擬人化キャラの) 宮崎が霜柱を珍しがっているが、これを見つけた俺は、それあり? と思った。
   




*1
 イオンショッピングセンターは宮崎港のすぐ近くで、行き帰りなどに汽笛が聞こえることがある。(
)

*2
 もっと水分が多くて、みぞれに近くなれば差すけども。
 人通りが多いと、積もった雪をどこに落とすかでちょっと困ったりすることがある。(
)





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