Speak about Speech: Shuno の方言千夜一夜



第948夜

ご当地あるあるワイド (中)


 もぐら氏の『本当にあった愉快な話』に借りた文章、二本目。

 学校関係の言葉をいくつか。
 愛知で、授業の間の休み時間を「放課」と言う、というのは有名な話。今回、改めて調べてみて、逆に「放課後」に相当する表現がないことを知った。
 Wikipedia によれば、昼休みのことを「中間放課」と言うこともあるそうなのだが、なんとも仰々しい。
 教室に並んでいる机のそれぞれ列のことを「」と言う。本では群馬としているが、ググってみたら埼玉でも言う地域があるようだ。言われてみれば、確かに川みたいではあるが、言いだした人のセンスってことになるのかな。
 で、もうちょっと調べてみたら「号車」って言い方があるらしいことが分かった。
 ところがこれについては使われ方が一定していない。
 こちらの記事では、左右に 1 号車から 2、3 と数えるようなのだが、こちらの記事では、最前列が 1 号車、その後ろが 2 号車、という風に前後に数えていくらしい。
 ちなみに前者の記事は、“sora tobu sakana”というアイドルグループに所属する中学生が書いたもので、後者は先生のための記事。どうも前者の使い方の方が多いようなのだが、そもそもググっても記事の数が少ない。まだ普及していないのかもしれない。
 俺の感覚では、確かに電車のたとえを使うのであれば、前から後ろに 1 号車、2 号車…と行くのが正しそうな気もするのだが、「最前列全員を『1 号車』と総称する」というのには違和感を覚える。

 上履きと下履き。
 青森〜秋田で小中学校を過ごした俺の場合、上履きが「内ズック」、下履きが「外ズック」だが、岩手では「中ズック」という言葉があるらしい。
 まぁ、確かに建物の中で履くものだから「中ズック」でもいいんだろうけど、反対語が「外」なのは対象性を破っている。
 いわゆる「ズック」って今でもズック生地なんだろうか。

 鉛筆の先っちょ。
 あれの尖った状態を富山で「ツクツク」、愛知で「トキントキン」、福井で「ツンツン」、石川で「ケンケン」、大阪では「ピンピン」というらしい。なんで地域が固まってるんだろう。間の滋賀とかでは、特にそういう言い方はないのかしらん。
 富山の一部では、「お」を「大きい『お』」、「を」を「小さい『お』」と言うらしい。これは前にも聞いたことがあって調べてみたい、とは思っていたのだが、これはググるとノイズが山ほど出てきて目指している情報にたどり着けない。「お」ではなく「ぉ」の入力方法に関する質問 (ちなみに、MS-IME では“xo”または“lo”) が出てくるほかは「大きいおなか」みたいなのがヒットしちゃってどうしようもない。
曲りの『お』」って言い方もあったような気がする。これはもうちょっと寝かせておく。

 この本の中である意味、一番面白かったのが岡山の「うったて」。
 習字で、筆を最初に下したところはちょっと盛り上がるが、そこのことを言うらしい。
   
 香川でも使う、という話もあるようだが、まぁ基本的には岡山での例ばっかり。この本では、ほかの地域では特にその部分を指す言葉はない、としている。冒頭の「放課」と「放課後」の関係のようだ。
うったて」自体は、「最初」「とっかかり」てな意味らしいのでそれかと思ったのだが、そうとも言い切れないそうだ。聖心女子大の教授の記事がある。

 学校で思い出したが、今日は放送大学の試験だった。会場は宮崎大学
 そこのトイレが、蓋が自動で開くウォシュレットだった。最近の大学のトイレってすごいんだね。
 農学部があるのだが、動物に病気をうつさないよう、立ち入り禁止になっている区域がある。人間に、ではない。
   

 また続く。

"Speak about Speech" のページに戻る
ホームページに戻る

第949夜「ご当地あるあるワイド (後)」へ

shuno@sam.hi-ho.ne.jp