Speak about Speech: Shuno の方言千夜一夜



第932夜

やばたんやこっせん (後)


 NHK 宮崎放送局の「宮崎熱時間」で宮崎弁を取り上げた「やばたんやこっせん3」に借りた文章の後編は、番組で拾った表現を羅列する感じで。

やっつよねー
「なんだよねー」という感じか。これをググると見事に宮崎の若者の記事ばっかりである。

げんね
 恥ずかしい。鹿児島でも言うそうだ、というか、ググると鹿児島弁の記事のほうが多い。宮崎では都城の記事が多いので、薩摩藩領の言葉なのかもしれない。
 語源不明。

しのべる
 しまう。高松でも言うらしい。
 隠すことになるんだから、「忍ぶ」関連なのだろうか。

しゃーし
 うるさい。調べてみたら、大分や福岡が出てくる。宮崎でも県北部の言葉ってことになるのだろうか。
 地域によっては、「面倒くさい」「うっとうしい」という意味も持つ由。
 で、気になるのは青森で使われる「しゃしね」と意味も形も激似であること。秋田の県北でも言う。

てげおこ
「激おこ (非常に怒っていること)」の宮崎弁版だと思われるが、「やっつよねー」と違い、ググっても使用例がほとんど出て来ない。「『激おこ』は宮崎弁にしたら『てげおこ』か」というような記事が多い。
 この「おこ」→「激おこ」→「激おこプンプン丸」という活用形だが、1〜2 年ほど前に話題になったときは、ネタじゃねぇの? (本当にそういう言い回しがあるわけではないだろう) と思った人が多かったのだが、どうもそれをきっかけに定着したような感じである。

はばしい
 激しい。
 中国地方では「騒がしい」という意味で、これはおそらくもとは同じ語であろう。
 石川では「賢い」という意味だそうで、こっちは別の語だと思われる。
 ところが高知では「素早い」なんだそうで、そうなると「騒がしい」にも「賢い」にも接点があるような気がしてくる。

びびんしゃんご
 肩車。どこでどう区切るのか見当もつかん。「しゃ」が「車」なのではないと思うし。幼児向けの言葉だろうから、少なくとも一部は調子を整えるための語だと思うのだが。

やぜろしい
 うっとうしい。鹿児島でも言う。
 これも語源不明。

 番組では「こっせん」のルーツ探しをしていた。
 宮崎市よりも先に延岡で聞いた、という証言をもとに延岡に行き、土々呂が一番古いのではないか、という話になった。
こっせん」は、若者の表現と思われているらしいが、延岡あたりでは 40 代あたりまでは使う、ということらしい。50 代が使わない、つまり、その辺に境界線がある、ということだそうな。
 若者言葉でも、若者たちだけが突然、使い始めるものとは限らない、ということ。こないだ終わった「花子とアン」でも (当時の) 爺さん婆さんたちがしきりに「〜じゃん」と言っていた。それと同じである。

 じゃぁ次は「やばたんやこっせん」の中央部、「たんや」の解明だ、と思ったらスルーされてしまった。多分、前の二回で説明してるのであろう。一応、「やばたん」と「こっせん」である、とういことはサラっと触れられていた。
」はきっと助詞だと思う。
 残る謎は「やばたん」なのだが、「〜たん」という形があるのだろうか。
 宮崎弁の形容詞がどういう活用をするか、ってことなんだが、秋田弁と同じで活用しねぇんじゃねぇか? だとすると「たん」は別の語ってことになるんだよなぁ。
 わからん。
 上の単語列挙でも語源不明ばっかり。
 宮崎弁辞典みたいなの出版されてねぇの?

 徳島大学の岸江信介教授のコメントが肯定的な内容ばっかりで、あらら、と思う。
 いや、「宮崎弁はもうすぐ消滅しますよ」なんてことを言え、ってんじゃなくて。もうちょっとニュートラルでもいいんじゃないの? そこに、方言ラバーズが一杯いるんだから、「特に宮崎は言葉が豊か」とか、学者さんが言わなくていいと思う。
 まぁ、この種の番組じゃしょうがないのかもしれないけどさ。

 というわけで、前の二回を見たくてしょうがないんだが、今のところ、その方法はない。
 全国で、こういう番組は作られてると思うんだけど、教育テレビで方言テーマの番組ってことで定期的に流してくれればいいのにね。
 まぁ、昨今の流れだと、ネットで見れます、なのかもしれないけど、俺、パソコンのディスプレイでそういうの見るの嫌な人なもんで。




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